著者
大沢 真理 シャイア カレン マルガリータ エステベス=アベ 阿部 彩 金 英
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21 (Released:2013-10-24)

日本の生活保障システムは、先進諸国の中で最も強固な「男性稼ぎ主」型であり、政府の所得再分配が貧困を削減する効果が、就業者の多い世帯や子どもにとってきわめて弱く、効果がマイナスである場合も少なくない。労働力人口の減少が憂慮される社会としてきわめて非効率で不合理なシステムであること、しかし所得再分配の効率性を高めれば、税・社会保障負担を増すことなく国民の生活を改善できることも、明らかになった。2014年2月には福井県において社会的排除に関するアンケート調査を実施した。働き者の福井の女性が、より働きがいを感じ、地域活動にも参加する条件について示唆を得られた。
著者
阿部 彩
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.13-30, 2014-05-08

特集 福井県における生活保障のガバナンス本稿は、福井県における大規模アンケート調査のデータを用いて、社会的交流(家族を含む他者とのコミュニケーションや付き合い)、社会的サポート(情緒的および手段的サポート)、社会的参加(地域活動やボランティア活動など)の3つの次元における社会的孤立について分析を行ったものである。そして、年齢や性別、家族構成、結婚状況、就労形態、離職経験、学歴をコントロールした上で、福井県への移住者と福井県生まれの人に社会的孤立となる確率に違いがあるかを分析したその結果、社会的交流においては、女性において、福井県生まれの人に比べて、福井県に移住してから20年未満の人、および30年以上の人は、高い確率で孤立状況となることがわかった。この関係は、男性においては見られなかった。社会的サポートについては、福井県生まれとそうでない人の間に有意な差はなかった。しかし、社会的参加については、男性のみにおいて福井県に移住してから20年未満の人は約2.5倍から2倍の確率で孤立するリスクが高かった。This paper analyzes three types of social isolation (1. Communication, 2. Social support, 3. Participation) using a large-scale micro-data of Fukui Prefecture in Japan. The results indicate that divorcees, those living alone and migrants from other prefectures face a significantly higher risk of social isolation even after controlling for age, gender, socio-economic status, and household structure. The migrant women face higher risk for lacking communication with others, while migrant men face higher risk of lack of social participation compared to natives of the Fukui Prefecture. The analysis shows that there are different risk factors for different types of social isolation and that moving from other prefecture, even after many years of residence, still pose risk of social isolation.
著者
阿部 彩
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.362-374, 2012-12-20 (Released:2017-07-28)

日本の子どもの相対的貧困率は16%であり,約6人に1人が相対的貧困状態にあると推計される。しかしながら,この相対的貧困の概念については,研究者らも含め殆ど知られておらず,この数値の意味するところが理解されていないのが現状である。本稿では,子どもの相対的貧困率の現状と動向を把握した上で,「豊かさ」と「貧しさ」という観点から,相対的貧困と絶対的貧困の概念の違いを明らかにする。また,一般市民の貧困の概念が,絶対的貧困や物質社会に反抗する精神論に強く影響されており,それが現代における貧困(相対的貧困)の議論の本質を見えにくくしている点を指摘した。最後に,相対的貧困が,どのようにして子どもの健全な育成を妨げているかについて,一つは相対的貧困にあることが子ども自身の社会的排除を引き起こすリスクが高いこと,二つが,子どもが相対的貧困の状態であるということは,親も相対的貧困状況にあるということであり,貧困が親のストレスを高め,親が子どもと過ごす時間を少なくし,孤立させることにより,厳しい子育て環境に置かれていることを指摘した。「豊かさ」や「貧しさ」は相対的な概念であり,たとえ豊かな社会であっても相対的貧困にあることは大きな悪影響を子どもに及ぼす。
著者
阿部 彩
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.255-269, 2012 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本稿は,厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」を用いて,子どもの健康格差をアメリカ,カナダ,イギリスの先行研究を比較対象として分析した。この結果,まず,日本においても,社会経済階層,特に貧困層と非貧困層の間において,子どもの健康格差が存在することが確認された。これは,入院,ぜんそくの通院などのデータによって確かめることができる。子どもの健康格差が所得水準のどの層によっても現れる線形のものであるのか,または,ある一定の水準以下で顕著に表れるという貧困研究の知見に近いものなのかについて,本稿からは両方を支持する結果が出ており,統一的な結論は出ていない。次に,子どもの健康格差を生じさせるメカニズムとして考えられる二つのメカニズム,過去の健康悪化のエピソード(「健康ショック」)の頻度の違いと,それからの回復力がSES によって異なるかを検証した。「健康ショック」の頻度については,入院,ぜんそくを取れば,低所得層の子どもの方が高所得層の子どもに比べて統計的に有意に多い割合で入院,通院している。特に所得五分位の第1分位(最低層)において他の分位に比べて高い割合の罹患率となっている。後者のメカニズムについては,現在の健康状況を表す変数として入院,「健康ショック」を過去の入院とした分析の結果,「健康ショック」からの回復力はSESの高い層ほど高いことが確認できた。
著者
硲野 佐也香 中西 明美 野末 みほ 石田 裕美 山本 妙子 阿部 彩 村山 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-28, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
24
被引用文献数
2

