著者
山崎 鉄也 高 云燕 韓 愛鴻 林 静容 村田 靖次郎 小松 紘一
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.324-324, 2004

C60を側鎖に有するポリチオフェンの前駆体として、ドナー性を強めたターチオフェン部分と、メチル基またはシアノ基を骨格上にもつアクセプター部位となるフラーレンが、エチニル基あるいはヘプチニル基で連結した化合物を合成した。これら4種類のターチオフェン-C60連結体は、ターチオフェン由来の非可逆な酸化波とC60部分の三段階の可逆な還元波を示した。特にシアノ付加体は、その電子求引効果によりC60とほぼ同程度の高い電子親和力をもつことが判った。これらを3価の鉄酸化剤を用いて化学的に酸化したところ、赤紫色の固体が得られ、MALDI-TOF MS分析により10量体までのオリゴマーが生成していることが明らかとなった。こうして生成したオリゴチオフェンの電気化学的性質などについても報告する予定である。
著者
村田 靖次郎
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

フラーレンC70の内部に1個または2個の水素分子が内包された場合、フラーレンπ共役系がどのような影響を受けるかに興味がもたれる。そこで、最近当研究室で合成された水素内包C70の外側への付加反応を検討した。(H2)2@C70、H2@C70、C70の混合物(モル比,2:70:28)と0.44当量の9, 10-dimethylanthracene(DMA)をo-dichlorobenzene-d4(ODCB-d4)に溶解させ、30、40、50℃における平衡混合物の1H-NMRスペクトルを測定した。その結果、DMAの付加により生成した(H2)2@1およびH2@1の内包水素がδ21.80およびδ22.22に観測され、いずれも未反応の(H2)2@C70(δ23.80)およびH2@C70(δ23.97)のものより低磁場にシグナルを与えることがわかった(化合物1は、C70とDMAの付加体)。これらの内包水素のシグナル比ならびに1H-NMRより見積もった未反応DMAの濃度から、各温度の平衡定数K1およびK2を算出し、ファントホッフの式よりΔG1およびΔG2をそれぞれ計算した(Table1)。その結果、K2はK1より約15〜19%小さいことがわかった。すなわち、内包水素分子の個数により反応の原系と生成系のエネルギー差が影響を受けることが明らかとなった。