著者
松村 人志 江村 成就 黒田 健治
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

研究代表者らは、以前に、一酸化窒素(nitric oxide : NO)の生体内合成酵素(nitric oxide synthase : NOS)の阻害剤であるN^G-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)をラット間脳領域に持続投与すると、レム睡眼が顕著に増加することを見いだし、続けて、NOを供与する性質を持つ化合物であるNOC 12を同領域に投与すると、レム睡眠が減少することを見いだした。これらの実験結果から、間脳領域のNOがレム睡腹の制御に関与しているのではないかと考えた。レム睡眠を制御するならば、ひいては、意識変容といった病態にも関与する可能性もある。しかし、L-NAMEやNOC 12の作用が本当にNOの変動を介したものなのか、あるいは何らかの別のメカニズムによるものかは明確でなかった。そこで、間脳領域のNOが睡眠・覚醒、とりわけレム睡眠と連関した日内変動を示しているのか、さらにL-NAMEを投与した際に、間脳領域で、本当にNOが量的に低下しているのかを確かめる必要があると考えた。本研究では、無拘束ラットで、2日あるいはそれ以上にわたり持続的に間脳領域のNOの量的変動を測定しつつ、さらに間脳領域にL-NAMFを6時間にわたり持続投与し、その睡眠・覚醒に対する効果を観察しつつ、同時にNOの量的変動を記録することに成功した。その結果、間脳領域のNOは、ラットの活動期である夜間に高値を示し、睡眠期である日中に低下するという日内変動を示し、さらにL-NAMEを持続投与することで、低下を示すことが証明された。本研究では、この成果を、この研究グループがこの2年間になし得た他の関連研究成果とともに報告する。
著者
木村 克典 松村 人志
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_49-2_59, 2010-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
30

本研究は,精神科入院病棟に勤務する看護師から,直面している問題,葛藤,悩みなどを聴取し,精神科入院看護の根本にどのような問題が内包されているのかを探り出すことを目的とした。対象者は看護師10名で,KJ法に基づき,インタビュー内容で得られた70項目をカテゴリー化及び構造化した。その結果,6つの要因を見いだし,6要因はさらに,中核要因である「ビジョンのない看護」と,内部要因すなわち「看護者間の相互理解の困難さ」及び「患者尊重の欠如」,そして外部要因すなわち「不十分な退院環境」,「他職種との未熟な関係」,「規則・法律と現実との乖離」とに分けられた。そして,内部要因と外部要因は,中核要因と相関関係あるいは因果関係にあると捉えられ,悪循環を形成している状況が推測された。精神科医療における看護業務の役割を明確化し,「ビジョンのない看護」からの脱却を図り,これらの悪循環を解消する試みを始める必要がある。