著者
杢保 成一 鈴木 育宏 河原 栄
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.181-187, 2016-03-25 (Released:2016-05-10)
参考文献数
30

ヒト上皮成長因子受容体タイプ2(Human epidermal growth factor receptor Type2; HER2)は乳癌患者の約20–30%で過剰に発現し,HER2過剰発現乳癌は,トラスツズマブ,ラパチニブ,ペルツズマブ,トラスツズマブ エムタンシンなどの抗HER2療法の対象となる。HER2過剰発現の有無は,乳癌の診断・治療において重要であり,病理組織学的にHER2の評価が行われているが,血清HER2濃度の臨床的有用性は明確ではない。我々は組織HER2陰性乳癌患者における血清HER2濃度測定の重要性を検討した。通常診療時に,血清HER2濃度を測定した乳癌患者210名を対象にした。乳癌患者における血清HER2濃度と臨床病期,治療効果の評価を行った。組織HER2陰性乳癌患者における血清HER2濃度と腫瘍径,遠隔転移,CA15-3濃度の評価を行った。血清HER2濃度が低いほど治療効果を認めた。腫瘍径と血清HER2濃度に正の相関性を認めた(r = 0.485, p < 0.001)。遠隔転移症例の血清HER2濃度は非遠隔転移症例の血清HER2濃度よりも高かった(p = 0.007)。血清HER2濃度とCA15-3濃度に正の相関性を認めた(r = 0.933, p < 0.001)。組織HER2陰性乳癌患者においても血清HER2濃度は検出され,診療の補助検査として血清HER2濃度を測定する有用性が示唆された。