著者
松橋 朋子 村上 照子 Tomoko Matuhashi Teruko Murakami 日本赤十字秋田短期大学介護福祉学科 日本赤十字秋田短期大学介護福祉学科
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 = Journal of the Japanese Red Cross Akita College of Nursing and the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-40, 2010-01-01

本研究は、高齢者施設における災害対策の実態、災害介護教育に関する意識を把握することを目的とし、A県内の特別養護老人ホーム96ヶ所の管理者96名を対象に無記名の質問紙調査を実施した。58名から回答が得られ、以下のことが明らかになった。1)高齢者施設の被災経験は13.8%と少ない状況であった。また、被災時の対応として最も多かったのは「電気系統の確保」であった。2)防災訓練は全ての施設が実施していた。訓練の種類としては「避難訓練」「消火訓練」「通報訓練」「救護訓練」であり、22.4%の施設がこれらを組み合わせ「総合訓練」として実施していた。また、防災マニュアルについては87.9%の施設で整備されていたが、31.4%は定期的な評価・修正を実施していなかった。災害時の連絡体制としては59.6%が「緊急連絡網」を作成していた。災害備蓄品の種類としては「非常食」「飲料水・生活用水」が多く、合わせて72.2%であった。3)防災対策の今後の課題は、「防災体制の整備」「防災教育」「防災訓練」「防災設備・備品の整備」「防災マニュアルの整備」があげられた。4)管理者の77.6%が介護福祉士養成施設における災害介護教育の必要性を認識していた。同じく管理者の77.6%が高齢者施設における災害介護研修の必要性を認識していたが、災害に備えた研修を実施していた施設は37.9%であった。This study aimed to highlight awareness concerning countermeasures and education of nursing caretakers at elderly facilities in the event of a disaster. We administered an anonymous survey with questionnaires directed at administrators from 96 nursing homes in A Prefecture. We received 58 responses, which showed the following: 1)13.8% of the facilities surveyed showed a low ratio of disaster occurrence. "Securement of electrical systems" is the most frequently provided measure at the time of such disasters. 2)All facilities had already conducted disaster drills. There are four distinct drills: "an evacuation drill," " firefighting drill," "A reporting drill," and "a first‑aid drill." 22.4% of the facilities combined these drills into "A comprehensive drill" when actually conducting such drills. 87.9% of the facilities have prepared disaster prevention manuals, but 31.4% did not execute evaluations and or corrections. In regards to a "communications system" in place in case of a disaster, 59.6% had prepared "an emergency network." Emergency rations of food, drinking water, and clothes were stockpiled, which accounted for 72.2% of stockpile provisions. 3)Provisions for countermeasures against possible disasters included, "development of disaster prevention systems," "education for disaster prevention," "disasters drills," "maintenance of facilities and equipment," and "preparation of a disaster prevention manual." 4)77.6% of administrators acknowledged the necessity for training of nursing caretakers in the event of a disaster within the training facilities itself. 77.6% of the administrators acknowledged the necessity of training nursing caretakers in the event of a disaster within the elderly facilities, yet only 37.9% of these facilities have conducted such training in the event of a disaster.
著者
松橋 朋子 村上 照子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.16, pp.11-18, 2011

本研究は、高齢者施設における災害対策の実態、災害介護教育に関する意識を把握することを目的とし、A県内の特別養護老人ホーム96ヶ所の介護職員480名を対象に無記名の質問紙調査を実施した。263名から回答が得られ、以下のことが明らかになった。1.被災経験がある人は36.5%であり、災害の種類としては地震が多かった。2.91.6%の施設が年2回以上の防災訓練を実施していた。訓練の種類としては「避難訓練」「災害種類別防災訓練」「消火訓練」「通報訓練」「非常食調理訓練」「救護訓練」であり、97.3%が訓練が実際に活用できると答えていた。また、防災マニュアルについては91.3%の施設で整備されていたが、14.6%がマニュアルを読んでいなかった。3.防災体制・設備の把握状況では「災害発生時の連絡体制」「避難経路」について認知度が高く、介護職歴で有意な差は見られなかった。4.災害や防災に関して感じていることとしては、「不安」「訓練・日頃の備えの必要性」「防災意識の向上」の順に多くあげられた。5.介護職員の79.1%が介護福祉士養成施設における災害介護教育の必要性を認識していた。介護職員の73.8%が高齢者施設における災害介護研修の必要性を認識していたが、災害に備えた研修を受講していたのは27.8%であった。
著者
松橋 朋子 村上 照子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.16, pp.37-44, 2011

本研究は、高齢者施設における災害(地震)時の対応、具体的な実践内容を把握することを目的とし、新潟県中越沖地震にて緊急的に避難者を受け入れた特別養護老人ホーム及び福祉避難所となった特別養護老人ホームの2ヶ所の施設管理者を対象に半構成インタビューによる面接調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。1.利用者及び避難者へ対しては、安全な一時的待機場所へ避難・誘導し、ボランティアと共に日常生活支援を中心に行っていた。ボランティアについては受け入れニーズの把握とコーディネイターの必要性が示唆された。2.職員の勤務体制・緊急招集については、マニュアルの整備に加え状況に応じた判断が求められ、メールを活用した連絡が有効であった。3.状況に合わせた実践的な防災訓練が実施されており、訓練に当たっては施設の構造を踏まえた避難方法及び職員の配置の必要性が示唆された。4.災害時に介護者に必要とされる能力については「状況に合わせた創意工夫のあるケア」「利用者の話をよく聴く姿勢」があげられた。5.施設における災害対策の課題としては、「防災体制の整備と防災意識の向上」「被災経験及び実践内容の伝承」「情報の入手及び共有化の体制整備」「職員のケア」があげられた。福祉避難所の課題としては、「福祉系トリアージの確立」「コーディネイターの養成」「平時からの福祉避難所の選定」があげられた。