- 著者
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南谷 靖史
東山 禎夫
- 出版者
- 山形大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
ナノ秒の超短パルス高電界(数100kV/cm)を印加するとがん細胞が自発的死 (アポトーシス)を起こし, 体への負担が少なく治療できることがアメリカでの最近の研究で報告され, 実際にマウスを使った実験でがん細胞がなくなることが示されている。この効果による新しいがん治療法は, 薬のような副作用がなく, 粒子線, 放射線より安全簡便安価な方法であり実現が望まれる。治療実験では電界を患部に印加するのに針を突き刺しているが, 患部が深い場合, 複雑な部位にある場合針を刺すのが難しい。この問題の解決方法として治療を非外科的に行えるよう複数の指向性アンテナから電磁波を患部にスポット集中し, 高電界を印加する方法について研究した。パルスの持つ周波数成分を高周波化するため水コンデンサを用いた回路に水ギャップスイッチを用いたパルス発生回路を製作し, 250MHzの周波数成分を持つパルスを発生できた。1波長ループアンテナにより電界強度を測定した結果, 最大電界強度112kV/mの電磁波を放射することができた。さらに釣鐘形2焦点集束板を製作し電磁波を集した結果, 微小ループアンテナを用いて放射電界強度分布測定を行ったところ最大電界強度は11.3kV/cm,約5mm×5mm×3mmの範囲で10.8kV/cm以上の電界強度まで集束されていた。この電界強度は電極を用いて直接がん細胞に高電界を印加したときには治療効果が期待される電界強度である。さらにパルス電磁波による生成電界を大きくするためアンテナへの印加パルス電圧の高電圧化の検討を行い, 水コンデンサへの充電パルスの圧縮回路を追加することで高速充電が可能となり50kVまで充電できるようになった。これにより250MHzの周波数成分を維持しつつ集束点での電界強度を15.3kV/cmまで35%上げることに成功した。今後100kV/cmの電界強度を目指すとともに細胞への影響を調査する。