著者
村井 良介
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

室町期において幕府の裁定や守護による施行は、人々が共通に参照点とする相対的な卓越性を有している。したがって、人々は幕府や守護に文書の発給を求めると考えられる。しかし、戦国期になると幕府や守護の卓越性が低下し、幕府や守護の保証では十分ではないと見なされるようになり、将軍や守護以外の地域権力による判物発給が見られるようになる。判物は発給者と受給者の一対一の関係性の中だけで機能するものではなく、周辺の第三者群の反応を整序する。その秩序を共有する人々の関係性が「私」に対する「公」である。文書なしの知行給与から、判物による知行給与への変化は、この「公的」秩序が意識されることによる。