著者
松川 順子 荒田 瑶子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.169, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では,彩色された対象物線画を用いて色の適切さが対象物の再認に及ぼす効果を検討した。実験1では,彩色線画の色の適切さ判断を求め,彩色線画の色の適切さとその色の変化が対象物(線画)再認に及ぼす効果を検討した。実験2では,彩色線画の符号化時間による対象物(単語)再認への効果を検討した。その結果,1.適切な色の判断時間が短い,2.学習からテストにかけて色が変化すると,正再認率が低下したり反応時間が長くなる,3.テスト刺激が不適切な色をしていると正再認率が低下したり反応時間が長くなる,4.不適切な色線画での符号化時間が短いと対象物再認成績が低下するという結果が見いだされた。これらの結果は,対象物の同定や符号化に色の適切さが促進効果を持ち,再認段階においても同様の同定過程が再認の反応時間に影響を与えている可能性を示唆している。
著者
小林 正法 松川 順子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.109-117, 2011-02-28 (Released:2011-06-28)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究はThink/No-Thinkパラダイム(Anderson & Green,2001)を用いて,ポジティブ画像記憶の意図的抑制が可能かを検討した.方法は学習段階,Think/No-Think段階,最終テスト段階の3段階から構成されていた.学習段階において,実験参加者(N=34)は手がかり(ニュートラル単語)とターゲット(ポジティブもしくはニュートラル画像)の刺激ペアを学習した.その後,正解率が80%を超えるまで手がかり再認テストを行った.Think/No-Think段階では,手がかりのみが反復して提示された(0回,6回,12回).0回反復のペアは記憶の促進と記憶の抑制を評価するためのベースラインとして使用された.赤色の手がかりに対して,実験参加者はペアとなっていたターゲットを思い出した.緑色の手がかりに対しては,ペアとなっていたターゲットを抑制した.最終テスト段階では,手がかり再生テストを行った.結果,ポジティブ,ニュートラル画像共に,抑制されたターゲットはベースラインのターゲットよりも記憶成績が低かった.画像記憶の抑制が頑健であること,そして感情価によって抑制中の主観的体験が異なることが示唆された.