著者
新美 陽子 井上(村山) 美穂 村山 裕一 伊藤 愼一 岩崎 利郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.1281-1286, s・iii-s・iv, 1999-12
被引用文献数
3

ヒトの性格(新奇性探求)に関連するとされるD4ドーパミン受容体遺伝子の多型領域を,イヌ2品種(ゴールデンレトリーバー19頭, 柴15頭)において調べた.ヒト用プライマーセットを用いて,ゲノムDNAのPCR増幅を行い,塩基配列を決定したところ,反復領域の前後の配列はヒトおよびラットと高い相同性を示した.ヒトの多型領域には48塩基を単位とした反復配列が認められるが,イヌの多型領域には39塩基,12塩基からなる単位が存在していた.これら単位の数と配列順序の違いから,4種類の対立遺伝子が識別された.ゴールデンレトリーバーではA,Bの2種類が観察され,A対立遺伝子が最も高頻度であり,柴ではB,C,Dの3種類の対立遺伝子が観察され,D対立遺伝子の頻度が最も高かった.本研究により,イヌD4ドーパミン受容体遺伝子に多型が存在すること,対立遺伝子頻度が品種間で異なることが,初めて明らかになった.ゴールデンレトリーバーと柴の性格は,服従性,攻撃性などにおいて大いに異なるとの報告がある.D4ドーパミン受容体遺伝子のような性格関連遺伝子の解析は,イヌの特性や適性を知る一助となるかもしれない.