- 著者
-
小林 正法
松川 順子
- 出版者
- 日本認知心理学会
- 雑誌
- 認知心理学研究 (ISSN:13487264)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.109-117, 2011-02-28 (Released:2011-06-28)
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
-
1
本研究はThink/No-Thinkパラダイム(Anderson & Green,2001)を用いて,ポジティブ画像記憶の意図的抑制が可能かを検討した.方法は学習段階,Think/No-Think段階,最終テスト段階の3段階から構成されていた.学習段階において,実験参加者(N=34)は手がかり(ニュートラル単語)とターゲット(ポジティブもしくはニュートラル画像)の刺激ペアを学習した.その後,正解率が80%を超えるまで手がかり再認テストを行った.Think/No-Think段階では,手がかりのみが反復して提示された(0回,6回,12回).0回反復のペアは記憶の促進と記憶の抑制を評価するためのベースラインとして使用された.赤色の手がかりに対して,実験参加者はペアとなっていたターゲットを思い出した.緑色の手がかりに対しては,ペアとなっていたターゲットを抑制した.最終テスト段階では,手がかり再生テストを行った.結果,ポジティブ,ニュートラル画像共に,抑制されたターゲットはベースラインのターゲットよりも記憶成績が低かった.画像記憶の抑制が頑健であること,そして感情価によって抑制中の主観的体験が異なることが示唆された.