- 著者
-
村尾 るみこ
- 出版者
- Japan Association for African Studies
- 雑誌
- アフリカ研究 (ISSN:00654140)
- 巻号頁・発行日
- vol.2006, no.69, pp.31-43, 2006-12-31 (Released:2010-04-30)
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
-
2
アフリカの主要な作物であるキャッサバ (Manihot esculenta) は, 様ざまな環境で生育するため広域で栽培されている。本稿では, カラハリサンドという砂土が堆積するザンビア西部のキャッサバ栽培を取り上げ, 乾燥した環境でのキャッサバ栽培の特徴を例示することを目的とした。ザンビア西部でキャッサバを栽培するのは, アンゴラから移住してきた人びと (移住民) である。移住民はカラハリ・ウッドランドのみに焼畑を造成してキャッサバを栽培し, 一年を通して自給と販売に利用する。ここでのキャッサバ栽培の特徴は, 周年収穫するために複数の畑をもち, 各畑で生育段階の異なるキャッサバを栽培することや畑を放棄するまで16年と長期間連作することである。また長い良質の種茎を植えるのも特徴的で, これはキャッサバの耐乾性のメカニズムと深く関係している。さらに注目すべきは, 耐乾性に優れる苦味種を選択的に栽培することである。これらの特徴は, 移住民が乾燥した環境で生活を再編するなかで, キャッサバの特徴を品種ごとに見極めながら, 収量を確保しつつ, 栽培の継続と商品価値の高い塊根の生産ができるよう工夫してきた結果でもあるといえよう。