著者
若松 勝寿 櫻野 仁志 堀井 憲爾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響
巻号頁・発行日
vol.93, no.70, pp.17-23, 1993-05-28

静岡県の沼津(高専)と石川県の津幡(石川高専)および獅子吼高原で観測した23例の雷鳴から次の観測結果を明らかにしている。(1)雷鳴の圧縮波形の特徴から雷鳴を3種類に分類できる。(2)複数の雷放電で生じたように繰り返して轟き継続時間が30秒以上の長い雷鳴が冬季雷で多く観測される。(3)雷鳴の平均卓越周波数は平均140Hzで、伝搬距離と共に低下する。(4)卓越周波数が低下するのは、伝搬中に音が重畳して形成された高い周波数成分は吸収減衰し、同相付近で重畳した振幅の大きな低い成分が残ることによる。
著者
若松 勝寿 堀井 憲爾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.468-476, 1993-07-01
参考文献数
14

本論文は雷鳴の発生と伝搬、ロケット誘雷実験による雷鳴の観測法及び雷鳴解析による雷放電路の再現方法について述べている。雷鳴に含まれる特徴音を使用し、短い時間窓の相関解析から雷撃点近傍の雷放電路を詳細に再現し、最終電撃距離や雷撃進入角度が求められることを示している。自然雷の雷鳴に近い継続時間の長い雷鳴では、ゼロ交差数から相関解析の時間窓を決定して雷放電路を連続再現している。また、多重雷では支配的な雷鳴を形成する雷鳴から再現できることを示している。
著者
堀井 憲爾 原田 達哉 河野 照哉 河村 達雄 小崎 正光 赤崎 正則
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

IMV交流送電の次の高電圧電力技術の基盤となるべき4つのテーマについて協同実験及び各個研究により、総合的検討が行われ次のような成果が得られた。1)超々高圧架空送電の研究として、2MV交流および1MV直流について、線路気中絶縁の問題、特に開閉サージフラッシオーバとコロナ・イオン流などの環境問題について協同実験による検討が行われ、絶縁・環境の両面からみて、1MV直流送電の方が開発の実現性が高いことが示唆された。2)架空送電に代わる新送電システムの研究として、しゃへい導体大気送電は、建屋内に電線を収納することにより、絶縁の縮少化・高信頼化ができ、環境問題にも対処できること、また、地中洞道内に電線を引込む方式と共に、架線空間に大気圧の【SF_6】ガスまたは空気との混合ガスを封入することにより新しい大容量の超高圧送電線を実現できる可能性が協同実験で示された。また、新しい地中ケーブルとして、押出しポリエチレン絶縁に【SF_6】ガスを含浸する方式、及び極低温超電導ケーブルなどについてモデルによる実験が実施され、今後の開発への道程が示された。3)UHV・EHV送電の極限絶縁設計の研究は、送電線の絶縁設計基準と試験法を再検討し、信頼性と経済性の接点を探ろうとするものである。耐雪設計の見直しとして、冬期雷の特異性とその対応が検討され、絶縁材料の改良開発として、有機材料の部分放電劣化、ZnOバリスター素子の劣化、ベーパミスト絶縁の耐電圧特性などが検討された。4)極限高電圧(50MV)の発生と測定に関する技術として、前駆リーダ放電、残留インダクタンス、直列火花ギャップの問題と対策及び光電変換分圧測定器が検討され、新しい発生器として直径60mのバルーンによるファンデグラフ方式が提案、検討された。
著者
堀井 憲爾 和田 淳 SUNOTO M.A. SOEKART J. SIRAIT K.T. 河崎 善一郎 仲野 みのる 角 紳一 依田 正之 中村 光一 山部 長兵衛 鬼頭 幸生 SUNOTO M. E. SOEKARTO J. SIRAIT K. T. 堀井 憲爾
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

