著者
大田 美香 小田 剛 喜多 伸一 前田 英一 菅野 亜紀 高岡 裕
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-34, 2016-03-31

我が国では、緑内障や糖尿病性網膜色素変性症の罹病率の増大に伴い、弱視者の数が増加している。これらの中途視覚障害者の多くは中高年で残存視覚への依存が大きく、点字の習得が困難である。加えて、点字教育を担当する教師も減っており、これら中途視覚障害者の点字学習をより困難にしている。そこで我々は、残存視覚 (RV)のみを使用する画面によるプログラム、画面と点字ディスプレイ(BD)が協働するプログラム、画面と音声アシスト(BDV) が点字ディスプレイと協働するプログラム、の3種類のWebベースのe-ラーニングプログラムと基本API (Application Programming Interface) を研究開発した。
著者
本郷 由希 喜多 伸一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-21, 2005-08-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

視覚的時間順序判断に聴覚が及ぼす影響を,視覚刺激と聴覚刺激の左右に関する空間一致性に注目して調べた.視覚刺激を短い時間間隔をおいて呈示し,その前後に聴覚刺激を呈示した.第1実験では,視覚的時間順序判断の能力が,視覚刺激と聴覚刺激が空間的に一致している場合には良くなるが,視覚刺激と聴覚刺激が空間的に不一致な場合には悪くなることが示された.この成績変化は視聴覚刺激の時間間隔(AV-SOA)が640 msという長い条件になっても残った.第2実験では,こういった成績変化に対して,視覚刺激に先行する聴覚刺激の方が,後続する聴覚刺激よりも,より強い影響を与えていることが示された.これらの実験結果は,視覚的時間順序判断に対する聴覚の優位性に対し,空間一致性が影響することを示すものである.
著者
喜多 伸一
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.191-192, 2017-09-01 (Released:2017-03-01)
著者
菅野 亜紀 小田 剛 大田 美香 熊岡 穣 喜多 伸一 渡辺 哲也 一瀬 晃洋 高雄 由美子 前田 英一 西本 隆 高岡 裕
出版者
神戸常盤大学
雑誌
神戸常盤大学紀要 = Bulletin of Kobe Tokiwa University (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-34, 2016

我々は視覚障害者向けの鍼灸、特に経絡と経穴に関する教育材料の研究に取り組んだ。この教材では、鍼灸分野における概念間の関係の体系的な理解を可能にすべく、オントロジーを用いた。オントロジーの概念図によりオントロジー教材を作成し、これを鍼灸の講義で使用した群とオントロジー教材未使用群とで経絡・経穴の試験の結果を比較し、その有効性を解析した。その結果、オントロジー教材を使用した学生の経絡・経穴の試験の得点は、オントロジー教材未使用群の学生の得点よりも有意(P < 0.001)に高く、経絡と経穴の学習にオントロジー教材有効である事が明らかになった。この結果は、オントロジーの視覚障害者教育への利用が視覚障害者の鍼灸理論の学習へも有効であることを示唆している。
著者
喜多 伸一 松本 絵理子 辻本 悟史 野口 泰基 寺本 渉 山口 俊光
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、手指が物体に触れるときの情報処理過程を調べるため、心理学実験と生理学実験を行い,触覚的注意の性質を解明することを目的として遂行した。そのためまず基礎科学に重きを置いた研究として、健常者を対象とした触覚探索の実験を行った。またその後に実世界での応用に重きを置いた研究として、視覚障害者を対象に含めて触地図内の図形の探索実験を行った。これらの実験により、触覚的注意の時空間特性を計測して視覚的注意と比較し、物体触知の能動性を解明した。
著者
山本 道雄 森 匡史 嘉指 信雄 松田 毅 喜多 伸一 鈴木 泉 山本 道雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では認識における超越論的立場と自然主義的立場との対立を、概念史的・問題史的方怯によって研究した。とりあげた哲学者は主として、スピノザ、カント、フッサール、ジェイムズ、ドゥルーズである。スピノザについては、自然主義的と解釈される彼の哲学における超越論的契機が、「原因」概念を中心に考察されている。カントについてはその超越論哲学の可能性が予定調和説という形而上学原理に依っていて、この形而上学的原理を避けるには自然主義的還元か、あるいは演繹論の意味論的転回をとる他ないことが論じられている。フッサールについては、最近の志向性概念の自然主義化の試みに対して、その「還元主義の誤謬」がD.W.スミスの議論を手がかりに批判的に論究され、志向性を自然主義的還元から守るために、それが因果的依存性と区別されるという主張に着目されている。ジェイムズに関しては、「非超越論的現象学」としてのジェイムズ根本的経験論とフッサール現象学との類似性および差異性を明らかにすることによって、「非超越論的」哲学の一つの可能性が、最近の研究成果をふまえながら探求されている。ドゥルーズについては現代フランス哲学における超越論的原理の考察という目的の下に、ドゥルーズにおける超越論的経験論の解明が試みられている。さらにこれらの研究に加え、実験科学である心理学の分野から、人間の記憶の再生と再認を比較に関する研究成果が寄与されている。この比較のために新しい方法が考案され、この方法によって、再認成績の方が再生成績よりもすぐれているという結果が判明した。この結果から、検索空間が同一であっても,検索の手がかりの差さえあれば,再認の方が再生よりも好成績となること知見が獲得された。
著者
真下 節 柴田 政彦 井上 隆弥 阪上 学 中江 文 松田 陽一 住谷 昌彦 喜多 伸一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

