著者
森崎修司 松本健一
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2013-SE-179, no.35, pp.1-8, 2013-03-04

ソフトウェアが担う業務に特化した欠陥種別の検出を目的とするレビューは汎用的な欠陥種別の検出を目的としたレビューよりも修正コスト低減効果やスケジュール遅延リスク低減効果が大きいことが期待される.本論文では,金融業務を担うソフトウェアの開発に携わる熟練者へのヒアリングから得られた欠陥種別 “日付に関する欠陥” をもとに不具合情報を分析した.レビューでの検出が可能であった不具合 488 件のうち 86 件が日付に関する不具合であり,これらの不具合が他の不具合と比較して,スケジュール遅延リスク低減効果,修正コスト低減効果が大きく,統計的に有意な差があることがわかった.また,業務に特化した欠陥種別特定の計算機支援を目的とし,不具合情報の自由記述に含まれる単語を熟練者に提示したところ,支援が有用であるという意見を得た.
著者
田中康 飯田元 松本健一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1233-1245, 2005-05-15

ソフトウェアプロセスの適切なモデル化は,開発のフレームワークを提供するとともに,継続的なプロセス改善のベースラインを提供する意味においても重要な課題である.しかし,従来のプロセスのモデルは,変化を続ける現実の開発活動を適切にモデル化することが困難なために,当初定義したプロセスモデルが利用されず形骸化してしまう問題が起こっていた.そこで我々は,継続的なプロセス改善への適用に有効なプロセスモデルとして,成果物間の関連に着目したプロセスのモデル化方法「PReP(Product Relationship Process)」モデルを開発した.実際の開発プロジェクトに適用した結果,PRePモデルは,現実の開発活動のモデル化,理解の容易性,モデル化の柔軟性,そして再利用性にすぐれていることを確認した.PRePモデルを使用することにより,開発活動の実行とプロセスの継続的改善に効果的に利用できるプロセスモデルを定義することができる.
著者
角田雅照 門田暁人 松本健一 大岩佐和子 押野智樹
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2014-SE-186, no.12, pp.1-7, 2014-11-06

近年,情報システムの規模の増大や,システム運用の外部委託の進展に伴い,システム運用に関する注目が高まっている.システム運用費用が妥当であるかどうかは,システム運用の委託側企業にとって判断が難しい.本稿では,委託側企業がシステム運用費用の妥当性判断の参考となるような情報の提供を目指し,システム運用費用に影響を与える要因の分析を行った.受託側の作業時間と運用費用は非常に関連が強いため,受託側作業時間を把握することができれば,標準的な運用費用を推定することができる.ただし,受託側作業時間を委託側企業が把握することは一般に容易ではない.そこで本稿では,作業時間と技術者の単価から簡易的に価格を推定することを前提とし,作業時間と単価に影響する要因を個別に分析した.その結果,作業時間はプログラム本数と最大利用者数から決まることや,ネットワーク範囲が狭い場合,単価が低くなる傾向があることがわかった.