- 著者
-
山本 輝正
松本 和馬
- 出版者
- 日本哺乳類学会
- 雑誌
- 哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.135-144, 2016 (Released:2017-02-07)
- 参考文献数
- 72
石川県および長野県で人工構造物をねぐらとしていたカグヤコウモリのオス個体群に対して標識再捕獲法を用いて,21年間の個体数調査を実施した.最長寿命個体は,石川県で14年,長野県で17年の個体が確認された.日本産森林性コウモリ類でこのような長寿記録が確認されたのは初めてである.生涯を通じて生存率一定と仮定して,個体群パラメータの推定を試みたところ,1年当たりの生存率は,石川県で0.871,長野県で0.863,平均寿命は,石川県で7.3年,長野県で6.8年と推定された.また,出産哺育期のオスの平均個体群サイズは,石川県で9.1頭,長野県で22.7頭と推定された.しかし,1回の調査で発見される個体数は両調査地とも5頭以下であった.このことから,調査地周辺には調査対象としたねぐら以外にも利用するねぐらがあったことが示唆された.