著者
阿部 範子 Noriko ABE 日本赤十字秋田短期大学看護学科 JOURNAL OF THE JAPANESE RED CROSS JUNIOR COLLEGE OF AKITA
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-6, 2007

本研究の目的は、母親のライフスタイルと充実感を知り、育児不安との関連性を検討することである。それにより育児不安に影響を与える要因、育児不安が日常生活に対する充実感に与える影響を明らかにすることを目指す。調査は1歳6ヶ月児、3歳児を第1子とし、第1子のみを持つ母親を対象とし、「趣味に時間を割くか」、「地域活動・学習活動への参加状況」、「育児サークルへの参加状況」、「充実感・幸福感を得られる行動は何であるか」を調査し、育児不安尺度をもとに採点した「育児不安得点」との関係を比較した。結果、趣味に時間を割いている母親は育児不安が弱いこと、地域活動・学習活動参加のために外出する頻度が多いほど育児不安は弱くなる傾向が明らかになった。このことが育児不安を低減させているのか、または精神的余裕を持ち合わせた母親がそうであるのかは明らかではなく、今後の検討課題である。育児不安が弱い母親に比較し、強い母親は「子どもと遊んでいるとき」「夫と話をしているとき」「子どもの世話をしているとき」に充実感・幸福感を得ることが少ない傾向にあった。
著者
齋藤 和樹 前田 潤
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.14, pp.29-34, 2009

2009年4月6日早朝に発生したイタリア中部地震後のイタリア赤十字社(IRCS)およびラクイラ大学で行っている心理社会的支援について、現地視察調査を行った。IRCSでは、国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)の心理社会的支援プログラムとは別の独自の心理社会的ケアを行っていた。それらのいくつかは、「ユーモア」に基づいたものであり、「ドクトル・クラウン」という存在もあった。IRCSの心理社会的支援は、災害の生存者に対してのみならず、救援者に対しても行われていた。IFRCには、心理社会的支援のための十分な資器材がそろっていた。ラクイラ大学が行っていたサバイバーの精神的健康に関する調査には、グローバルスタンダードになっているGHQやIES-Rなどが含まれていた。
著者
井上 忠男
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.13, pp.23-37, 2008

人道主義は、いかにして今日の国際社会における普遍的な道義的価値規範として確立されるに至ったのか。本稿は、近代国際法、特に19世紀後半に急速に発展した戦時国際法の法典化の歴史を辿ることにより、人道概念の普遍化の過程を考察するとともに、特に冷戦終結後の武力紛争に伴い国連、NGO、諸国軍隊等による広範な人道支援活動が展開される今日、グローバルな枠組みの中で人道主義が直面する多様な問題とその将来展望を考察する。
著者
伊藤 榮子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.13, pp.9-21, 2008

歩行期から青年後期のどの段階に社会、家庭の基本的生活の型を獲得し、自己抑制、自立に誰が影響しそれが現在も持続しているか探るためにA短期大学看護学生とB大学生64名に無記名の質問紙調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。1)子どもの成長に対する母の影響は、家庭、社会生活の基本的な型の習得に、父、兄弟姉妹、祖父母、教師より大きく、歩行期に最大で、今も減少しながら学生の生活に役立っていた。(2)学童中期の初めに子どもが自己抑制を身につけると、母以外の他の影響が増えはじめた。この不明確な影響は集団社会が持っている、人に新しい精神的、肉体的な能力をあたえると思われる機能の影響が、学童中期から青年後期の初めに多くなった。
著者
山本 捷子 Shoko YAMAMOTO 日本赤十字秋田短期大学看護学科 THE JAPANESE RED CROSS JUNIOR COLLEGE OF AKITA
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.2, pp.17-23, 1998-03-31

