著者
梅枝 覚 廣 純一郎 成田 公昌 岩永 孝雄 毛利 靖彦 北川 達士 松本 好市 木村 光政 鈴木 康弘
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.151-157, 2002 (Released:2009-12-03)
参考文献数
26
被引用文献数
2

症例は58歳の男性.2000年3月,粘血便,肛門痛を主訴に近医を受診した.大腸内視鏡検査で,直腸に多発性,不整形の潰瘍を認めた.生検では形質細胞の多い非特異性直腸炎の診断であった.4月に鼠径部リンパ節腫大あり,生検で肉芽腫性リンパ節炎と診断された.9月,粘血便,肛門痛,全身倦怠感増強にて来院入院した.肛門周囲,陰嚢に肉芽腫様皮膚病変を認めた.大腸内視鏡検査で直腸潰瘍直腸炎を認め,経肛門的超音波検査,CT,MRIで直腸壁の全周性の壁肥厚を認めた.梅毒反応(RPR定量)は128倍以上,梅毒反応(TPHA定量)は40,960倍,FTA-ABSIgMは5倍希釈(1+)であり,梅毒性直腸潰瘍,直腸炎と診断し治療を開始した.治療後3カ月で病変,血清抗体の陰性化を認めた.今回,直腸内視鏡検査での多発性不整形潰瘍および,経肛門的超音波検査,CT,MRIでの直腸の全周性全層性の肥厚は,梅毒性直腸炎に特徴的な所見と思われた.
著者
梅枝 覚 松本 好市 北川 達士 野地 みどり 山本 隆行 石井 雅昭 成田 清 鳥井 孝宏 肥満 智紀 山崎 学
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.838-845, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

環状自動縫合器(circuler stapler,PPH=procedure for prolapse and hemorrhoids)による痔核脱肛の手術は,1998年Longoによって発表された手術(粘膜環状切除術,以下PPH)であり,痔核口側の直腸粘膜を環状切除し,痔核脱肛を吊り上げ固定する術式で,疼痛が少なく,QOLにすぐれているため世界で広く行われるようになった.本邦でも2001年より各施設で施行され,術後疼痛の軽減,早期社会復帰,再発率において結紮切除術と比べても差がない,などとIII度内痔核には有用な手術術式と考えられる.一時期PPHによる合併症も報告されたが,PPH機種の改良,手技の向上により合併症が減少した.PPHの特性から,すべての痔核に適応はなく,適応基準を厳格にして症例を選択する必要がある.術者は他の治療法であるLEやALTAにも精通し,長所短所を理解のうえ,痔核・脱肛の適応を的確に判断出来る能力があり,PPHの特性と実技を充分会得したうえで行う手技である.適応症例においては非常に有用な手術と思われる.