【目的】本研究は,日本において,世帯収入と子どもの食生活との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】 2013年9~12月,東日本4県6市村の19小学校に在籍する小学5年生(10~11歳)及びその保護者を対象に自記式の質問紙調査を実施した。世帯収入が貧困基準以下の群とそれ以外の群に分け,食事区分ごとの食事摂取頻度,家庭での食品の摂取頻度及び外食の摂取頻度と世帯収入との関連について,χ2 検定を用いて検討した。その後,摂取頻度に関する項目を目的変数とし,説明変数は世帯収入として多変量ロジスティック回帰分析を行った。調整変数は児童の性別,居住地域としたものをモデル1,モデル1に家族構成を加えたものをモデル2とした。【結果】調査に同意が得られた1,231名のうち920名を解析の対象者とした。χ2 検定の結果,世帯収入群別に有意な差がみられたのは朝食,野菜,インスタント麺,外食の摂取頻度だった。多変量解析の結果,モデル1,モデル2共に,低収入群が低収入以外群と比べて,学校がある日,休みの日共に朝食の摂取頻度,家庭での野菜の摂取頻度および外食の摂取頻度が低く,魚や肉の加工品,インスタント麺の摂取頻度が高かった。【結論】日本において,世帯収入が貧困基準以下の世帯の子どもは,朝食,野菜,外食の摂取頻度が低く,肉や魚の加工品,インスタント麺の摂取頻度が高いことが示され,世帯の収入と子どもの食生活に関連があることが示唆された。
著者
松本 淳 多田 隆治 茅根 創 春山 成子 小口 高 横山 祐典 阿部 彩子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

本研究では,アジアモンスーン地域における過去の気候資料と,日本のさまざまな緯度帯から取得される地質試料(サンゴ年輪やボーリングコア等)の解析によって,過去数10年〜数千年の時間スケールでアジアモンスーン域の降水量変動および各流域洪水の洪水史をまとめ,モンスーンにともなう降水量変動と洪水の歴史の関係を長期的に復元し,地表環境の変化との関係を考察することを目的として研究を行なった。千年規模での変動として,日本海南部隠岐堆の海底コア三重県雲出川流域のボーリングコアを解析した。後氷期には約1700,4200,6200年前に揚子江流域で夏季モンスーン性降雨が強まり,雲出川流域において約6000年前には堆積速度が大変に速く,この時代には広域的に洪水が頻発していた可能性が判明した。また,琉球列島南端の石垣島で採集されたサンゴ年輪コアの酸素同位体比と蛍光強度の分析によって,過去の塩分変動を定量的に復元できることがわかった。20世紀後半の変動としては,近年洪水が頻発するバングラデシュにおいて,GISとリモートセンシングデータによってブラマプトラ川の河道変遷と洪水との関係を検討し,河道が約10年周期で河川の平衡状態への接近と乖離とを繰り返したことがわかった。また大洪水が雨季には稲作に大きな被害をもたらすものの,引き続く乾季には大幅な収量増加がみられることを見出した。流入河川上流域のネパールでの降水特性を検討し,ネパールで豪雨が頻発した年とバングラデシュにおける洪水年とが対応していないことがわかった。さらに日本においては,冬の終了や梅雨入り・梅雨明けが近年遅くなっていることを明らかにした。気候変動研究に多用されているNCEP/NCARの長期再解析データには,中国大陸上で観測記録と一致しない変動がみられることを見出し,アジアモンスーンの長期変動解析にこのデータを使用するのは不適切であることを示した。
著者
小島 唯 阿部 彩音 安部 景奈 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.86-93, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