現在でも,戦前の日本赤十字社の救護看護婦の活動を讃えている人々がいるが,それはなぜかという問題意識から,戦前の日赤看護婦にはどのような思想が期待されたか,ならびにそれが社会の思想,特に女子教育とどのように関連しているかを検討した。日赤看護婦の活動を支えた思想は,俗に「不撓不屈の日赤看護婦精神」といわれるものである。それは日赤の初代社長佐野常民の訓示や救護員十訓という徳目の教化や,直接的間接的な皇室崇拝の教化によって培われ,日赤看護婦に期待される「尽忠報国」や「奉仕,忍耐,献身」の思想が形成されたといえる。日赤看護婦思想形成の背景には,明治中期以後の教育勅語教育体制や女性観として良妻賢母思想の教育が存在し,学校教育と日赤看護婦の思想形成の教育方法は,儀式や旗,歌など情緒的注入方法の点で共通することを明らかにした。Why, even now, do people give such high praise to the Relief Nurse of the Japanese Red Cross of pre-World War II? This study is an investigation of what kind of spirit was expected of Japanese Red Cross Nurse in pre World War II times. The relation of this spirit to the stream of social thought and women's education at that time was clarified. The nurse's spirit of the Japanese Red Cross was called "Sacrificial" and "Inflexicible", and these endurance qualities supported their hard taskls and sufferings.
著者
松橋 朋子 村上 照子 Tomoko Matuhashi Teruko Murakami 日本赤十字秋田短期大学介護福祉学科 日本赤十字秋田短期大学介護福祉学科
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 = Journal of the Japanese Red Cross Akita College of Nursing and the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-40, 2010-01-01

本研究は、高齢者施設における災害対策の実態、災害介護教育に関する意識を把握することを目的とし、A県内の特別養護老人ホーム96ヶ所の管理者96名を対象に無記名の質問紙調査を実施した。58名から回答が得られ、以下のことが明らかになった。1)高齢者施設の被災経験は13.8%と少ない状況であった。また、被災時の対応として最も多かったのは「電気系統の確保」であった。2)防災訓練は全ての施設が実施していた。訓練の種類としては「避難訓練」「消火訓練」「通報訓練」「救護訓練」であり、22.4%の施設がこれらを組み合わせ「総合訓練」として実施していた。また、防災マニュアルについては87.9%の施設で整備されていたが、31.4%は定期的な評価・修正を実施していなかった。災害時の連絡体制としては59.6%が「緊急連絡網」を作成していた。災害備蓄品の種類としては「非常食」「飲料水・生活用水」が多く、合わせて72.2%であった。3)防災対策の今後の課題は、「防災体制の整備」「防災教育」「防災訓練」「防災設備・備品の整備」「防災マニュアルの整備」があげられた。4)管理者の77.6%が介護福祉士養成施設における災害介護教育の必要性を認識していた。同じく管理者の77.6%が高齢者施設における災害介護研修の必要性を認識していたが、災害に備えた研修を実施していた施設は37.9%であった。This study aimed to highlight awareness concerning countermeasures and education of nursing caretakers at elderly facilities in the event of a disaster. We administered an anonymous survey with questionnaires directed at administrators from 96 nursing homes in A Prefecture. We received 58 responses, which showed the following: 1)13.8% of the facilities surveyed showed a low ratio of disaster occurrence. "Securement of electrical systems" is the most frequently provided measure at the time of such disasters. 2)All facilities had already conducted disaster drills. There are four distinct drills: "an evacuation drill," " firefighting drill," "A reporting drill," and "a first‑aid drill." 22.4% of the facilities combined these drills into "A comprehensive drill" when actually conducting such drills. 87.9% of the facilities have prepared disaster prevention manuals, but 31.4% did not execute evaluations and or corrections. In regards to a "communications system" in place in case of a disaster, 59.6% had prepared "an emergency network." Emergency rations of food, drinking water, and clothes were stockpiled, which accounted for 72.2% of stockpile provisions. 3)Provisions for countermeasures against possible disasters included, "development of disaster prevention systems," "education for disaster prevention," "disasters drills," "maintenance of facilities and equipment," and "preparation of a disaster prevention manual." 4)77.6% of administrators acknowledged the necessity for training of nursing caretakers in the event of a disaster within the training facilities itself. 77.6% of the administrators acknowledged the necessity of training nursing caretakers in the event of a disaster within the elderly facilities, yet only 37.9% of these facilities have conducted such training in the event of a disaster.
著者
木村 滋 冨野 弘之 Shigeru KIMURA Hiroyuki TOMINO
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.10, pp.9-22, 2006-03-15