神経障害性疼痛モデルマウスでは疼痛出現後しばらくしてうつなどの情動異常が発症するが、うつ行動の発現にはα2Aアドレノ受容体が深く関与していることを明らかにした。さらに、モルヒネ耐性マウスではデクスメデトミジンの鎮痛効果が増強し、後根神経節のα2A、α2Cアドレノ受容体mRNAの発現増加がみられた。また、神経障害性疼痛モデルラットでは、セロトニン2C受容体のRNA編集が起こり、受容体作動薬の疼痛軽減効果が増強された
著者
末次 晃 竹中 毅 喜多 伸一 松嶋 隆二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.613, pp.61-68, 2001-01-27

本研究では, 前庭刺激が身体座標系に及ぼす影響を検討した.実験では, 等速回転(72deg/s)を急停止する方法で前庭刺激を与え, 停止目を閉じた被験者に主観的正面をポインティングする課題を行わせた.結果, 前庭刺激による系統的なポインティング誤差が観察された.誤差の方向は, 回転停止時に加わる角加速度と同じ方向であった.誤差の時間的変化は, 回転停止直後では誤差は小さく, 約20〜24秒にわたり誤差が増加した.その後, 徐々に誤差は減少していった.この時間的変化の特徴は, 視対象定位における誤差の時間的変化とよく類似したものであった.しかしながら, 定位した主観的正中面が偏位する方向は, 視覚的に定位した主観的正面と逆方向であった.これらの結果から, 視覚的定位に用いられる座標系と視覚を用いない身体座標系とが異なる可能性が示唆された.
著者
末次 晃 喜多 伸一 松嶋 隆二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.128, pp.17-24, 1998-06-18

短い時間間隔で同じ位置に呈示された二つの対象間に生じる, 動眼回転性錯視(oculogyal illusion, 以下ではOGI)の見かけの偏位の特性を検討した.前庭への刺激として等速回転停止を用いて, 5種類の回転条件で8名の被験者が0.8秒間隔で呈示された対象間の偏位を120秒間(30試行)評定した.第1試行で偏位の大きさは最大値をとり、時間経過とともに単調に減衰した.この時間特性は, 我々が先行研究で明らかにしたOGIの見かけの動きと同じであったが, 主観的正中面からの見かけの偏位とは異なるものであった.この結果から, 本研究で用いた見かけの偏位は, allocentric coordinatesで処理されるであろうと結論した.