著者
柳井 徳磨 柵木 利昭 石川 勝行 酒井 洋樹 岩崎 利郎 森友 靖生 後藤 直彰
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.35-40, 1996-01-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

食肉検査所で採取した健康なウマの脳に認められたミネラル沈着症の初期像とその形態学的特徴について検討した. 3歳から10歳のウマ20例を検索し, 12例で淡蒼球の血管に種々の程度のミネラル沈着病変を認めた. 3歳では8例中3例に, 4歳以降では12例中9例に病変を認めた. 中等度以上の変化は4歳以降に認められたことから, 加齢との関連が示唆された. 沈着病変の発現形態は大きく2型に分けられた. 毛細血管の周囲における小型球状沈着物; 細動脈, 小動脈および小静脈の血管壁における塊状の沈着物であった. いずれの沈着病変もPAS反応には強陽性, コッサ反応およびベルリン・ブルー染色には弱陽性を示した. 元素分析では多量のアルミニウム, 中等量の燐, 亜鉛, カルシウムおよび鉄, 微量のナトリウムが検出された.
著者
新美 陽子 井上(村山) 美穂 村山 裕一 伊藤 愼一 岩崎 利郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.1281-1286, s・iii-s・iv, 1999-12
被引用文献数
3

ヒトの性格(新奇性探求)に関連するとされるD4ドーパミン受容体遺伝子の多型領域を,イヌ2品種(ゴールデンレトリーバー19頭, 柴15頭)において調べた.ヒト用プライマーセットを用いて,ゲノムDNAのPCR増幅を行い,塩基配列を決定したところ,反復領域の前後の配列はヒトおよびラットと高い相同性を示した.ヒトの多型領域には48塩基を単位とした反復配列が認められるが,イヌの多型領域には39塩基,12塩基からなる単位が存在していた.これら単位の数と配列順序の違いから,4種類の対立遺伝子が識別された.ゴールデンレトリーバーではA,Bの2種類が観察され,A対立遺伝子が最も高頻度であり,柴ではB,C,Dの3種類の対立遺伝子が観察され,D対立遺伝子の頻度が最も高かった.本研究により,イヌD4ドーパミン受容体遺伝子に多型が存在すること,対立遺伝子頻度が品種間で異なることが,初めて明らかになった.ゴールデンレトリーバーと柴の性格は,服従性,攻撃性などにおいて大いに異なるとの報告がある.D4ドーパミン受容体遺伝子のような性格関連遺伝子の解析は,イヌの特性や適性を知る一助となるかもしれない.
著者
川畑 明紀子 桃井 康行 村山 井上 美穂 岩崎 利郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.1103-1107, 2005-11-25
参考文献数
35

イヌmdr1遺伝子における4塩基の欠失を日本で飼育されている8犬種, 193頭の犬で調べた.変異遺伝子はコリー, オーストラリアン・シェパード, シェットランドシープドッグで見つかり, 変異遺伝子頻度はそれぞれ58.3%, 33.3%, 1.2%だった.遺伝子型がMDR1/MDR1の犬の末梢血単核球ではMDR1蛋白は検出されたが, mdr1-1Δ/mdr1-1Δのコリーの末梢血単核球では検出されなかった.MDR1の基質であるローダミン123の排泄は遺伝子型がMDR1/MDR1のリンパ球では見られ, その排泄はMDR1阻害剤であるベラパミルによって阻害された.一方, 遺伝子型がmdr1-1Δ/mdr1-1Δのリンパ球ではローダミン123の排泄はわずかであった.これらの結果から, 変異mdr1遺伝子はコリー種の犬に高率に存在し, 遺伝子型がmdr1-1Δ/mdr1-1Δの犬は機能的なMDR1を持たないことが示唆された.
著者
田中 克実 桃井 康行 峯岸 美知代 関口 麻衣子 紺野 克彦 田中 あかね 松田 浩珍 岩崎 利郎
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.5-11, 2003 (Released:2007-11-02)
参考文献数
12

