著者
細江 光
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.A85-A149, 2006-03-18

The purpose of this paper is to make a thorough and complete interpretation of the animated movie Tonarino Totoro, the masterpiece produced and directed by Miyazaki Hayao. The director projects the image of the mother onto nature in this movie, and the realized world in this story, the whole space of fiction, is encompassed by the mother of nature. This makes possible a Utopia where everything is in harmony in an ideal way and where the innocence of children is not only protected but also exercised to perfection, which moves those who watch this movie. Miyazaki wants to embody such an ideal childhood as is shown in the Utopia of this movie. It is a fact that he himself didn't spend a happy childhood like this in me real world, and this has led him to satisfy his hunger for it by realizing it in this fictional world.
著者
馬場 伸彦
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A75-A82, 2007

雑誌『犯罪科学』において,1930年代に登場した新しい「グラフ・モンタージュ」は,その実践者である堀野正雄,また写真評論家として活躍した伊奈信男や板垣鷹穂らによって,西欧で勃興した「新興芸術」の流れの中に位置づけられている。「グラフ・モンタージュ」と名付けられた一連の作品評を概観してみると,移入初期においては直裁的な翻訳のようであったが,その後試行錯誤を経て次第に独自の表現形式を獲得していったことが分かる。そこには社会の暗部や裏面をメディアの視覚を媒介にして安全かつ刺激的に覗き見たいという大衆の欲望が表象され,また,「シナリオ」を必要としたその構成と形式は,写真報道と映画を架橋する新しい表現であったにちがいない。
著者
細江 光
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.11A-54A, 2003-03-18

Sojin Kamiyama, one of the key figures in the creation of the modern Japanese theatre, was a friend of Junichiro Tanizaki throughout his lifetime. He is also known as one of the few Japanese actors who performed in Hollywood silent films in the 1920s. However, his life has not been sufficiently studied ; his fellowship with Junichiro Tanizaki has not been fully investigated either. This paper presents his personal history based on various data, information and interviews with members of his family.Sojin Kamiyama, one of the key figures in the creation of the modern Japanese theatre, was a friend of Junichiro Tanizaki throughout his lifetime. He is also known as one of the few Japanese actors who performed in Hollywood silent films in the 1920s. However, his life has not been sufficiently studied ; his fellowship with Junichiro Tanizaki has not been fully investigated either. This paper presents his personal history based on various data, information and interviews with members of his family.
著者
佐藤 毅彦
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-13, 2007

図書館の利用に精通していない一般の人々を対象に,図書館や図書館員についての認識を深め,その利用法について知ってもらうことが,これまで以上に必要となっている。そうした目的で書かれた本の事例として『図書館に訊け!』『図書館を使い倒す』をとりあげて検討した。共通してみられる点として,図書館利用法について知る機会が少ないこと,インターネットと対比させ図書館にも有用性があると主張していること,図書館の特徴を理解し使い分けること,職員に相談してレファレンスサービスを利用するのがよいこと,などがあげられる。
著者
佐藤 毅彦
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.59-68, 2007-03-20

女性図書館員が恋愛を経験することで変わっていく小説として,『蠍のいる森』『Open Season』(翻訳タイトル『パーティーガール』)をとりあげ,図書館員の描かれ方の違いやその背景にある事情を明らかにしようと試みた。ストーリーの中心人物が,図書館に勤める三十代の女性という共通した部分はあっても,恋愛に対する意識や,それを体験することで生じてくる状況の変化への対応については,日本の事例は受動的・他律的であり,アメリカの事例では,能動的・自律的であったといえよう。
著者
西田 隆政
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-7, 2003-03-18

小松英雄は,平安朝の和文文献は,書記様式として句読点の存在しない,「連接構文」のテキストであり,句読点をつけることは不要かつその表現性を無視することになるとする。しかし,句読点の存在しないことが句読をおこなうこと自体を否定するものではない。また,現代語のような句点で文をくぎること自体はおこなわないものの,用言等の終止形だけでなく,ほかの構文的な条件の存在によって,そこで文がくぎられることがしめされる場合がある。句読点のような文のきれつづきを明示する符号の存在しないことで,構文的な自在性は保持しつつも,文の終止もしめすことのできるのが,和文の構文的な特徴であったとかんがえられる。

1 0 0 0 OA 都々逸 翻刻

著者
菊池 真一
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.A17-A83, 2006-03-18

This is a presentation of dodoitsu (Japanese limericks). Dodoitsu is a song sung to the accompaniment of a shamisen (samisen). It was popular in the Edo, Meiji, Taisho and Showa periods.
著者
水本 篤
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.93-107, 2006-03-18

本研究では人文系女子大学生の語彙学習方略を調査し,それらの方略が学習成果とどのように関連しているかを明らかにすることを目的とした。まず,139人の実験参加者に質問紙調査を行い,どのような語彙学習方略を使用しているのか,また,役に立つと思っている方略と,実際に使用している方略との間に差はあるのかを調べた。次に使用している語彙学習方略と,習熟度指標としてのTOEICおよび語彙サイズとの相関を調べた結果,辞書使用方略,語の構造利用,メタ認知方略群が弱いながら有意な相関があることが確認された。使用している語彙学習方略と学習成果によるクラスター分析では,4つのグループが現れた。この研究から,さまざまな習熟度,語彙学習方略を行う学習者に効果的な語彙指導を行う際に有用な結果が得られたといえる。
著者
神野 富一
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.A1-A9, 2005-03-18

Rakusanji, on the east coast of the Korean peninsula, is famous as the Korean Fudaraku, the place where Kannon lives. In this paper, I state how and when this Fudaraku originated. I have analyzed the articles in the Sangokuiji, and reviewed the belief in caves, the rite of the dragon in the East Sea, and the circumstances of the sea traffic in ancient times. And I presume that the belief in Rakusan was influenced by the belief in Fudasan in China, and originated in the latter half of the seventh century, and expanded in the middle of the ninth century. I also suggest that it was not only Buddhist priests, but also lay people who went over the sea, who contributed to the origin and expansion of these beliefs.