著者
安尾 敏明 友藤 孝明 田村 康夫
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.121-127, 2021-10

CBTの得点(以下、CBT得点)結果と歯科医師国家試験の合否結果との関係については明らかになっていない。そこで、本研究では、歯学教育上の観点から、CBTの結果と歯科医師国家試験合格率(以下、合格率)との関係について明らかにすること、そして、歯学部学生と教員のために歯科医師国家試験に合格するための目安となるCBTの目標点を統計的に設定することを目的とした。資料は、朝日大学における直近6回(第109回~114回)の歯科医師国家試験を受験した学生のCBT得点とした。CBT得点に基づいて、①96-100点群、②91-95点群、③86-90 点群、④81-85点群、⑤76-80点群、⑥71-75点群、⑦66-70点群、⑧61-65点群および⑨0-60点群の9群と71点群から75点群の5群に分け、各群の合格率を算出した。その結果、①群から③群は100%、次いで④群は90.5%、⑤群は85.2%であった。一方、⑥群から⑨群は、順に、63.7%、50.0%、60.0%、30.0%と低値であった。⑥群を境に合格率が低値となっていたことから、その境目のCBT得点を明らかにするために、まず、⑥群を1点毎に5群に分けて検討した。その結果、各群の合格率は71点群から順に、50.0%、42.1%、73.7%、54.2%、88.5%であった。次に、受信者動作特性分析を行った。その結果、CBT得点の曲線下面積は0.809であった。また、Youden Indexに基づいた最適カットオフ値は74.50点であった。以上の結果から、朝日大学ではCBT得点が86点以上か否かで歯科医師国家試験に全員合格するかどうかの一つ目のボーダーがあり、次いで75点以上か否かで二つ目のボーダーがあるように考えられた。
著者
猪俣 恵
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.115-122, 2020-03

自然免疫は微生物に対する防御ならびに炎症反応の開始に重要な役割を果たす。抗菌ペプチドは進化的に保存された自然免疫の1つである。何百もの抗菌ペプチドが好中球や上皮細胞より合成され存在する。中でもヒトcathelicidinペプチドのLL-37は抗菌特性に加えて、多様な免疫調節機能を有する。近年ではLL-37が乾癬や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、またアテローム性動脈硬化症や歯周病といった炎症性疾患の病態に関与していることが明らかにされている。この総説ではLL-37の自然免疫における役割、さらには自己免疫疾患および炎症性疾患への関与について近年の知見を報告する。
著者
住友 伸一郎 笠井 唯克 本橋 征之 足立 誠 江原 雄一 太田 貴久 稲垣(伊藤) 友里 渡邉 一弘 安村 真一 榑沼 歩 村木 智則 大橋 たみえ 村松 泰徳
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.27-32, 2016-07

亜鉛イオンを含む製品である GZ-08の口腔内噴霧により、その口臭抑制作用および抗菌効果を検討した。健康な成人ボランティア30人をランダムに GZ-08噴霧群(20人)と対照群(10人)の2群に分け、GZ-08あるいは生理食塩水を口腔内に噴霧し、その前後で口臭の原因である口腔気中の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度および舌背の細菌数を測定した。さらに、GZ-08使用後にその味や使用感、今後の使用希望についてアンケートを行った。噴霧前の両群および生理食塩水噴霧前後の対照群においてはVSC濃度および細菌数の有意差は認めなかった。GZ-08口腔内噴霧後では噴霧前と比較してVSC濃度および細菌数の有意な低下(P <0.05)を認めた。アンケート結果においてGZ-08は酸味と苦味が強く、総合的な味や使用感は悪いとの結果であった。これらの結果はGZ-08の口臭除去、口腔内の抗菌における有用性を示すものであり、GZ-08に含まれる亜鉛イオンとグルコン酸の作用と考えられる。しかし、実際に口臭予防スプレーとして使用する場合には、その味や使用感が問題となるために、酸味や苦味を低減する工夫が必要であろうと考えられた。