【目的】学校給食の食べ残しと児童の栄養摂取状況との関連を検討すること。【方法】2009年5~6月,東京都公立小学校に通う5・6年生の児童112名を対象に,給食の食べ残しに関する自記式質問紙調査と残菜調査を実施した。残菜調査は,対象者一人につき2回ずつ行い,延べ人数のデータを用いた。残菜調査の結果から,食べ残しの有無により,残菜率0%の児童を完食群,それ以外の児童を残菜群とした。この2群の栄養摂取量の中央値の差について,一般化推定方程式(generalized estimating equation: GEE)を用いて検討した。解析対象の栄養素等は,エネルギー,たんぱく質,脂質,炭水化物,ミネラル5種,ビタミン4種,食物繊維とした。【結果】延べ人数で,218名分の残菜データを得た。そのうち,男子104名(47.7%),女子114名(52.3%)であった。全体で,残菜群が80名(36.7%),完食群が138名(63.3%)であった。残菜率は0.2%~84.3%の間に分布していた。残菜群と完食群のエネルギーの中央値(25,75パーセンタイル値)は,各々 562(435,658)kcal,715(699,715)kcalであった(p<0.001)。また,ビタミンCの中央値(25,75パーセンタイル値)は,残菜群で 26(16,35)mg,完食群で 41(41,47)mgであった。同様に,その他すべての栄養素等で差がみられた(すべてp<0.001)。【結論】残菜群のビタミンCを除く栄養摂取量は,完食群に比べて2~3割少なかった。残菜群のビタミンC摂取量は,完食群に対して4割程度少なかった。
著者
米田 穣 阿部 彩子 小口 高 森 洋久 丸川 雄三 川幡 穂高 横山 祐典 近藤 康久
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01 (Released:2010-08-23)

本研究では、全球大気・海洋モデルによって古気候分布を復元し、旧人と新人の分布変動と比較検討することで、気候変動が交替劇に及ぼした影響を検証した。そのため、既報の理化学年代を集成して、前処理や測定法による信頼性評価を行い、系統的なずれを補正して年代を再評価した。この補正年代から、欧州における旧人絶滅年代が4.2万年であり、新人の到達(4.7万年前)とは直接対応しないと分かった。学習仮説が予測する新人の高い個体学習能力が、気候回復にともなう好適地への再拡散で有利に働き、旧人のニッチが奪われたものと考えられる。
著者
阿部 彩子 田近 英一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

