著者
松本 舞恵 下川 悦郎 地頭薗 隆
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.9-21, 1998-12-25

1997年3月および5月に鹿児島県北西部で発生した一連の地震により斜面崩壊が多発した花崗岩地域を対象に, 斜面崩壊の空間的・時間的推移および植生との関係について検討した。得られた結果は以下の通りである。1) 地震と降雨により発生した崩壊には拡大崩壊と新規崩壊がみられた。2) 調査流域(約678ha)における崩壊地の個数と崩壊面積は, 地震発生約1年前の1996年3月5日時点で124個と2.31ha, 1997年3月26目地震後の4月25日時点で290個と6.18ha, 5月13日地震後の5月27目時点で543個と13.37ha, 梅雨後の8月24日時点で649個と18.11haと経時的に大きく増加した。3) 調査流域において斜面崩壊により生産された土砂量は, 地震発生約1年前の1996年3月5日時点で23100m^3,1997年3月26目地震後の4月25日時点で61800m^3,5月13目地震後の5月27日時点で133700m^3,梅雨後の8月24日時点で181100m^3であった。4) 斜面崩壊の発生は櫓生に強く支配され, 幼齢針葉樹林地で多数の崩壊が発生していることが認められた。
著者
地頭薗 隆 下川 悦郎 松本 舞恵 加藤 昭一 三浦 郁人
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.33-54, 1995-10-20

鹿児島県は1993年幾度となく豪雨に見舞われた。これによって県内のあちこちで斜面崩壊・土石流による土砂災害が発生し,大きな被害がでた。8月6日の災害直後,鹿児島市とその北部域の垂直空中写真が撮影された。空中写真判読に基づき,斜面崩壊・土石流の発生分布とそれによる侵食土砂量について解析を行った。得られた結果をまとめると次のようである。1)空中写真判読区域(南北方向20.6km×東西方向15.8km,面積約325km^2)に発生した斜面崩壊・土石流は大小合わせて6,500個以上にのぼった。それらの約60%は侵食域の面積が300m^2未満のものである。2)斜面崩壊・土石流による侵食域分布図に200m間隔でメッシュをかけ,200×200mグリッド内の斜面崩壊・土石流の個数を求めた。グリッド総数8,137個のうちグリッド内に斜面崩壊・土石流が1箇所以上存在するものは全体の約26%に相当した。斜面崩壊・土石流が10個以上存在するグリッドは甲突川中流域および思川中流域に集中している。3)空中写真判読区域を5区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積を求めた。さらに,侵食域面積に平均的な侵食深を乗じて各区域の侵食土砂量を計算した。8月1〜2日豪雨で約1,600箇所の斜面崩壊・土石流が発生した思川流域では約500×103m^2(約8,000m^3/km^2)の土砂が侵食された。8月6日豪雨で約3,700箇所の斜面崩壊・土石流が発生した甲突川流域では約655×10^3m^3(約6,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。また多くの死者やJR日豊本線,国道10号の大きな被害が発生した姶良カルデラの西壁でも約55×10^3m^3(約7,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。4)空中写真判読区域を表層地質で大まかに3区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積,土砂量を計算した。その結果,火砕流堆積物の非溶結部であるしらす区域で約942×10^3m^3(約5,OOOm^3/km^2),火成岩類区域で約224×10^3m^3(約3,O00m^3/km^2),堆積層区域で約202×10^3m^3(約4,O00m^3/km^2)であった。