- 著者
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東谷 仁志
- 出版者
- 名古屋市立大学経済学会
- 雑誌
- オイコノミカ (ISSN:03891364)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.1, pp.1-20, 2013-03
自動車市場では,新たにハイブリッド自動車や電気自動車が市場に登場している.これらの自動車では,高性能電池が必要で,主にリチウムイオン電池が使用される.この分野では,日本だけでなく韓国企業が大きなシェアを獲得している.本稿では,電気自動車で使用される車載用電池を供給する韓国電池メーカーとして,LG 化学,SB リモーティブ及びSK イノベーションの3社を取り上げる.一方日本の電池メーカーとしては,アドバンスト・エナジー・サプライ(AESC),リチウム・エナジー・ジャパン(LEJ)および,プライムアースEV エナジー(PEVE)の3社を取り上げて,日韓電池メーカーの競争力を比較する.従来自動車市場では,日本の自動車メーカーがサプライヤーシステムを構築し,インテグラルなもの作りが高い競争力を生み出してきたとされる.韓国のLG 化学は,GM,ルノーやフォードなど多くの企業にバッテリーを供給するが,日本の電池メーカーは,特定の自動車メーカーだけに電池を供給している.日本の電池メーカーは,これまで日本の自動車メーカーが築いてきたサプライヤーシステムを踏襲した垂直統合型の供給関係を維持し,電気自動車を従来の自動車と同じインテグラル型製品アーキテクチャと位置づけた取り組みを行っている.これに対して,韓国電池企業は,電気自動車における車載用電池をモジュラー製品と位置づけた戦略に特徴がある.韓国電池企業は,いずれも複数の自動車メーカーへの電池供給を行い,量産規模を拡大して価格を低減する戦略をとっている.自動車市場では,これまでサプライヤーを含めて日本のメーカーが高いシェアを獲得してきた.EV 市場でも高い競争力を維持するためには,日本の自動車メーカーや電池メーカーは,戦略の見直しが必要と考える.