著者
藤本 明宏 河島 克久 渡部 俊 村田 晴彦
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.507-522, 2021 (Released:2022-02-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究では,大雪時のスタック発生メカニズムの解明を目的に,大雪による車両滞留時の路面圧雪調査および圧雪路面での停車試験,タイヤ空転試験および車両発進試験を実施した. 路面圧雪調査では,大雪による車両滞留時の圧雪路面に窪みや波打つような凹凸の発生を確認した.停車試験およびタイヤ空転試験より,タイヤの輪荷重,熱および回転は圧雪を融解や圧密させ,タイヤを圧雪に沈ませると同時に,タイヤ直下のすべり摩擦係数を低下させることが分かった.車両発進試験より,輪荷重が大きいほどスタックは発生し難いことが分かった. 上記の研究より,車両のスタックは以下のメカニズムで発生することを明らかにした.大雪時には車両の走行性が低下し,停車時間や発進回数が増える.停車時間や発進回数の増大は,圧雪路面の窪みの発生やすべり摩擦係数の低下を誘発する.これらがタイヤの空転を助長し,それが圧雪路面の窪みの拡大やすべり摩擦係数のさらなる低下を引き起こす負の循環を生じさせ,スタック車両の発生に至る.本論文では,このメカニズムを踏まえて,タイヤが圧雪窪みに嵌った状態からスタックに陥る場合とスタックを回避する場合のフローチャートを示した.