著者
松葉 成生 吉見 翔太郎 井上 幹生 畑 啓生
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.89-96, 2014-11-05 (Released:2016-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

Phylogeographic analysis of the bitterling Tanakia limbata in western Japan was conducted to identify the origin of the fish population in Ehime, Shikoku Island. A survey of rivers and spring-fed ponds on the Matsuyama Plain, Ehime, indicated that T. limbata had become distributed on the plain over a period of 19 years to the present day. Sequences of the mitochondrial cytochrome b gene indicated that the 42 individuals sampled included 4 haplotypes, which were shared with a T. limbata population in the Yabe River, Fukuoka, Kyushu Island. All 4 haplotypes belonged to the West Kyushu group of T. limbata. On the other hand, T. limbata comprising the West Seto clade inhabits western Honshu and eastern Kyushu, which regions shared the same paleoriver system with Ehime 20,000 years BP. These results suggest that individuals of T. limbata presently collected in Ehime originated from the Yabe River or adjacent waters, having artificially transported over the mountain chain that may act as a natural barrier separating the West Kyushu and West Seto groups. To conserve an endangered native bitterling, T. lanceolata, in Ehime, management of the introduced T. limbata, so as to prevent competition and hybridization with the former, is necessary.
著者
桑原 明大 松葉 成生 井上 幹生 畑 啓生
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.91-103, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
49

愛媛県松山平野には、イシガイ、マツカサガイ、ヌマガイ及びタガイの4種のイシガイ科貝類が生息しており、愛媛県のレッドリストでイシガイとマツカサガイはそれぞれ絶滅危惧I類とII類に、ヌマガイとタガイは準絶滅危惧に指定され、減少が危惧されている。これらの二枚貝は絶滅危惧IA類であるヤリタナゴの産卵床でもあり、その保全が重要である。本研究では、松山平野の小河川と湧水池において、イシガイ類の分布と生息環境の調査を行い、過去の分布との比較を行った。また、マツカサガイの殻長のサイズ分布、雌成貝によるグロキディウム幼生の保育、幼生の宿主魚への寄生の有無を調べた。マツカサガイは小河川の流程およそ3.3 km内の15地点で確認され、その生息密度は最大で2.7個体/m2であった。イシガイは小河川の2地点のみで、最大生息密度0.05個体/m2でみられ、ヌマガイとタガイを合わせたドブガイ類も1地点のみ、生息密度0.02個体/m2で確認された。いずれのイシガイ類も、1988-1991年の調査時には国近川水系に広く分布し、最大生息密度は、マツカサガイで58個体/m2、イシガイで92個体/m2、ドブガイ類で5個体/m2であり、この25年間に生息域と個体群サイズを縮小させていた。また、マツカサガイの在不在に関与する要因を予測した分類木分析の結果、マツカサガイの分布は河口に最も近い堰堤の下流側に制限され、砂泥に占める砂割合が38.8%より大きい場所で多く見られるという結果が得られた。このことから、堰堤が宿主魚の遡上を制限することによりマツカサガイの上流への分散が阻害されていること、マツカサガイは砂を多く含む砂泥を選好していることが示唆された。また、殻長51.5 mm未満の若齢個体にあたるマツカサガイは全く見つからなかった。一方、雌成貝は4-8月にかけ最大87.5%の個体が幼生保育しており、5-9月にかけ、グロキディウム幼生が主にシマヨシノボリに多く寄生していることが確認された。したがって、このマツカサガイ個体群では再生産がおよそ10年間にわたって阻害されており、その阻害要因は稚貝の定着、または生存にあることが示唆された。以上のことから、松山平野では、イシガイ個体群は絶滅寸前であり、マツカサガイ個体群もこのまま新規加入が生じなければ急速に絶滅に向かう恐れがあることがわかり、これらの保全が急務であることが示された。