- 著者
-
松永 知大
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2010
近年、夜11時以降に就寝する学童が、全体の半数以上を占めるようになるなど、子どもの夜更かしと、それにともなう睡眠障害の増加が問題視されている。また、これらの睡眠障害が、学童の注意力・忍耐力の低下を初めとした、学童に多く認められる各種の心理的・行動的問題の要因となっている可能性が指摘されている。しかし、学童の睡眠の実態把握は進んでおらず、客観的根拠に基づいた生活指導を行うのに必要とされるデータが、十分に整備されていないのが現状である。そこで、アクチグラムを用いた体動量計測による学童の睡眠の客観的評価と、行動学的手法による学童の認知情動能力の客観的計測を行なうことで、(1)学童の睡眠の実態把握を推進すると共に、(2)睡眠の質が学童の認知情動能力に与える影響を実証的に検討することを目的とし本研究を実施した。本年度は、小学3・4年生20名、小学5・6年生20名を対象に以下の測定を実施した。測定1:アクチグラフを一週間にわたり装着してもらい、客観的生活リズム測定を行った。測定2:客観的生活リズム測定終了後、標準化された行動課題(フランカー課題)を実施し、注意能力測定を実施した。測定1のデータをもとに、小学生の夜間睡眠を特徴づける睡眠パラメータ(実質睡眠時間・睡眠効率・中途覚醒回数など)を抽出した。これら睡眠パラメータと測定2で計測した注意能力との相関を分析した結果、両群で注意能力の指標となるConflicting Scoreと実質睡眠時間との間に有意な負の相関がみられた。この結果は、実質睡眠時間が短い小学生ほど、日中の注意能力が減退している可能性を示唆している。