著者
日下部 修介 田村 大輔 小竹 宏朋 作 誠太郎 本間 文将 村松 泰徳 堀田 正人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.353-359, 2013-08-31 (Released:2017-04-28)

目的:本研究の目的は,口腔ケアに用いる至適カテキン粉末緑茶濃度,口腔内細菌に対する抗菌性,およびカテキンの口腔内細菌に及ぼす影響について検討することである.材料と方法:本実験では,供試したカテキンとしてカテキン粉末緑茶(以下,カテキン),供試細菌としてStreptococcus mutans, Streptococcus sanguinisを用いた.抗菌性試験においては,カテキン濃度を1.9, 1.0, 0.75, 0.5, 0.25g/lとなるようTSBY培地に混和して平面培地を作製し,これらに菌液を摂取し,嫌気条件下にて37℃,48時間培養し,最小発育阻止濃度を判定した.また,カテキンの口腔内細菌に及ぼす影響についてSEMおよびTEM(ネガティブ染色)を用いて,S. mutans, S. sanguinisの菌液を1.9g/lに調整したカテキン溶液に滴下後1時間および3時間の細菌の状態を観察した.結果:抗菌性試験として,1.9g/lのカテキン含有TSBY培地に細菌発育が認められなかった.カテキンのS. mutansに対するMICは1.9g/l, S. sanguinisは0.25g/lであった.SEMによる観察では,カテキンを作用したS. mutansおよびS. sanguinisは,1時間および3時間作用後における菌数が少なく,残存している菌体の形態変化が認められる傾向にあった.TEM観察においても,カテキンを作用させた細菌の形態変化が観察された.結論:以上のことから,カテキン粉末緑茶は口腔内細菌に対して抗菌効果を有し,口腔ケアとそれに伴う局所的および全身的疾患の予防に有益であることが示唆された.
著者
平井 経一郎 村松 泰徳 永原 國央
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.111-114, 2001-06-20
被引用文献数
4

複雑性歯牙腫(complex odontoma)は,歯を形成する硬組織の増殖からなる腫瘍状病態で,主体はエナメル質と象牙質である.本病変は10歳代の下顎大臼歯部に好発し,大きさは母指頭大〜小鶏卵大が多いと報告されている.今回われわれは左側上顎臼歯部に発生した巨大な複雑性歯牙腫の1例を経験したので報告する.症例は,59歳の男性で,平成11年7月頃より67部に痛みを認め(これは義歯装着によるもの)耳鼻科受診,同年8月24日同部からの排膿を認めるようになった.レーザー照射を施行し経過観察を行っていたが,平成11年10月中旬頃より骨面の露出を認めたため,同年11月25日当院紹介来院した.初診時67部歯槽部に約40×25mmのドーム状の骨様硬の膨瘤が認められた.膨瘤の一部には潰瘍を呈する粘膜の欠損が存在し,そこには病変の一部と思われるものの露出を認め,それは白色の骨様の組織であり,可動性はなかった.X線およびCT所見は,左側上顎骨体部から上顎洞におよぶ22×18×33mmの塊状のX線不透過性病巣を認め,内部CT値は不均一で,全体に1000HU以上のCT値を示し,部分的にエナメル質と思われる3000HU以上のCT値を表す部位の散在が認められた.骨シンチでは,病巣部に集積が認められた.これらの検査所見から臨床診断として左側上顎骨内の歯原性あるいは骨原性の腫瘍性病変を疑い,平成12年2月17日全身麻酔下にて摘出手術を行った.皮膚切開に頬部切開法を用い,周囲の健常な組織を一部含め腫瘍摘出術を施行した.摘出物の病理組織診断は複雑性歯牙腫であった.術後3ヶ月目に義顎義歯を装着し,平成13年3月には上顎洞閉鎖術を施行し,14ヶ月経過した現在,特に症状の悪化傾向もなく経過良好である.
著者
住友 伸一郎 笠井 唯克 本橋 征之 足立 誠 江原 雄一 太田 貴久 稲垣(伊藤) 友里 渡邉 一弘 安村 真一 榑沼 歩 村木 智則 大橋 たみえ 村松 泰徳
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.27-32, 2016-07

亜鉛イオンを含む製品である GZ-08の口腔内噴霧により、その口臭抑制作用および抗菌効果を検討した。健康な成人ボランティア30人をランダムに GZ-08噴霧群(20人)と対照群(10人)の2群に分け、GZ-08あるいは生理食塩水を口腔内に噴霧し、その前後で口臭の原因である口腔気中の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度および舌背の細菌数を測定した。さらに、GZ-08使用後にその味や使用感、今後の使用希望についてアンケートを行った。噴霧前の両群および生理食塩水噴霧前後の対照群においてはVSC濃度および細菌数の有意差は認めなかった。GZ-08口腔内噴霧後では噴霧前と比較してVSC濃度および細菌数の有意な低下(P <0.05)を認めた。アンケート結果においてGZ-08は酸味と苦味が強く、総合的な味や使用感は悪いとの結果であった。これらの結果はGZ-08の口臭除去、口腔内の抗菌における有用性を示すものであり、GZ-08に含まれる亜鉛イオンとグルコン酸の作用と考えられる。しかし、実際に口臭予防スプレーとして使用する場合には、その味や使用感が問題となるために、酸味や苦味を低減する工夫が必要であろうと考えられた。