著者
安藤 花恵 三浦 佳世
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.130, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では、質問紙調査により、演劇経験1年目、2年目、3・4年目、5年以上の俳優がどのような態度で演劇に取り組んでいるのかを検討した。目指す俳優像、脚本を読む際の態度、演技プランを立てる際の態度、演技中の態度について、それぞれ16~18の項目の評定をおこなった。その結果、経験1年目、2年目の俳優は、演技中になりきろうとしたり、役になりきることができる俳優を目指すなど、「なりきる」ということへの志向が強いことが明らかになった。経験2~4年目の俳優には、自分のセリフに線を引いたり、脚本を読む際にまず自分のセリフを探したり、自分の出るシーンを重点的に読むなど、自己中心的な傾向が見られた。経験が5年以上になると、そのようななりきることへの志向や自己中心的な傾向は消え、存在感のある俳優や華のある俳優を目指すなど、感性的に優れた俳優を目指すようになることが示された。
著者
宮原 道子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.192, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では,文章の音読再生課題(実験1)と文章の校正つき音読再生課題(実験2)を用いて,課題に無関連な言語音(日本語)とオフィスノイズ(PCやコピー機などの機械音)が及ぼす影響を検討した.実験1では,有意味な言語音によってオフィスノイズよりも有意に大きな妨害効果が得られた.ところが,同音異義語を検出する校正課題と音読再生課題を同時に行った実験2では,オフィスノイズによる妨害効果のみが起こり,言語音による妨害効果は起こらなかった.以上の結果より,音読再生課題では有意味な言語音によってオフィスノイズよりも大きな妨害効果が起こること,言語音による妨害効果と同音異義語の校正課題には同じ認知処理過程が関与することが明らかとなった.この結果はCowan(1995)のモデルによる説明が可能である.
著者
関口 貴裕 大東 玲子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.156, 2007 (Released:2007-10-01)

顔記憶の個人差と,顔に対する記銘時の注視パタンの関係を眼球運動計測により検討した。実験参加者45名に,液晶ディスプレィ上に提示された未知の人物20名(動画)の印象判断を行わせ(偶発記憶課題),その際の注視パタンを記録した。そして8分間の挿入課題の後,写真刺激を用いて先ほど見た顔に対する再認記憶課題を実施した。顔記銘時の注視パタンを再認記憶成績高群,低群で比較したところ,両群ともに眼,鼻,口の内部特徴を,頬,額,輪郭,髪の外部特徴に比べ長く注視していたが,内部特徴に対する注視時間は高群の方が低群よりも長く,外部特徴に対する注視時間は低群の方が高群よりも長くなっていた。この結果から,顔の内部特徴を長く注視することが顔記憶に促進的であり,顔を見た場合にどの領域をより長く注視するかの違いが顔記憶の個人差に関わることが示唆された。
著者
伊丸岡 俊秀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.139, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では,単語の意味から想起される色が探索効率に与える影響を,単語の視覚探索課題を用いて調べた.実験では,色を想起しやすい語10語(色想起条件;例えば“空”)と想起しにくい語10語(色非想起条件;例えば“心”)を用いた.全ての単語には課題とは関係のない色がつけられていた.探索目標となる単語は,事前に被験者ごとに調査しておいた単語から想起される色(“空”ならば薄い青)あるいは,赤・青・緑・黄・橙・白のいずれかで彩色され,妨害項目は目標項目の輝度にマッチした別々の色によって彩色された.実験の結果,想起条件に関わらず,想起した色がつけられた目標に対する探索効率が他の色が着けられたときに比べて良くなることが示された.目標が想起した色ではない色で彩色されたときの効率低下は色想起条件で大きく,単語によって想起された色と実際に単語に着けられた色との不一致が今回見られた効果の原因であると考えれる.
著者
梅原 修一 松井 三枝 倉知 正佳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.125, 2007 (Released:2007-10-01)

健常者における被注察感ならびに妄想傾向が視線感知に及ぼす影響を検討した。実験は様々な視線の角度の顔写真に対して「被験者自身のこと」を見ていると感じるか、あるいは、「被験者のいる方」を見ていると感じるかの評定を求め、見ていると反応した頻度ならびに反応時間を指標とした。その結果、「被験者自身のこと」についての評定を求めた場合、被注察感の強い者が弱い者に比して反応時間が遅い結果となった。そして、「被験者のいる方」の評定の場合、妄想傾向の高い者が低い者に比して反応頻度が低く、被注察感の強い者が弱い者に比して反応が速かった。また、反応頻度に性差が認められ男性に比して女性のほうが頻度が低く、視線について鋭敏に判断することが考えられた。
著者
藤村 友美 鈴木 直人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.113, 2007 (Released:2007-10-01)

人間の視覚において,周辺視は時間的に変化する情報に敏感であるといわれている(福田, 1996)。本研究では,周辺視において動的情報が表情認知に及ぼす影響を検討することを目的とした。表情刺激は,次元的観点に基づいて作成した表情から快表情3種類(いきいきした,うれしい,のんびりした),不快表情3種類(恐ろしい,怒った,悲しい)を抜粋した。課題は,見本照合課題を用いた。これは,中心視,左右周辺視のいずれかの位置に呈示されるターゲット表情(動画,静止画)と同一の表情刺激を後続の見本表情(静止画)の中から選択するというものである。結果は,中心視では,動画条件と静止画条件の正答率に有意な差は見られなかったのに対し,周辺視では,恐ろしい表情以外で動画条件の正答率は,静止画条件の正答率よりも有意に高かった。このことから,周辺視では,動的情報によって相対的に表情の認知的処理が促進されることが明らかになった。
著者
竹原 卓真 栗林 克匡
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.123, 2007 (Released:2007-10-01)

