著者
松林 靖明
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.56-64, 2006-07-10

戦国軍記の中に「日記」という名を持つ作品が相当数ある。また日記という名を持たない軍記の文中にも「日記」という語が時折見受けられる。戦場の日記はよく知られているが、戦国時代には城中日記というものもあったと考えられる。特に籠城あるいは落城という危機に見舞われた城中では日記が記された。その日記は落城の際に城外に持ち出されて、後に滅亡した一族の家の記として軍記が書かれるときに利用されたと思われる。本稿はその一面を明らかにしようと試みるとともに、波多野秀治一族の滅亡を描く『籾井家日記』を具体例として取り上げ、滅亡記を綴る作者たちの思いを考察した。
著者
松林 靖明
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1-9, 1985-05-10 (Released:2017-08-01)

『承久記』諸本のどれを見ても後鳥羽院の怨霊が現われない。最古態の慈光寺本は後鳥羽院御霊の発動以前の成立だからであると考えられるが、前田家本は成立時期、『保元物語』の強い影響などから怨霊を描かないのは何らかの理由があったと見るのが自然である。『後鳥羽院御霊託記』等を見ると、前田家本成立時期の室町初期には足利氏が後鳥羽院御霊を畏敬しており、足利氏の立場を反映している前田家本はその畏怖感から怨霊を描くことを憚ったものと考えられる。
著者
松林 靖明
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.A23-A33, 2007-03-20

The Bessho-Ki is one of the tales of war written in the age of wars. I examined mainly the books quoting passages from it and those influenced by it to take up various general issues which had not yet been examined.