インドネシアは、11月から4月に至る雨期には、ほゞ連日の雷雨に見舞われ、年間雷雨日数は、多いところでは150日にも達する世界的な雷多発地帯の一つである。雷の特性は、わが国の夏形雷に近いと思われるが、高緯度のわが国の雷との比較研究は意義がある。一方、インドネシアの電力施設は、現在、急速な開発途上にあり、送配電システムの雷防護対策は、極めて重要な技術として,その基礎となる雷の研究が重視されている。雷の研究は、自然雷の観測と共に,人工的に雷を制御し、誘発させて、雷放電特性を詳細に解明するロケット誘雷実験が欠かせない。ロケット誘雷実験は、わが国において、本研究組織のメンバ-により十数年の実施経験がある完成された技術である。このメンバ-とインドネシア側の大学、研究所のメンバ-の共同によるロケット誘雷実験が、昭和64年度より開始されて、平成2年4月6日には、インドネシアではじめての誘雷に成功した。本年度のロケット誘雷実験は、昨年度に引続き,ジャカルタの南ボゴ-ル地区のプンチャ峠近くの国営グヌンマス茶園内で、平成3年12月19日から平成4年2月19日までの2ケ月間実施された。同地点は、標高が1400mあり、ジャカルタ平原を見下ろす絶好の実験地である。この茶園内の小山の頂上に9基の発射台を立て,地上電界の測定・監視により、雷雲の接近時に、直径0.2mmの接地されたスチ-ルワイヤ付きロケットを真上に向って発射した。ロケットは英国製の船舶用救命索発射用ロケットを利用し、約500mの高度に上昇する。上昇途中でロケットから上向きのリ-ダ放電が進展し、その直後にロケットに落雷が起り、ワイヤに沿って雷電流が流れ、ワイヤは爆発燃焼してア-ク放電となる。実験期間中に30回近くロケット発射の機会があったが、ロケット不良が多く、うち15回の正常飛行により6回の誘雷に成功した。電流値は、現在詳細解析中であるが、最大12KAに達し、電流の極性はわが国の夏雷と同じく、負が5回と多く,正が1回であった。地上電界は、針端コロナ電流で最大3μAに達し、10kV/mを越える強電界を示した。今回の実験での特記すべき結果は、わが国の実験でもこれまで観測されなかった,避雷針への誘雷に成功し、流し写真の撮影にも成功したことである。12月25日,17:30の最大ー12kAに達する雷放電の第1線が、ワイヤに沿って発射台へ放電した後、約0.5秒後の第2撃が,発射台より約4m離れた10mの高さの避雷針へ放電した。その後,0.06秒後の第3撃もやはり避雷針へ放電しており、避雷針の保護効果は、多重雷の後続電撃に対して極めて有効な場合があることが確認された。15回の発射のうち1回は、ロケットが上昇途中でワイヤが地上から切れ、雷雲と大地との間の空間にワイヤが張られるという珍しい状況となり、いわゆる雷雲内放電誘発の実験となったが、残念ながら誘電には成功しなかった。今後,この方式の実験を再挑戦する必要を認めた。また,1回は空間電界計を塔載したロケットを打上げたが、電界計の不調のため観測に失敗した。この他,インドネシア電力公社の援助により、実験場内に300mの試験用配電線を架設し、誘雷放電時にこの配電線に誘導されるサ-ジ電圧の観測の準備を進め、特に分圧測定システムの技術について指導を行った。今年度は、実験の開始時と中間段階で、日本側から計5名が実験に参加し、技術指導と共同観測を行ったが、ロケットの操作、デ-タの観測記録は,すべてインドネシア側の責任で実施され、この実験に関する技術移転はほゞ完了したと考えてよい。しかし、英国製ロケットの不良が多く、次回からはわが国のロケットを輸出する必要があり、また一部の高度測定技術(電流波形記録,電磁界変化記録など)については、来年度以降も引続き技術指導と援助が必要であり、これに沿った施策推進が望まれる。なお、次年度以降も、乏しい資金ではあるが、インドネシア側で実験を継続する意向があり、日本側もできる限りこれに協力する覚悟である。