地球上には長い目でみれば生命が存在するような温暖な環境が保たれてきた。ところが、原生代前期と原生代後期において、低緯度の陸が氷で覆われるほどの氷河期が出現したこと、その後急激な温暖化で気候が回復したことなどが最近明らかになった。このような地球規模の大寒冷化では全球凍結状態が実現したのではないかと考えられ、スノーボールアース仮説とよばれている。本研究では、大循環モデルと炭素循環モデルを用いて、地球の過去に見られるような全球規模の凍結や融解がどのような条件で起こりうるものなのかを数値実験によって明らかにすることを大目標としている。本研究では、まず、大循環モデルによる全球凍結の臨界条件決定のための数値実験を数多く行ない、全球凍結に至る気候遷移過程や全球凍結から脱する遷移過程などを調べた。大循環モデル(東京大学気候システム研究センター/環境研にて開発)を用いて、気候感度をしらべるためのエネルギーバランスモデルと同様の系統的実験を行った。季節変化のある場合とない場合、現実のように大陸配置がある場合をまったくなくてすべて海の場合のような異なるケースに対して、異なる太陽定数を設定した実験を、系統的に実行した。結果は、全球凍結に陥る条件については、季節変化の有無に敏感であることがわかった。また、大循環モデルの結果は、地球が部分凍結している条件の範囲がエネルギーバランスモデルで求めたものよりずっと広く、これはハドレー循環や中緯度擾乱など大気輸送メカニズムを考慮したことによることがわかった。海洋熱輸送の変化の寄与を考えずに大気熱輸送の寄与のみを考える限りにおいては、大陸配置はほとんど臨界条件に影響を与えないことがわかった。さらに、大陸配置依存性は、少なくとも降水や蒸発に関わる大気水循環を通じて、炭素循環や氷床形成条件に影響を与えることなどが示唆された。今後この結論は海洋循環や海氷力学の扱いによって変更される可能性があることが、予備的に現在開発中の大気海洋海氷結合モデルの示す南北半球の違いから示唆された。また氷床の力学が臨界条件を変更することが予想される。今後は、大循環モデルの結果を氷床モデルや炭素循環システムのモデルに与えて数値実験を行なうこと、さらに海洋および海氷の効果と氷床力学の効果について検討してゆくこと、など課題は多く残されている
著者
阿部 豊 阿部 彩子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

1.南北一次元エネルギーバランスモデル(EBM)を用いた検討:拡散近似の南北一次元エネルギーバランスモデルを構築し、離心率と自転軸傾斜の影響を吟味した(1)気候レジームは年平均日射、最大日射、最小日射に複雑に依存まる。(2)離心率の増大で年平均日射が大きくなるため概して温暖化する。(3)一般に離心率の増大によって気候の多重状態は解消する。(4)近日点での一時的な暴走状態の発生が、平均的な気候状態や生物生存可能性に大きな影響を与える。(5)自転軸傾斜角、離心率、軌道長半径は一定のままでも、歳差運動(春分点と近日点の位置関係の変化)によって気候モードが変化する惑星が存在する。(6)年間の温度変化幅は傾斜角の大小と歳差運動によって大きく変わる2.大気大循環モデル(GCM)を用いた検討:地球大気用に気候システム研究センターと国立環境科学研究所で共同開発してきたCCSR/NIES AGCM 5.4gを使用して、理想的な惑星(現在の地球大気、地球サイズ)のモデルを作り、離心率を変化させる実験をすすめた。(1)定性的にはEBMを用いた結果と一致するが、やや寒冷化する傾向がある。(2)地面状態の違いによって、離心率が増大したときに暖かくなる場合と寒くなる場合がある。(3)降水分布の年変化は自転軸傾斜による直立・傾斜レジームと離心率による溜め込み・放出サイクルの合成されたものとして理解できる。3.生存可能性について:(1)熱容量が大きい場合、年平均日射が最も重要である。(2)歳差運動まで考慮すると、生存可能な緯度帯を持つ惑星の軌道は自転軸が少しでも傾くと離心率が小さい範囲に制限される
著者
松井 孝典 阿部 彩子 杉田 精司 大野 宗祐
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

本研究では, 堆積岩及び各種氷の衝突脱ガス過程における化学反応過程の解明を目的として実験を行った. また, 脱ガス過程からの反応生成物が, 地球気候システムに及ぼす影響の定量的評価を行った. 結果として, (1)衝撃脱ガスによるCO2の発生は, 先行研究の推定より非常に高圧でのみ起きることと(2)白亜期末の巨大隕石衝突後には, 従来想定されていたCO2の大量発生ではなくCOが大量に発生したらしいこと, (3)COが大量発生した場合には, 強力な温室効果が起きることが分かった.
著者
阿部 彩
出版者
日本統計協会
雑誌
統計 (ISSN:02857677)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.2-8, 2010-05