著者
阿部 彩 東 悠介 梶原 豪人 石井 東太 谷川 文菜 松村 智史
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.145-158, 2019-11-30 (Released:2021-12-02)
参考文献数
19

本稿は,2016年に筆者らが行ったインターネット調査のデータを用いて,一般市民が生活保護制度の厳格化を支持する決定要因を分析した。具体的には,貧困の要因に関する自己責任論と,貧困の解決に関する自己責任論に着目し,その二つを峻別した上でそれらが人々の生活保護制度の厳格化に対する意見に影響するかを検証した。 本稿の分析から,まず,従来指摘されてきたようなワーキングプアが生活保護受給者を非難する対立構造についてはそれを裏付ける結果は得られなかった。次に,自己責任論については,貧困者当人に対して要因責任を求めるものと,解決責任を求めるものの二つが混在しており,両者は必ずしも一致しないことがわかった。生活保護制度の厳格化支持に対しては,両者ともに影響力を持っているものの,解決の自己責任論の方が要因の自己責任論よりもその影響力が大きいことがわかった。
著者
松村 智史
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.1-13, 2019-08-31 (Released:2020-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
6

本稿は,生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業の成立に関して,厚生労働省設置の検討会,社会保障審議会の部会の議論を分析した.まず,学習支援での学びは,単なる学力のみならず,将来の自立に資する生活力など,非認知能力を含む多元的能力と理解されるようになった.さらに,こうした能力を身につけるうえで,親の養育や家庭環境の改善の必要性が注目され,学習支援と世帯支援の一体化,学習支援から世帯支援につなげるという展開が形成されつつある.また,かかる展開をより実効的に行うために,支援の入り口としての子ども食堂など地域の取り組みや,継続的な進学・就学支援に欠かせない学校等,多様な機関との連携強化,情報共有が期待されている.今般成立した事業は,学習支援の変遷のなかで,学習支援と生活支援が結実した,総合的支援事業の意義を帯び,位置づけられるといえることが明らかになった.