著者
加納 誠二 土田 孝 中川 翔太 海堀 正博 中井 真司 来山 尚義
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.243-259, 2011-06-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2009年7月24日から25日にかけての連続した降雨により,東広島市志和町内うち地区の残土処分場で崩壊が発生し,流動化した土砂が流下して住宅1戸が全壊した。本論文は本災害の原因について考察したものである。災害発生箇所は何回かの地形改変を経て残土処分場となっていたため,三次元レーザー測量による崩壊後の地形の把握,軽量動的コーン貫入試験による崩壊土砂堆積厚さの調査,過去の測量地図,航空写真の解析を行って,地形改変履歴を明らかにし崩壊直前の地形を推定した。崩壊した残土斜面の底部には帯水層が存在し豊富な地下水が流れており,崩壊後の現地調査と降雨後の地下水位の上昇を考慮した安定解析により,地下水位が帯水層から約9m 上昇し斜面全体の安全率が1 以下となり,すべり崩壊が発生したと推定された。降雨によって飽和度が高まっていた崩壊土砂は,地下水の流出とともに流動化し約9°の傾斜を500m 流下したと考えられる。