辺縁系由来の情動活性化、記憶、意識について脳科学を概観し、好みの音楽を聴いて影響される被験者の脳波(α,β,θ)を調査した。また、モーツアルトの小夜曲、バッハのG線上のアリアの最初の小節とこおろぎの音のスペクトル分析をした。これらの音楽と音は癒し効果があるということで知られている。研究者の中にはモーツアルトの音楽や秋のこおろぎのような虫の音の3.5KHz~4.5KHzの周波数帯の音は癒し効果があると信じている人もいる。脳波測定の被験者は10代後半の女性、20代前半の男性、50代の男性、60代の女性で好みの1つの音楽、実験用に指定したよく知られた2つの歌謡曲、バッハのG線上のアリアを聴きながら脳波(α,β,θ)を測定した。好みの音楽はそれぞれβ波減少(-11~-1.3%)、θ波減少(-10~0%)とαW増加(+21.2~0%)を示した。指定した音楽は好みの音楽とほぼ同様の効果を示した。音響学的に分析したモーツアルトのセレナーデとバッハのG線上のアリアは上記の周波数帯には部分的にしか集まっていなかった。
著者
山本 捷子 奥山 朝子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-35, 2000-03-31

平成11年度の日本赤十字社第一ブロック支部合同災害救護訓練に,本学看護学科2年生が参加したので,その概要を述べ,学習の結果を事後の意識調査にもとづいた評価考察したので報告する。北海道・東北各支部の11救護班による大規模な救護訓練に際し,学生は模擬傷病者や運搬要員として参加し,災害時の被災者の心理,災害時のボランティアとしての運搬要員の困難さ,救護班員に求められる態度について,大きな学びを得た。特殊メイクや迫真の演技は臨場感を高め,その中での体験学習は災害看護の理解に大きな効果をもたらした。
著者
重川 敬三 Keizo SHIGEKAWA
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.8, pp.47-51, 2003

20~21歳の健常な女性5名を対象に、空気動圧センサーを用いて音楽鑑賞時の呼吸周期の変動を調べ、リラックス感との関係について調査した。1.受動音楽により呼吸周期の変動が明らかとなり、呼吸変動係数とリラックスの感じ方では受動曲の違いにより変化が示された。2.呼吸変動係数とリラックスの感じ方は、個別性に影響されていることが示され、リラクゼーションを目的とした受動音楽では、個々のバックグラウンドや生活体験を考慮する必要性が示唆された。3.空気動圧センサーを用いることによって呼吸周期の変動を捉えることが可能となり、呼吸動態を基に音楽による生体反応について、今後、さらに解明されることが期待される。
著者
小坂 信子 大高 恵美 Nobuko KOSAKA Emi OOTKA 日本赤十字秋田短期大学看護学科 日本赤十字秋田短期大学看護学科 JOURNAL OF THE JAPANESE RED CROSS JUNIOR COLLEGE OF AKITA JOURNAL OF THE JAPANESE RED CROSS JUNIOR COLLEGE OF AKITA
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.12, pp.55-60, 2007

A県内看護教育機関7校を対象に、小児期感染症(麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎)の感染予防対策の現状を把握した結果、以下のことが明らかになった。1)抗体価検査は4種全てを「実施している」機関は3校あった。それらは1年次生に入学後に実施しており、経費負担は様々であった。2)既往歴の聴取は4種を4校が、予防接種歴の聴取は5校が実施していた。3)抗体価検査・既往歴の聴取・予防接種歴の聴取を行っていない機関が1校あった。4)学生への啓発活動は「入学時オリエンテーションでの説明」3校、「学内掲示板への掲示」2校あり、その他実習オリエンテーションや関連する講義で行っていた。今後、1年次早期に感染予防教育の一環として感染予防の意義や副反応対策までの具体的な説明の必要性が示唆された。
著者
池田充宏 佐藤 修康 澤村 省逸 Mituhiro IKEDA Nobuyasu SATOU Shoitu SAWAMURA 日本赤十字秋田短期大学 ASLI 岩手大学
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.1, pp.43-46, 1997-03-31
被引用文献数
1

近年,欧米では筋力の低下から来る日常生活への不適応を防ぐために,重量物等を使用した筋力強化運動が盛んに行われるようになってきた。中でも,ダンベル等の重量物を用いて行うアイソトニック・トレーニングは,トレーニングの目標を重さや回数を用いて具体的に決めやすく,手軽に実施できる利点がある。このような観点から,最近ダンベルを使った運動が手軽に出来る運動として,中高年を中心に盛んに行われ始めている。しかし,ダンベル運動実践者の中から重量,回数,頻度等の過負荷からくる関節及び筋肉等の運動器の障害が多く見られるようになった。この問題を解決するために,伸縮性の高いゴムバンドを使った運動が行われるようになってきた。そこで,本研究においてはダンベルを使った運動とゴムバンドを使った運動が生体にどのような影響を及ぼすかについて,力学的に解析することで両運動の特性を明らかにすることした。その結果,力学モデルによる比較においてダンベル運動には激力と呼ばれる筋及び関節を傷害する大きな力が作用することが明らかとなった。また,力学モデルに条件を指定して検討した結果からも同様の結果を得た。従って,筋及び関節への過負荷を防ぎ,運動効果を期待するためにはダンベル等の重量物を使用した運動よりゴムを使用した運動が初心者や中高年には有効であると思われる。
著者
志賀 くに子 伊藤 榮子 Kuniko SHIGA Eiko ITOU 日本赤十字秋田短期大学看護学科 日本赤十字秋田短期大学看護学科
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.11, pp.29-35, 2007-03-20

