著者
川田 順子 神崎 正人 吉川 拓磨 前田 英之 村杉 雅秀 大貫 恭正
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.620-625, 2014-07-15 (Released:2014-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

胸腺腫合併重症筋無力症に対し,ロボット支援下拡大胸腺―胸腺腫摘出術を施行した症例を経験したので報告する.症例は50歳女性.右眼瞼下垂と両上肢筋力低下を主訴に近医を受診し,精査の結果,重症筋無力症(MGFA class IIa)と診断された.精査加療目的に当科紹介受診.胸部computed tomographyで前縦隔に46×35 mmの腫瘤を認めた.手術は左胸腔よりアプローチし,ダヴィンチサージカルシステムを用いて行った.ポート作成後,胸腔内に二酸化炭素を送気した.左横隔神経の前方で縦隔胸膜を切開し,胸腺左葉下極より上極まで剥離した.その後,対側である右縦隔胸膜を切開し,右横隔神経に注意しながら胸腺右葉も下極から上極の順に剥離し,胸腺および胸腺腫を摘出した.病理診断はtype B2,正岡分類I期であった.二酸化炭素送気で,左胸腔アプローチでも良好な視野の下に安全に手術を施行することができた.
著者
足立 孝 櫻庭 幹 村杉 雅秀 宮野 裕 桑田 裕美 池田 豊秀 大貫 恭正
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.779-783, 2002-11-15
被引用文献数
5 4

縦隔発生のparagangliomaは比較的稀な疾患である.われわれは縦隔原発で,術前に集学的治療を行ったparagangliomaの1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.胸部違和感とともに咳嗽出現し,他医で検査を受けたところ縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となる.胸部CTで中縦隔から前縦隔にかけて7×6cmの血管に富む腫瘍を認め,腫瘍生検でparagangliomaの診断を得た.腫瘍の解剖学的位置関係から放射線治療を行い腫瘍縮小効果を得たところで,腫瘍血管に対しプラチナコイルで血管塞栓術を追加した.手術では腫瘍の血管壁よりの剥離は困難で臨床的にはmalignant potentialであると判断し,結果として完全摘出に至らなかった.組織学所見で明らかな悪性所見はなく最終的にもparagangliomaと診断された.paragangliomaに対しては腫瘍摘出術以外に確立された治療法はなく,本症例では遺残腫瘍の今後の動向を観察する必要がある.