著者
村瀬 武吉
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.455-465, 1937-05-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9

自殺ヲ目的トセル急性中毒患者ニ就イテ, 其ノ使用セシ藥剤ノ種類・症状・服用量・收容迄ノ經過時間.轉歸・性・年齢等ヲ昭和10年及ビ11年ノ2箇年ニ當内科ニ於テ收容加療セシ35例ニ就イテ探究シ, 併セテ同ジク前記2箇年間ニ愛知縣下ニ發生セル該中毒患者822例ニ就キ, 統計的觀察ヲ行ヒ, 次ノ結果ヲ得タリ.尚本文中1種類ノ藥劑使用者ヲ單獨型中毒者トシ, 2種以上ノ藥剤使用者ヲ混合型中毒者トシテ區別シタリ.當教室ニテハ單獨型ハ29例, 混合型ハ6例ヲ數へ, 愛知縣下ニ於テハ單獨型ハ全中毒患者822例中734例, 混合型ハ85例ヲ數へ, 何レナリヤ不明ノモノ3例ヲ數フ.1. 單獨型中最モ多數ヲ占ムルハ催眠剤中毒ニシテ, 當教室ノモノハ其ノ單獨型ノ55.2%チ占メ, 本縣下ノモノハ, 其ノ單獨型ノ42.4%ノ多數ヲ占ム.死亡率ハ當教室18.8%本縣下18.4%ナリ.猫「イラズ」中毒ハ催眠劑ニ次ギ當教室ニテハ其ノ單獨型全體ノ20.7%ヲ占メ, 本縣下ニテハ其ノ單獨型全體ノ29.3%ヲ占メ, 死亡率ハ當教室66.7%, 本縣下60.5%ノ如キ高率ヲ示ス.猫「イラズ」ニ次ギ白髪染中毒ハ本縣下ニ於テハ, 其ノ單獨型全體ノ6.0%チ占メ, 死亡率ハ25.0%ナリ.之ニ次ギ昇汞中毒ハ其ノ單獨型全體ノ4.24%ヲ占メ, 死亡率75.0%ヲ占ム.青酸加里之ニ次ギ, 其ノ單獨型全體ノ4.2%ヲ占メ, 死亡率80.6%ヲ示ス.重「クローム」酸加里ハ其ノ單獨型ノ1.6%ヲ占メ, 死亡率ハ41.7%ヲ示ス.監酸ハ其ノ單獨型全體ノ1.4%ヲ占メ, 死亡率ハ40%ヲ示ス.其ノ他ノ藥剤中毒數十種アルモ表ノミニテ示セリ.2. 混合型中催眠劑ノミノモノ多數ニテ本縣下ニ於ケルモノハ混合型総數ノ約半數チ占メ, 死亡率ハ4.8%ヲ示ス.此ノ中「カルモチン」・「アダリン」混合服用者多數ヲ占ム.次ニ猫「イラズ」ヲ共ニスルモノ混合型全體ノ31.8%テ占メ, 死亡率ハ48.1%ナリ.此ノ中猫「イラズ」・「カルモチン」混合服用者多數ヲ占ム.3. 男女性別ニ於テハ本縣下ニ於ケル822例中男子56.3%, 女子43.7%ナリ.4. 本縣下ニ於テハ全中毒患者中30歳以下ノモノ75.8%ヲ占ム.5. 本縣下ノ中毒患者ヲ季節的ニ觀察スルニ3, 4, 5月最モ多ク, 6, 7, 8月之ニ次ギ, 9, 10, 11月及ビ12, 1, 2月ハ共ニ稍ゝ少シ.6. 地域的ニ觀察スルニ名古屋市ノ全中毒患者ハ愛知縣下全體ノ57.7%ヲ占ム.7. 本縣下ニ於ケル統計中全單獨型中毒者ノ死亡率ハ34.7%ニシテ, 全混合型中毒者ノ死亡率ハ22.4%, 而シテ單獨型・混合型テ合シタル中毒例ノ死亡率ハ33.7%ナリ.
著者
村瀬 武吉
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.13-38, 1937

成熟健康ナル雌犬ニチリー・ヴエラ氏腸瘻管ヲ設置シ, 實験當目ハ室腹トナシ早朝ヨリ腸液ヲ分劃的ニ採取シ, 腸液量及ビ腸液中ニ含有サル・「アミラーゼ」・「リパーゼ」・「エレプシン」ノ3酵素ノ諸種藥剤ニヨル影響ヲ實験セリ.<BR>先ヅ自律神経毒ニヨル影響ヲ實験シタルニ, 「ビロカルビン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量ハ増加シ, 「アトロビン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量減少シ, 「エルゴタミン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量減少シ, 「ヒョリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量ハ増加セル場合ト, 影響ナキ場合トアリタリ.「アセチール隔リン」注射ニテハ腸液量竝昨酵素総量ニハ影響ナシ.「アドレナリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素総量ハ減少セリ. 次ギニ「ホルモン」製剤中「ビツイトリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素総量ニハ影響ナシ.<BR>純體液性分泌刺戟剤ナル「ヒスタミン」及ビ渡薐草「エキス」部チ「スビナチン」ノ皮下注射ニテハ, 腸液量竝ビニ酵素總量ハ稍ゝ増加ヲ示シタリ.<BR>次ギニ榮養刺ナル葡萄糖・「グリココール」・脂肪乳化剤ナル「ヤノール」・「ヴィタミン」B剤注射ニテへ腸液量竝ビニ酵素総量ニハ影響ナシ.<BR>以上ノ實験ノ結果腸液中酵素含有量, 換言スレバ酵素濃度ハ如何ナル藥剤ニヨルモ殆ド影響ナキヲ認メタリ・尚「インシュリン」・葡萄糖注射實験ニ於イデ, 血糖ノ著明ナル變化アルニモ拘ラズ腸液分泌ニハ影響ナキコトヨリ, 腸液分泌ニ於イテハ體液神経性機轉ナキコトヲ認ム.