著者
土田 孝 森脇 武夫 熊本 直樹 一井 康二 加納 誠二 中井 真司
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.33-52, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
8

2014年8月20日に発生した広島土砂災害では,午前3時から午前4時にかけて107箇所の土石流と59箇所のがけ崩れが同時多発的に発生し死者74名,負傷者44名,全壊家屋133棟,半壊家屋122棟という甚大な被害が発生した。本報告では土石流が発生した渓流とその下流の被害状況を中心に調査結果をまとめた。また,土砂災害警戒区域,特別警戒区域の指定を行うための基礎調査で想定されていた被害の規模と実際の被災状況を比較して考察し,基礎調査と区域指定の課題について検討を行った。
著者
加納 誠二
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では尾根部の地震時応答を明らかにするため,模型を用いた振動台実験と被害のあった尾根部での常時微動測定を行った.振動台実験の結果,最も揺れが大きくなる周波数(1次ピーク)では稜線にほぼ平行な応答となっていた.また揺れの大きい範囲は尾根稜線の変曲点付近から尾根付け根までの長さの約2/3程度まで,高さ方向には尾根稜線から尾根高さの3〜4割程度であることがわかった.しかし高周波領域では,尾根の応答は稜線に直交するように加振しているにもかかわらず,稜線上にもほとんど揺れない点が現れるなど複雑な応答となることがわかった.常時微動測定の結果,健全な地点の卓越周期は宅地の標高や石積み擁壁の高さによる違いがみられず,ほぼ一定の値となった.地震による被害が見られた宅地では,卓越周期が長周期側の値となっており,宅地が緩んだために長周期側の値となった可能性が示されたが,一部では被害の見られない宅地でも卓越周期が長周期側の値となり,宅地内部が緩んでいる可能性があることが分かった.また長周期側の値となった地点の分布は,振動台実験で1次ピークとなった時の揺れの大きい範囲とほぼ一致し,実験に用いた物性値や相似則などから推定される尾根の卓越周期は,常時微動測定により求まった卓越周期と一致した.現場付近の花崗岩のせん断波速度などを用いた4質点系解析の結果,尾根上部では加速度が約1.8〜2.0倍に増幅されていた可能性があることが分かった.常時微動計を用いたアレー観測の結果,卓越周期時には尾根下部の振幅に比べ,上部では5倍程度の振幅となっていたことがわかった.以上から,地震時に尾根が共振したために尾根上部の揺れが大きくなり,尾根上部に被害が集中した可能性があることが分かった.また本研究から常時微動測定により宅地の緩みを評価できる可能性があることがわかった.
著者
土田 孝 由利 厚樹 加納 誠二 中藪 恭介 矢葺 健太郎 花岡 尚 川端 昇一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.339-348, 2013-06-30 (Released:2013-06-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

広島県内9箇所のまさ土斜面でにおいセンサを用いて地盤内のにおいの強さを調べた結果,最大1000のにおい強度を観測した。においの強さは地盤による相違が大きく,土の強熱減量が大きいほどにおい強度は大きかった。底部ににおい発生源を置き降雨を一次元的に浸透させる模型実験を行った結果,地下水面が上昇し表層部に近づいたときに地表面のにおい強度が急増することを確認した。実験結果は,深い層に強いにおいが存在する地盤において,豪雨時に地盤内のにおいを含む空気が地下水位の発生と上昇によって地表面に押し上げられにおいが発生する可能性を示している。
著者
加納 誠二 土田 孝 中川 翔太 海堀 正博 中井 真司 来山 尚義
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.243-259, 2011-06-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2009年7月24日から25日にかけての連続した降雨により,東広島市志和町内うち地区の残土処分場で崩壊が発生し,流動化した土砂が流下して住宅1戸が全壊した。本論文は本災害の原因について考察したものである。災害発生箇所は何回かの地形改変を経て残土処分場となっていたため,三次元レーザー測量による崩壊後の地形の把握,軽量動的コーン貫入試験による崩壊土砂堆積厚さの調査,過去の測量地図,航空写真の解析を行って,地形改変履歴を明らかにし崩壊直前の地形を推定した。崩壊した残土斜面の底部には帯水層が存在し豊富な地下水が流れており,崩壊後の現地調査と降雨後の地下水位の上昇を考慮した安定解析により,地下水位が帯水層から約9m 上昇し斜面全体の安全率が1 以下となり,すべり崩壊が発生したと推定された。降雨によって飽和度が高まっていた崩壊土砂は,地下水の流出とともに流動化し約9°の傾斜を500m 流下したと考えられる。
著者
秦 吉弥 一井 康二 土田 孝 加納 誠二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.401-411, 2009 (Released:2009-05-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1

盛土の耐震性については,排水溝の整備状況によるが,降雨の浸透等により盛土の地盤物性が変化することを考慮する必要がある.そこで本研究では,盛土地盤の粘着力の低下を飽和度に応じて設定する方法を提案し,既往の人工降雨による盛土の振動台実験を対象として,有限要素法を用いた再現解析ならびにパラメトリックスタディを実施した.その結果,地下水位が生じない程度の降雨による盛土の耐震性低下については,提案手法により表現できることを示した.またパラメトリックスタディにより,盛土表層のみならず盛土内部の粘着力の値が耐震性に大きな影響を及ぼすことを示し,盛土の耐震性評価において特に粘着力の値が重要となる領域を示した.