著者
八木 史郎 畑 邦彦 馬田 英隆
出版者
鹿児島大学農学部演習林
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.40, pp.49-66, 2013-03

鹿児島のキノコ(1)(馬田ら2009)と(2)(八木ら2011)に記述されたように,日本は,北から南まで多様な森林相をもち,それに対応するようにキノコ相も異なっている。最近の温暖化とも関連してキノコは,環境指標や,森林保護の点から,また食を含む生物資源としての点からもっと知識の集積が必要であるが,特に南九州においてはまだ不十分な状況にある。筆者らは,南九州キノコ会を立ち上げ,2006年から定期的に観察会を開催してきた。前2報は2006年~2007年,2008年~2009年の観察会で見られたキノコを資料としてまとめたものであった。本報告書は2010~2012年の観察会第18回から32回の観察記録を資料としたものである。観察場所は,紫尾山,県民の森,清浦,八重山,吉野公園,高隈演習林,藺牟田池周辺,吹上浜の8地点であった。この間には,梅雨時では豪雨のために中止,順延が多く,また紫尾山においては雷雨による中止や短時間で切り上げという事もあった。第22回観察会の記録としては10種以上観察されたがPCの不具合で記憶にあった2種のみの記載とした。過去7年間に観察されたきのこの属する科名を表1に示す。観察されたきのこの種類は種を特定できたと判断したものだけで300種を超える。観察されたきのことしてはキシメジ科,フウセンタケ科,イグチ科,ベニタケ科,タコウキン科のものが多かった。きのこの分類は現在DNAの一部の比較によって大きく変わりつつあり,まだその作業は進行している途中に有り,十分に落ち着いていない現状であるので,本資料はこれまでの形態的分類によるものを基準とし,新しい分類に立脚した資料とはしていない。
著者
松山 淳子 畑 邦彦 曽根 晃一 MATSUYAMA Junko HATA Kunihiko SONE Koichi
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.34, pp.75-80, 2006-12

We examined the fecal contents of the raccoon dog,Nyctereutes procyonoides Gray,collected in three evergreen broad-leaved forests of Takakuma University Forest of Kagoshima University,Tarumizu,and an evergreen broa-leaved forest at Shiroyama,Kagoshima,from May to December 2001. Feces contained seeds,sarcocarp,plant fragments,insects and other arthropods,shells of molluscs,animal bones,and others. In summer,insects occupied the majority of the fecal contents,while,in autumn and early winter,seeds and sarcocarp became dominant. Species composition of the insects and trees extracted from the feces varied among the forests and seasons. The feces collected at Shiroyama,surrounded by the urban district of Kagoshima,contained seeds of prune and Japanese apricot and fragments of vinyl,aluminum sheet,and cloth. These results suggest that raccoon dogs have a flexible food habits and can change their food items in response to food composition in their habitats. We discussed how to conserve raccoon dog populations urban forests where the interference between raccoon dogs and human activity has been increasing.2001年5月から12月にかけて,鹿児島大学農学部附属高隈演習林(鹿児島県垂水市)の3林分と鹿児島市城山において,ホンドタヌキの新しい糞を採取し,その内容物を調査した。タヌキの糞には,植物の種子,果肉,組織,昆虫類,その他の節足動物,軟体動物,ほ乳類や鳥類の骨などが含まれていた。このうち,夏は昆虫を中心とした動物が多く含まれ,秋から初冬にかけて植物の種子や果肉の割合が増加した。糞に含まれる昆虫や種子の種類は林分間で異なり,市街地と接している城山では,人間の生活に関連していると考えられるプラムやウメの種子の他に,ビニールやアルミホイル,布なども回収された。これらの結果から,タヌキはその生息環境に応じて,その食性を変化させる能力を持っていると考えられた。人間との接触機会が増加しているタヌキの個体群の保全について考察した。
著者
松本 舞恵 下川 悦郎 地頭薗 隆
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.9-21, 1998-12-25

1997年3月および5月に鹿児島県北西部で発生した一連の地震により斜面崩壊が多発した花崗岩地域を対象に, 斜面崩壊の空間的・時間的推移および植生との関係について検討した。得られた結果は以下の通りである。1) 地震と降雨により発生した崩壊には拡大崩壊と新規崩壊がみられた。2) 調査流域(約678ha)における崩壊地の個数と崩壊面積は, 地震発生約1年前の1996年3月5日時点で124個と2.31ha, 1997年3月26目地震後の4月25日時点で290個と6.18ha, 5月13日地震後の5月27目時点で543個と13.37ha, 梅雨後の8月24日時点で649個と18.11haと経時的に大きく増加した。3) 調査流域において斜面崩壊により生産された土砂量は, 地震発生約1年前の1996年3月5日時点で23100m^3,1997年3月26目地震後の4月25日時点で61800m^3,5月13目地震後の5月27日時点で133700m^3,梅雨後の8月24日時点で181100m^3であった。4) 斜面崩壊の発生は櫓生に強く支配され, 幼齢針葉樹林地で多数の崩壊が発生していることが認められた。
著者
寺本 行芳 下川 悦郎
出版者
鹿児島大学農学部演習林
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-9, 2007-12

2007年7月の台風4号に伴う大雨によって鹿児島大学附属高隈演習林で発生した林道法面の崩壊ならびに土石流の実態について調査した。得られたおもな結果は以下の通りである。(1)調査地でみられた斜面崩壊の形態として、林道法面における大隅降下軽石層とその上位の火山灰・軽石層で発生した肩部の崩落、自然斜面における風化土層中への雨水の浸透に起因した表層崩壊、林道法面および自然斜面における雨水の浸透および地下水に起因した深層崩壊が挙げられる。(2)土石流が発生した流域における生産・流出土砂量を現地調査に基づき求めた結果、生産土砂量は4,325m(3)(5,545m3/km(2))、流出土砂量は3,600m(3)(4,615m3/km(2))である。(3)現地調査の結果、流木は針葉樹林で覆われた斜面からだけでなく、広葉樹林で覆われた斜面からも発生していた。斜面崩壊に伴って生産された226m(3)の流木のうち、72m(3)が河道内で捕捉、125m(3)が流域最下流地点に流出、29m(3)が流域最下流地点より下流に流出している。