産褥早期の乳房・乳頭トラブルの発生件数・内容およびそれらに対するケア内容について明らかにすることを目的に、秋田県内医療施設(18施設の褥婦364名)に対して調査を行った。その結果を以下に示す。1.乳房・乳頭トラブルは153名(42.0%)の褥婦に発生しており、最も多い発生時期は産褥3日目の52名(34.0%)であり、次いで産褥2日目の42名(27.5%)、産褥4日目の26名(17.0%)であった。2.乳房・乳頭トラブルの発生状況で最も多いのは、亀裂の56名(36.6%)であり、次いで痛みの38名(24.8%)、うつ乳の30名(19.6%)、発赤の28名(18.3%)、硬結の27名(17.7%)であった。3.乳房・乳頭トラブル時のケア内容で最も多いのは、授乳指導の82名(53.6%)であり、次いで乳頭マッサージの50名(32.7%)、自己搾乳指導の47名(30.7%)、生活指導の35名(22.9%)、冷湿布の30名(19.6%)であった。Our aim is to elucidate the incidences and types of breast and nipple problems in puerperal women and their treatment at medical facilities in Akita prefecture (18 facilities, 364 women). Wepresent the results as follows. 1. Breast and nipple problems were experienced by 153 puerperal women (42.0%). Symptoms most commonly emerged at 3 days postpartum (52 women, 34.0%) followed by 2 days postpartum in (42 women, 27.5%) and 4 days postpartum (26 women, 17.0%). 2. The symptom with the highest incidence was cracked nipples (56 women, 36.6%) followed by pain (38 women, 24.8%), and galactostasis (30 women, 19.6%), redness (28 women, 18.3%), and engorgement (27 women, 17.7%). 3. The most common treatment in response to breast and nipple problems was breastfeeding assistance (82 women, 53.6%) followed by nipple massage (50 women, 32.7%), assistance in manual extraction of milk (47 women, 30.7%), lifestyle guidance (35 women, 22.9%) and cold compress (30 women, 19.6%).
著者
土室 修 大島 久直 Osamu TSUCHIMURO Hisanao OHSHIMA 介護福祉学科 介護福祉学科
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.4, pp.91-98, 2000-03-31
被引用文献数
1

明治期から現在にかけて,農山村社会は大きく変化している。これまで,村落共同体に存在していた相互扶助や,家族がもっていた,生産,消費,生活保障,教育,娯楽,信仰,文化伝達といった機能は縮小し,その代替えとして,社会的諸制度が補完している。だが,高齢社会にあるいま,社会的諸制度だけでなく,地域と家族における共助・自助は,もっとも基本的支援体制であり,この基盤づくりが求められている。そのための前提として,本稿では,これまで農山村において,どのような相互依存関係があったのか,また,どのように変化したのか,その過程を明らかにしていく。From the Meiji era to the present, the farm village society has been changing a lot. Although the mutual aid custom existed in the local community and some family functions have substantially existed in it, now the functionmust be reduced and the social system have to come to complement these functions. Now, we need public welfare and the basis of the mutual aid as well as a fundamental organization to support familis, in the aging society. I, therefore, clarify the process of what the interdependent relation had grown and how it has changed in farm villages.
著者
齋藤 和樹 前田 潤 丸山 真理子 Kazuki SAITO Jun MAEDA Mariko MARUYAMA 看護学科(臨床心理学) 室蘭工業大学共通講座(災害心理学) 秋田赤十字病院心療センター
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.10, pp.23-32, 2006-03-15
被引用文献数
1

