著者
松本 絵理子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日常生活場面において複数の情報処理を並列して行うことが多々ある。マルチタスクとは、文字通り複数の課題を同時に遂行する事態を指し、従来の心理学研究では、二重課題(dual task)や課題の切り替え(task-switching)などのパラダイムを用いて検討が行われてきた。脳イメージング研究では,マルチタスクの遂行には両側の頭頂側頭ネットワークを含む広範な領域が関与しており,タスク間の認知資源の調整やワーキングメモリの負荷が要求されることが示されてきている。本研究課題では、マルチタスク環境下における注意配分とその個人差を検討するために、課題目的非関連かつ予期せずに与えられる刺激への注意捕捉を手がかりとして検討を進めてきた。平成29年度は視覚課題の認知的負荷を操作し、課題非関連の聴覚刺激への気付きについて予告のない状況での実験を行った結果、ワーキングメモリ容量の個人差が気付きと相関があり、回帰分析の結果、ワーキングメモリ容量の高さが気付きの失敗を予測することが示された。平成30年度はこの課題非関連聴覚刺激への気付きの失敗が予期の有無に依るのかを検討するために、あらかじめ教示され学習を行った場合の効果とワーキングメモリの個人差について検討を重ねた。また、同一モダリティの非関連刺激の抑制に関連する脳波実験では、注意制御に関わる成分に着目して実験データ収集と解析を進め、国際学会にて発表した。令和元年度以降は、課題非関連刺激の予告と学習との関連について、非注意性聞き落としのパラダイムを用いた検討を行った。更に,音刺激の種類や呈示頻度を操作して、ワーキングメモリ上の負荷を増すことによる聞き落としへの影響を調べた。この結果は令和2年度に実施される日本心理学会にて発表を行った。令和3年度は国際学会への発表を行うと共に,これまでの成果の再解析と投稿準備を進めた。
著者
喜多 伸一 松本 絵理子 辻本 悟史 野口 泰基 寺本 渉 山口 俊光
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、手指が物体に触れるときの情報処理過程を調べるため、心理学実験と生理学実験を行い,触覚的注意の性質を解明することを目的として遂行した。そのためまず基礎科学に重きを置いた研究として、健常者を対象とした触覚探索の実験を行った。またその後に実世界での応用に重きを置いた研究として、視覚障害者を対象に含めて触地図内の図形の探索実験を行った。これらの実験により、触覚的注意の時空間特性を計測して視覚的注意と比較し、物体触知の能動性を解明した。