著者
海堀 正博 長谷川 祐治 山下 祐一 崎田 博史 中井 真司 桑田 志保 平松 晋也 地頭薗 隆 井良沢 道也 清水 収 今泉 文寿 中谷 加奈 柏原 佳明 加藤 誠章 鳥田 英司 平川 泰之 吉永 子規 田中 健路 林 拙郎
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.49-60, 2018-11-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
10
被引用文献数
8

In July 2018, heavy rain due to Typhoon Prapiroon affected western Japan and caused numerous sediment disasters such as landslides and debris flows in Hiroshima Prefecture. In a southern part of Hiroshima, approx. 8,500 slope failures occurred, and total number of sediment disasters were reported as approx. 1,250. Therefore, members of Japan Society of Erosion Control Engineering and Chuushikoku branch conducted field surveys in Hiroshima City, Aki Gun, Kure City, and Higashi-hirosima City. In Kawasumi area, Aki Gun, large rock which seemed to be core stone and diameter approx. 10 m moved down from the torrent, and at downstream side 6 m diameter rock seemed to hit the house with destructive power. In Aki-Gun, Saka-Cho, Koyaura area, one old stone masonry sabo dam was destroyed. We estimated the flow discharge from the investigation at the upstream of dam and considered the flow process from the flow traces around the dam. The results showed that the dam destroying process was as following. Firstly, the large rocks accumulated at the frontal part of debris flow collided and destroyed the right bank side wing, and then stone masonry product peeled off continuously. Furthermore, debris flows occurred from several streams in Koyaura and 1-1.5 m sediment deposition occurred at downstream residential area. In Higashihiroshima City Kurose-cho, many collapses and debris flows occurred around Hiroshima International University and there were no casualties fortunately. In Kurose-cho, most of the collapses seemed to occur from the top and ridge of the mountains with gentle slope around 15 degrees.
著者
松本 舞恵 下川 悦郎 地頭薗 隆
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.9-21, 1998-12-25

1997年3月および5月に鹿児島県北西部で発生した一連の地震により斜面崩壊が多発した花崗岩地域を対象に, 斜面崩壊の空間的・時間的推移および植生との関係について検討した。得られた結果は以下の通りである。1) 地震と降雨により発生した崩壊には拡大崩壊と新規崩壊がみられた。2) 調査流域(約678ha)における崩壊地の個数と崩壊面積は, 地震発生約1年前の1996年3月5日時点で124個と2.31ha, 1997年3月26目地震後の4月25日時点で290個と6.18ha, 5月13日地震後の5月27目時点で543個と13.37ha, 梅雨後の8月24日時点で649個と18.11haと経時的に大きく増加した。3) 調査流域において斜面崩壊により生産された土砂量は, 地震発生約1年前の1996年3月5日時点で23100m^3,1997年3月26目地震後の4月25日時点で61800m^3,5月13目地震後の5月27日時点で133700m^3,梅雨後の8月24日時点で181100m^3であった。4) 斜面崩壊の発生は櫓生に強く支配され, 幼齢針葉樹林地で多数の崩壊が発生していることが認められた。
著者
地頭薗 隆 下川 悦郎 野元 俊秀
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.33-50, 1986-03-25
被引用文献数
1

火山地帯に位置し, 火山砕屑物に厚く覆われている鹿児島大学農学部附属高隈演習林において, 森林理水試験流域を設置し, 水文観測を開始した。この観測は, 火山地帯における山地流域の流出特性を解明すること, 同時にこのような特異な環境条件下での森林の水源かん養機能, 洪水調節機能, 土地保全機能等について検討するための基礎資料を得ることを目的としている。ここでは, 試験流域の地形, 地質, 土壌, 植生等の調査結果について述べ, 1984年〜1985年の水文観測資料から試験流域の流出特性について考察した。得られた結果をまとめると次のようである。1)試験流域は, 扇形をした放射状流域であり, 標高520〜680mの高度域に位置し, 面積は43.42haである。2)流域の地質は, 中世界に属する砂岩からなる四万十層, これを覆うように洪積世末期に姶良・阿多両カルデラから大量に噴出した降下軽石が分布している。また, 土層の上層部には流域ほぼ全体にわたり霧島および桜島から噴出した火山灰および降下軽石が分布している。3)試験流域にルーズな状態で堆積している降下軽石層は非常に侵食されやすいため, 流域からは多量の土砂流出が行われている。1984年8月〜1985年8月の1年間に流域から流出された土砂量は約150m^3(約345m^3/km^2)であった。4)試験流域のほとんどは森林であり, 約40%がスギを主体とした針葉樹林, 残りの約60%が壮齢の広葉樹林である。5)試験流域における降雨-流出の関係を解析し, 流出特性について考察した。その結果によると, 試験流域では直接流出は一般山地流域より短時間で終了し, 直接流出継続時間は2〜23時間であった。したがって, 直接流出量も少なく, 直接流出率は0.1〜12%の範囲にある。6)地下水減水定数は, 0.001〜0.022(1/hr)の範囲にあり, 平均0.007(1/hr)であった。これらの値は一般山地流域より小さい。試験流域は火山砕屑物に厚く覆われていることから, 地中水は一般山地流域よりも長い経路をたどりゆっくり河川に達している。その結果, 地下水減水曲線の勾配は緩く, 無降雨時期にも安定した, 高い基底流量が得られている。無降雨時期の基底流量は試験流域において夏期0.04(m^3/s/km^2), 冬期0.02(m^3/s/km^2)である。
著者
地頭薗 隆 下川 悦郎 松本 舞恵 加藤 昭一 三浦 郁人
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.33-54, 1995-10-20

鹿児島県は1993年幾度となく豪雨に見舞われた。これによって県内のあちこちで斜面崩壊・土石流による土砂災害が発生し,大きな被害がでた。8月6日の災害直後,鹿児島市とその北部域の垂直空中写真が撮影された。空中写真判読に基づき,斜面崩壊・土石流の発生分布とそれによる侵食土砂量について解析を行った。得られた結果をまとめると次のようである。1)空中写真判読区域(南北方向20.6km×東西方向15.8km,面積約325km^2)に発生した斜面崩壊・土石流は大小合わせて6,500個以上にのぼった。それらの約60%は侵食域の面積が300m^2未満のものである。2)斜面崩壊・土石流による侵食域分布図に200m間隔でメッシュをかけ,200×200mグリッド内の斜面崩壊・土石流の個数を求めた。グリッド総数8,137個のうちグリッド内に斜面崩壊・土石流が1箇所以上存在するものは全体の約26%に相当した。斜面崩壊・土石流が10個以上存在するグリッドは甲突川中流域および思川中流域に集中している。3)空中写真判読区域を5区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積を求めた。さらに,侵食域面積に平均的な侵食深を乗じて各区域の侵食土砂量を計算した。8月1〜2日豪雨で約1,600箇所の斜面崩壊・土石流が発生した思川流域では約500×103m^2(約8,000m^3/km^2)の土砂が侵食された。8月6日豪雨で約3,700箇所の斜面崩壊・土石流が発生した甲突川流域では約655×10^3m^3(約6,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。また多くの死者やJR日豊本線,国道10号の大きな被害が発生した姶良カルデラの西壁でも約55×10^3m^3(約7,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。4)空中写真判読区域を表層地質で大まかに3区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積,土砂量を計算した。その結果,火砕流堆積物の非溶結部であるしらす区域で約942×10^3m^3(約5,OOOm^3/km^2),火成岩類区域で約224×10^3m^3(約3,O00m^3/km^2),堆積層区域で約202×10^3m^3(約4,O00m^3/km^2)であった。