日本赤十字社から海外に派遣された救援要員のストレス要因を50人のアンケート結果から分析した。アンケートでは、時系列に沿って「I.海外派遣が決まってから出発するまで」、「II.現地に到着直後」、「III.現地で活動中」、「IV.帰国が決まって帰国するまで」、「V.帰国後仕事に復帰して」の5つの時期に、「1.どのようなストレスを感じたか」、「2.それらにどのように対処したか」、「3.その対処はどの程度有効であったか」、「4.感じているストレスに対して所属する機関や周囲の人にどのように対応してもらいたかったか」を聞いた。各時期にさまざまなストレスがあり、対処法もさまざまであったが、いくつかの時期に共通して見られるストレス要因も見いだせた。それらは「情報不足」、「コミュニケーション・言語の問題」である。これらを解決することは、派遣要員のストレスの軽減になるだろう。また、対処法の効果の10段階評価を見ると、「V.帰国後仕事に復帰して」が他の時期に比して低かった。帰国後の職場での派遣員への理解と配慮の必要性も伺われた。Stress factors of 50 delegates who were sent abroad from the Japanese Red Cross Society were analyzed. A special questionnaire was created to analyze stress factors at 5 situation points throughout the time line, which included" I. Pre-departure", "II. Initial arrival in the field", "III. During the mission", "IV. Mission completion, before returning to Japan.", and "V. After returning to Japan and the workplace." There were 4 questions for each situation included; "1. What kind of stress did you experience?", "2. How did you cope with the stress?", "3. How effective was your coping strategy?", "4. What did you want your workplace to do to assist you in coping?". Various kinds of stress factors in each situation and various coping styles are found. "Lack of information" and "communication and language problems", however, were common stress factors throughout all the situations. Solving these problems is expected to reduce their stress levels. In addition, the mean score of question 3 (coping effectiveness) in Situation V (after returning) showed lower scores than the other situations. The necessity for understanding and care given to the delegates after they come back to Japan was suggested.
著者
廣渡 太郎
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.14, pp.53-60, 2009

日本放送協会(NHK)制作のテレビ番組「英語でしゃべらナイト」内の1コーナーとしてスタートした「パックン英検」は、ある英単語の語義説明を英語で聴き取り、その英単語が何かを答えるというリスニングクイズである。本資料は、「パックン英検」に関して、番組制作上のねらい、および、出題の作成方法を明らかにするとともに、日本人英語学習者を対象にした英語授業において、「パックン英検」を補助教材として活用するアイデアの紹介を目的とする。
著者
木村 滋 冨野 弘之 Shigeru KIMURA Hiroyuki TOMINO 日本赤十字秋田短期大学 日本赤十字秋田短期大学事務部
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.10, pp.9-22, 2006-03-15

辺縁系由来の情動活性化、記憶、意識について脳科学を概観し、好みの音楽を聴いて影響される被験者の脳波(α,β,θ)を調査した。また、モーツアルトの小夜曲、バッハのG線上のアリアの最初の小節とこおろぎの音のスペクトル分析をした。これらの音楽と音は癒し効果があるということで知られている。研究者の中にはモーツアルトの音楽や秋のこおろぎのような虫の音の3.5KHz~4.5KHzの周波数帯の音は癒し効果があると信じている人もいる。脳波測定の被験者は10代後半の女性、20代前半の男性、50代の男性、60代の女性で好みの1つの音楽、実験用に指定したよく知られた2つの歌謡曲、バッハのG線上のアリアを聴きながら脳波(α,β,θ)を測定した。好みの音楽はそれぞれβ波減少(-11~-1.3%)、θ波減少(-10~0%)とαW増加(+21.2~0%)を示した。指定した音楽は好みの音楽とほぼ同様の効果を示した。音響学的に分析したモーツアルトのセレナーデとバッハのG線上のアリアは上記の周波数帯には部分的にしか集まっていなかった。We have surveyed emotional activation originated from the neurological system (the limbic cortex), memory, consciousness, and have investigated the brain waves (α, β, θ) of subjects influenced by listening to their favorite music. We also have spectrographically analyzed the first parts of two pieces of music, Mozart's Eine Kline Nacht Musik, and Bach's Air on the G String and also a high-pitched sound (around 2.7KHz~3KHz) of a cricket in autumn. This music and the cricket sound are famous for their healing effect on many people. Some researchers have believed the frequency bound of these pieces of music and the sound of an insect, like a cricket, should focus on around 3.5KHz to 4.5KHz, the sound frequency which might affect healing. As to EEG measurements, the subjects were, a female in her late teens, a male in his early 20's, a male in his 50's and a female in her 60's. They have listened to the above music. Their favorite music decreased β wave (-11~-1.3%) and θ wave (-10~0%), and increased α wave (+21.2~0%), respectively. The assigned 3 pieces of music along with a piece of classic music (the Bach's Air on the G String) for the experiment had about the same effectiveness on them as their favorite music had. The sonogram of the part of Mozart's serenade and Bach's Air on the G string analyzed acoustically, partially showed a slight distinguished focus of the above frequency band.
著者
原田 慶子 齋藤 貴子 Keiko HARADA Takako SAITO 看護学科 看護学科
出版者
日本赤十字秋田短期大学紀要編集委員会
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.7, pp.69-74, 2003-03-15