日常生活では、高頻度で電子メールが送受信されている。電子メールには、顔文字や絵文字など、エモティコンと呼ばれるオブジェクトがしばしば付加されるが、本研究では、それらエモティコンを付加した場合に、電子メールの感情情報がどのように認識されるのかを検証した。その結果、喜び感情については先行研究と同様に、顔文字を付加しない条件よりも、付加した条件のほうが喜び感情の認知が促進された。また、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪の4つのネガティブ感情を表現する電子メールに、対応する顔文字を付加しても、当該感情の認知が促進されることはなかった。中性感情と位置付けられる驚きについては、喜び感情とほぼ同様の結果が示された。他方、感情表出している静止した絵文字を付加した場合、顔文字よりも視覚的情報量が多いため、当初は感情認知が促進されると推測したが、結果的に感情認知が促進される感情と、促進されない感情が存在した。
著者
堀田 千絵 川口 潤
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究は,修正Think/No-Thinkパラダイムを用いて意図的忘却と日々使用するストレスコーピング尺度得点との関連を検討することを目的とした。まず、すべての実験参加者は無関連語対を記銘した。次に,Think/No-Think段階において,手がかり語に対応する反応語を考えないようにするか,もしくは再生するかを反復して行うことが求められた(0,4,もしくは12回)。テスト段階において,手がかり語の対応語を再生するように求められた。結果は,ストレスコーピング尺度得点で抑制効果に差は見られなかった。
著者
川平 杏子 厳島 行雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.197, 2007 (Released:2007-10-01)

感覚刺激を手がかりとした自伝的記憶の無意図的想起は,非日常的な出来事だけなく,日常的な出来事も想起されやすいことや,想起時の気分に関係なく手がかりとなる刺激に触れるたびにその出来事が想起されるという特徴が示唆された (川平,2005;2006)。そこで,本研究では,これらの特徴が感覚刺激を手がかりとした無意図的想起に固有のものであるのかを検討するために,実験において,感覚刺激を手がかりとして意図的に想起した記憶との比較を行なった。実験参加者は,女子大生,大学院生21名 (平均年齢 20.88歳,SD=1.52) であった。音楽刺激を聞いて想起することのできる過去の出来事を回答するよう求めた。実験で得られた32事例を意図的想起群として,川平 (2006) で得られた日誌法のデータのうち年齢の範囲が同じで,聴覚刺激を手がかりとした34事例と比較検討した。
著者
皆川 直凡
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.200, 2007 (Released:2007-10-01)

日本固有の短詩型である俳句は,五七五の定型を原則とする。俳句を実験室において記憶し,それを検索しようとする場合,上五,中七,下五の順に検索すると考えられる。また,上五のあとに切れがある俳句と中七のあとに切れがある俳句とでは,検索のされ方が異なると考えられる。本研究では,プライミング・パラダイムを用いて,この仮説を検証した。実験参加者(大学院生)に俳句を解説文と共に提示し,理解させた後,プライミング・パラダイムによる実験を行った。各試行では,俳句の上五,中七,下五のうち二つを継時提示し,同じ俳句のものか否かを判断させた。その結果,上五のあとに切れのある俳句を用いた条件では,中七と下五のペアに対する反応が上五と他の句のペアよりも速く,中七のあとに切れのある俳句を用いた条件では,上五と中七のペアに対する反応が下五と他の句のペアよりも速いという,差異が認められた。
著者
松川 順子 荒田 瑶子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.169, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では,彩色された対象物線画を用いて色の適切さが対象物の再認に及ぼす効果を検討した。実験1では,彩色線画の色の適切さ判断を求め,彩色線画の色の適切さとその色の変化が対象物(線画)再認に及ぼす効果を検討した。実験2では,彩色線画の符号化時間による対象物(単語)再認への効果を検討した。その結果,1.適切な色の判断時間が短い,2.学習からテストにかけて色が変化すると,正再認率が低下したり反応時間が長くなる,3.テスト刺激が不適切な色をしていると正再認率が低下したり反応時間が長くなる,4.不適切な色線画での符号化時間が短いと対象物再認成績が低下するという結果が見いだされた。これらの結果は,対象物の同定や符号化に色の適切さが促進効果を持ち,再認段階においても同様の同定過程が再認の反応時間に影響を与えている可能性を示唆している。
著者
小幡 哲史 中村 敏枝 河瀬 諭 片平 建史 安田 晶子 谷口 智子 正田 悠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.27, 2007 (Released:2007-10-01)

演奏者は複数人で演奏を行う際,演奏音やそれ以外の感性情報を用いて,演奏を合わせていると考えられる。本研究では特に演奏者が使用する呼吸情報に注目した。演奏者はお互いのタイミングを合わせることや,楽曲の構造上,演奏者が息継ぎをするためなどに,呼吸情報を使用していると考えられるが,このような点について定量的に分析した研究例は数少ない。そこで本研究では2人のバイオリン奏者による演奏実験を,対面条件と非対面条件で実施し,演奏音と演奏者の呼吸情報の使用について定量的に分析した。その結果,対面条件においてのみ2人の演奏者が呼吸情報を使用する箇所や,対面,非対面に関わらず2人の演奏者が呼吸情報を使用する箇所が見られた。このことから,演奏者は演奏を行う際に呼吸情報を使用してお互いのタイミングを合わせていることや,楽曲の構造上,演奏者自身のために呼吸情報を使用していることが示唆された。