著者
佃 和憲 平井 隆二 村岡 孝幸 高木 章司 池田 英二 辻 尚志
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.863-865, 2006-11-30 (Released:2010-09-24)
参考文献数
7

例は33歳, 男性。作業場でふざけていてエアコンプレッサーを作業着の上から肛門部に押し当てた状態で, 空気を噴射され受傷した。激しい腹痛と腹部膨満のため当院に搬送された。胸腹部単純X線検査にて腹腔内に大量の遊離ガス像を認めたため, 腸管穿孔と診断し緊急手術を施行した。S状結腸から直腸にかけて25cmにわたり腸間膜対側の結腸紐の裂創が存在した。損傷範囲の大腸部分切除および人工肛門造設術を行った。切除腸管の粘膜面には縦方向の裂創が全周性に10本以上存在していた。術後経過は良好であった。圧搾空気による腸管破裂は特異な病態を示し, 漿膜面からの観察からでは粘膜面の損傷を完全には推測できず, 手術方法に注意を要すると思われた。
著者
栗山 志帆 大多和 泰幸 村岡 孝幸 中川 仁志 鷲尾 一浩
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1805-1809, 2021 (Released:2022-04-30)
参考文献数
12

G-CSF製剤投与後大型血管炎の報告例は増加しているが未だ少なく,病態も不明な点が多い.今回,術後補助化学療法中のpegfilgrastim投与後に発症した2例を経験したので報告する.1例目は78歳の女性.右乳房全切除+腋窩リンパ節郭清を施行(浸潤性小葉癌,pT2N2aM0,Stage IIIA).術後TC療法を開始し,1コース目のDay3にpegfilgrastimを投与した.Day6より発熱および炎症反応の上昇を認めた.2例目は70歳の女性.右乳房切除を施行(浸潤性乳管癌,pT1cN0M0,Stage IA).術後TC療法を開始し,1コース目のDay3にpegfilgrastimを投与した.Day13より発熱・腰痛および炎症反応の上昇を認めた.2例とも造影CTで診断確定した.G-CSF製剤の使用頻度の増加に伴い,大型血管炎の発症例が増加する可能性があり,更なる症例の蓄積が必要と考えられる.
著者
村岡 孝幸 大橋 龍一郎 徳毛 誠樹 岡 智
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.885-889, 2009-09-30 (Released:2009-11-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

包丁の自傷行為による胃前後壁刺創の2例を経験した。2例とも受傷直後に搬入され,dynamic CT動脈相で胃損傷部位からの造影剤血管外漏出を認めた。緊急開腹術を施行したところ,胃前後壁を貫通した全層性刺創で,損傷部を修復した。術後経過は良好であった。刺創症例の開腹基準に関して種々の検討がなされてきたが,近年ではCTの有用性を示す報告が目立つ。自験例では造影剤の血管外漏出の他にも網嚢内に液体の貯留を認めたことが損傷部位同定の一助となった。また2例とも腹壁創と臓器損傷部位が近接していなかったが,これは受傷時とCT撮影時の体位の相違によるものと考えられた。体位による臓器の移動を念頭におくことでより正確な術前診断が可能になる。
著者
佃 和憲 浅野 博昭 内藤 稔 村岡 孝幸 伊野 英男
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1615-1618, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
10

症例は57歳,女性.子宮体癌術後1年の時,孤立性脾腫瘍を発見された.合併していたサルコイドーシスの病変と考えられ経過観察されていた.徐々に増大するためCTガイド下生検を行われ,子宮体癌脾臓転移と診断された.他臓器への転移は認めなかったため,脾臓摘出術を施行した.肉眼的な腹膜播種は認めなかったが,腹水細胞診がclass Vであったため,術後に化学療法を再開した.孤立性の転移性脾腫瘍はきわめて珍しく,若干の文献を含め報告する.