本研究の目的は、教員2人が同じ方向で関わるためのあり方について考察することである。卒業研究における学生への関わりの過程をふり返ることによって、以下のことが明らかになった。1.学習目標や関わり方の方向性、お互いの役割の確認を早い時期に行う。確認後も途中で教員間に考え方の相違がある時は、2人で話し合う場をもち調整する。2.新人教員が窓口となるスーパービジョンですすめ、要所で2人の教員が参加するゼミナール形式の話し合いをする。3.話し合いの場では、学生の反応や話し合いの流れをみて、お互いに補い合う。The purpose of this research is to consider the way how to cooperate two teachers for the same direction. By looking back upon the process of graduation research, the following things became clear. 1. A study target, and the method of relation and each other role should be checked early. When a difference of a view exists among teachers on the way, it should be discusses and adjusts by two persons. 2. It is the Supervision from which a newcomer teacher becomes a window, and discusses a seminar at the key point. 3. Two teachers should support each other based on a student's reaction or the flow of talks.
著者
松橋 朋子 村上 照子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.16, pp.11-18, 2011

本研究は、高齢者施設における災害対策の実態、災害介護教育に関する意識を把握することを目的とし、A県内の特別養護老人ホーム96ヶ所の介護職員480名を対象に無記名の質問紙調査を実施した。263名から回答が得られ、以下のことが明らかになった。1.被災経験がある人は36.5%であり、災害の種類としては地震が多かった。2.91.6%の施設が年2回以上の防災訓練を実施していた。訓練の種類としては「避難訓練」「災害種類別防災訓練」「消火訓練」「通報訓練」「非常食調理訓練」「救護訓練」であり、97.3%が訓練が実際に活用できると答えていた。また、防災マニュアルについては91.3%の施設で整備されていたが、14.6%がマニュアルを読んでいなかった。3.防災体制・設備の把握状況では「災害発生時の連絡体制」「避難経路」について認知度が高く、介護職歴で有意な差は見られなかった。4.災害や防災に関して感じていることとしては、「不安」「訓練・日頃の備えの必要性」「防災意識の向上」の順に多くあげられた。5.介護職員の79.1%が介護福祉士養成施設における災害介護教育の必要性を認識していた。介護職員の73.8%が高齢者施設における災害介護研修の必要性を認識していたが、災害に備えた研修を受講していたのは27.8%であった。
著者
松橋 朋子 村上 照子
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.16, pp.37-44, 2011

本研究は、高齢者施設における災害(地震)時の対応、具体的な実践内容を把握することを目的とし、新潟県中越沖地震にて緊急的に避難者を受け入れた特別養護老人ホーム及び福祉避難所となった特別養護老人ホームの2ヶ所の施設管理者を対象に半構成インタビューによる面接調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。1.利用者及び避難者へ対しては、安全な一時的待機場所へ避難・誘導し、ボランティアと共に日常生活支援を中心に行っていた。ボランティアについては受け入れニーズの把握とコーディネイターの必要性が示唆された。2.職員の勤務体制・緊急招集については、マニュアルの整備に加え状況に応じた判断が求められ、メールを活用した連絡が有効であった。3.状況に合わせた実践的な防災訓練が実施されており、訓練に当たっては施設の構造を踏まえた避難方法及び職員の配置の必要性が示唆された。4.災害時に介護者に必要とされる能力については「状況に合わせた創意工夫のあるケア」「利用者の話をよく聴く姿勢」があげられた。5.施設における災害対策の課題としては、「防災体制の整備と防災意識の向上」「被災経験及び実践内容の伝承」「情報の入手及び共有化の体制整備」「職員のケア」があげられた。福祉避難所の課題としては、「福祉系トリアージの確立」「コーディネイターの養成」「平時からの福祉避難所の選定」があげられた。