著者
松沢 寛 北原 洋生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.232-235, 1966
被引用文献数
3 3

ヒトスジシマカの生態, とくに, その産卵, 発育, 成虫の生存期間等を調査研究し(1965), 次のような成績をえた. 1) 野外から採集した吸血ずみの雌蚊は, 25℃で80%ぐらいまで, 正常に産卵した.これらは, 捕獲後3〜5日間に, 全卵の80%まで産卵した. 2) 1雌成虫あたりの平均産卵数は, 25℃の温度のもとで, 80個内外であつた. 3) 各ステイジの発育所要日数は, 20℃では, 卵8.1日, 幼虫10.2日, さなぎ5.9日計24.3日, 25℃では卵3.8日, 幼虫7.5日, さなぎ2.4日, 計13.7日となり, 30℃では, 卵3.8日, 幼虫5.9日, さなぎ2.3日計12.0日であつた.これらの成績から, 本種の発育零点は, 卵10°〜11℃幼虫9℃, さなぎ11.5°〜13.5℃, 全体を通すと9°〜10℃と推定された. 4) 成虫の25℃における生存日数は, 雌より雄の方が多少短かかつた.水のみを給与した場合は, 概して6〜7日, 砂糖水(20%)を給与した場合は, 21〜26日であつた.しかし, 飼育容器が適当であれば, いつそう生存日数が長びくものと思われる.
著者
松沢 寛
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.251-256, 1964-09-25
被引用文献数
2

現行流下式塩田の流下盤内に無数の坑道を作って生息するオオツノハネカクシの甚大なる虫害は, 本邦製塩業上大きな問題となっているが, 1963年秋以来1年余りの間, 本種の生態について調査研究を行なった結果, 1年3回(時に一部は4回)の発生をなし, 一部はさなぎ, 大部分は成虫にて越冬することがわかった。産卵期は大まかには, 4月中旬〜5月下旬ないし6月上旬, 6月下旬〜7月中下旬, 8月下旬〜9月下旬の3期で, またその発育所要日数は, 卵14〜20日, 幼虫40〜50日, 前蛹2〜4日, さなぎ6〜8日であった。幼虫は5令の令期をもつようで, 卵から成虫までは, 普通70日内外であった。成虫の生存日数は, 越冬期は2〜4月またはそれ以上にもわたるが, 活動期には概して20〜40日ぐらいであった。また産卵は1粒ずつ坑道の壁の小孔中になされるが, 5〜10卵ずつ2〜3回産卵されるもののごとく思われた。流下盤での生息は, 給水樋に近い, 盤長の大体1/3〜2/3にあたる部分で, 無数に作られた坑道は, 垂直的なものがもっとも多く, 盤底までの貫通率もかなり高かった。成虫の青色螢光灯への飛来は非常に顕著で, この方法は, 本種防除の1策となりうると思われた。本種の分布は, 調査の結果, 愛知県以西の現行流下式塩田に例外なく分布することが明らかとなり, また旧入浜式塩田跡にも, ほとんどすべて生息するようであった。