- 著者
-
鈴木 浩一
塩竃 裕三
久野 春彦
東 義則
- 出版者
- 社団法人 物理探査学会
- 雑誌
- 物理探査 = BUTSURI-TANSA Geophysical Exploration (ISSN:09127984)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.6, pp.515-526, 2007-12-01
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
-
8
3
近年,山間部の地すべり斜面を対象とした降雨浸透水による地下水面の変動,産業廃棄物層内への降雨浸透水の挙動、地下水涵養試験時の涵養水の浸透、沿岸部での潮汐に伴う塩淡境界面の変動など, 様々な分野において電気探査法により地下水の流動状況をモニタリングする適用事例が増えている。しかし,従来の電気探査装置では未固結地盤中など流速の大きい地下水の挙動を3次元に展開した測線において数分程度の時間で測定することは困難であった。今回開発した電気探査装置は、最大240点の電位データを同時に受信することができ,アナログ系でのフーリエ変換処理により電位を計測し、高周波数(最大5kHz)の正弦波を送信する。例えば、120測点に対する二極法による全ての組み合わせのデータ(120×119=14280通り)を約5分間で測定することが可能である。本装置の性能を確認するため,当所構内にある陥没空洞箇所に塩水を注入中の比抵抗変化を連続的に測定した。陥没箇所を中心に60点の電極を1m間隔で配置した2測線を展開した。本空洞はローム層(下総層群常総粘土層に相当)内に掘削された旧防空壕が崩落したものと推測されている。測定は塩水を注入する直前より開始し,約2分半間隔で繰り替えし測定を行い,塩水の注入が完了した20分後に測定を終了した。塩化カルシウム溶液(比抵抗1.4Ωm)を110分かけて1000ℓを注水した。全測定回数は51回で,1回当たりの観測データ数は3540通りである。全計測データ(51回分)に対しインバージョンにより比抵抗断面を求め,塩水注入前の比抵抗断面を基準値とした各測定時の比抵抗変化率断面を求めた。その結果,塩水が埋没空洞部に徐々に浸透していく状況を連続的に変化する比抵抗断面として可視化することができた。本装置は,流速の大きい地下水挙動の3次元的なモニタリングに十分貢献できると考えられる。<br>