本研究では犬の肥満細胞腫の病態、予後、術後の転移を予測する指標を検索する目的で、肥満細胞腫の犬12症例を対象に血中ヒスタミン濃度および末梢血をカルシウムイオフォアで刺激した後のヒスタミン放出を測定した。その結果、肥満細胞腫の犬の血中ヒスタミン濃度は健常犬と比較して高値であり、腫瘍の大きさ、病期と相関する傾向が見られ病態や治療効果の監視に有用である可能性が示された。血中ヒスタミン濃度が特に高値であった肥満細胞腫の犬9例の生存期間は2-130日(中央値29日)と極めて短く、予後との間に相関傾向がみられた。また末梢血の肥満細胞数の指標として血液を刺激した後のヒスタミン濃度を測定した。その結果、転移がみられた8例のうち6例で明らかなヒスタミン放出がみられ、転移がない4例ではみられなかった。このことから、刺激によるヒスタミン放出は転移の存在を示唆すると考えられた。また特に著しいヒスタミン放出が見られた6症例では治療法に関わらず全例が130日以内に死亡した。本研究により血中ヒスタミン測定が肥満細胞腫の予後の予測や治療法の選択に際し、有用な情報を提供し得ることが示された。
著者
佐々木 栄英 北川 均 藤岡 透 鬼頭 克也 岩崎 利郎 坂口 雅弘 井上 栄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.683-685, 1995-08-15
参考文献数
15
被引用文献数
8

慢性皮膚疾患に感染した51頭の犬に対して, 34種の抗原を用いて, 皮内反応テストを実施した結果, 4例がスギ花粉抗原に陽性反応を示した. この4例は, Prausnitz-Kustnerテストが陽性で, スギ花粉に対する特異IgE抗体を持っていることが示された. さらに, スギ花粉の素抗原を鼻腔内に滴下し, 臨床観察を行ったところ3例中2例で鼻汁の漏出を認めた. 以上の結果から, これらの大はスギ花粉に対する過敏性と診断され, スギ花粉は犬のアトピー性疾患の原因の一つであることが明らかにされた.
著者
山中 あずみ 関口 麻衣子 紺野 克彦 桃井 康行 岩崎 利郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.42-47, 2002 (Released:2007-02-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1

犬の鼻部には様々な疾患が発症するが,それら疾患の臨床所見は類似していることが多く,臨床所見あるいは病歴からのみでは確定診断が困難な事がある。しかし,疾患により治療法,予後が大きく異なるために,正確な診断が求められる。本研究では,鼻部に発症した皮膚疾患5例について生検を行い,病理組織学的に1)好酸球性毛包炎,2)日光性皮膚炎,3)落葉状天疱瘡,4)尋常性天疱瘡,5)DLE(円板状エリテマトーデス),と診断した。
著者
西山 美衣 伊從 慶太 関口 麻衣子 岩崎 利郎 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.77-80, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本稿では,稟告および病理組織学的所見が熱傷と合致した犬および猫の3例を経験したので報告する。症例1は犬で,背部に個在性の潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例2は犬で,左肩甲部に潰瘍および皮膚壊死が認められた。症例3は猫で,下腹部および側腹部に脱毛,紅斑などが認められた。病理組織学的所見には,症例1と症例2ではⅢ度熱傷を,症例3では深達性Ⅱ度熱傷を疑わせる所見であった。いずれの症例でも稟告により,発症前に病変部が熱源と接触したという病歴が聴取されたことから,本症例を熱傷と診断するに至った。
著者
毛利 崇 高島 一昭 山根 義久 関口 麻衣子 岩崎 利郎
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.131-134, 2006

9カ月齢の雌のスフィンクスが全身性のそう痒を伴った丘疹を主訴として来院し,皮膚生検の結果色素性蕁麻疹と診断した。初期には抗ヒスタミン剤とプレドニゾロンを用いて治療し,維持にシクロスポリンを用いて良好に経過した。シクロスポリンの投与量は症状に応じて減量し,第417病日に完全に投薬を中止した。その後も再発もなく第466病日現在良好に維持している。
著者
福澤 あぐり 桃井 康行 町田 登 紺野 克彦 岩崎 利郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.129-131, 2005 (Released:2006-10-27)
参考文献数
5

12歳齢, 未去勢雄のヨークシャー・テリアが, 尿の混濁, 排便障害, 腰背部を中心とした体幹の非そう痒性脱毛を主訴として来院した。身体検査により乳房の腫大, 包皮の下垂, 前立腺肥大を認め, 腹腔内及び鼠経部皮下に腫大した陰睾と思われる腫瘤が認められた。摘出後の病理組織学検査の結果, 摘出した腹腔内腫瘤はセルトリー細胞種, 鼠経部皮下腫瘤はセルトリー細胞種とセミノーマの混合腫瘍であった。腫瘍の摘出後に臨床症状の改善が認められたことから, 非炎症性非そう痒性の脱毛は精巣腫瘍によるエストロジェン過多が原因であると考えられた。