著者
伊藤 浩 寺西 正 平山 光久 岡本 巡 松野 丈夫 三浪 明男
雑誌
関節の外科 (ISSN:02856255)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.85-89, 2004-10

著者版若年性関節リウマチ(JRA)に対する人工股関節再置換術(revision) について検討した.対象は,revisionを施行した3例5関節(全例男性,手術時平均年齢30歳)で,平均経過観察期間は6.0年,revision施行理由は機械的なTHAおよび人工骨頭の弛みが4関節,ポリエチレンライナーの脱転が1関節であった.1)臨床評価は日整会スコアが術前平均38点から70点に改善し,股関節可動域は屈曲が術前平均65°から95°へ,外転は術前平均15°から25°へ改善した.2)X線評価ではlooseningは認めず,clear zoneはsocket側では全例で認めず,stem側ではセメント使用の2関節の正面像でzone 1とzone 7に若干のclear lineを認めた.3)RAのclass分類では術前class IIIであった2例がclass IIへ改善していた.以上,JRAに対するrevisionでは骨量温存に努め,人工骨頭の耐久性を最も重視すべきだと考えられた。
著者
熱田 裕司 後藤 英司 武田 直樹 松野 丈夫 佐藤 雅規 猪川 輪哉
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今年度においてはin vivoにおいて神経根由来の異所性発火を観察できる実験モデルを作成し、以下に述べる2種類の検討を行った。実験にはラットを用い、除脳後に後枝腓腹神経より双極電極にて知覚神経を逆行する神経発火活動を導出記録した。この手法によって、腰部神経根が刺激されることに基づいて発生する異所性発火が評価できることを確認した。(1)実験1:髄核投与による異所性発火の発現ラットの第5、6腰部神経根を露出し、尾椎から摘出した髄核を留置した。その後1、2,4週において腓腹神経から異所性発火にもとづく自発性神経活動を導出し、発火頻度を測定した。無処置対照と比較していずれの時期においても発火頻度は有意に増大しており、2週で最大値をお示した。一方、馬尾刺激により坐骨神経で得られた誘発電位を用いて神経伝導速度を測定すると、その値に低下は見られなかった。これらのことから、髄核は神経根に作用して異所性発火を誘発するが、伝導障害を引き起こすことは無いと考えられた。(2)馬尾圧迫による一酸化窒素感受性変化ラット馬尾レべルにおいてシリコンチューブを脊柱管内に挿入し、1週間経過させた馬尾圧迫モデルを作成した。1週間後の観察において、腓腹神経の活動は有意に増大しており、異所性発火が発現していることが確認された。この動物において神経根に一酸化窒素やセロトニンを作用させると、著名な発火増大が見られた。このような変化は馬尾圧迫の無い動物では少なかった。以上の結果は坐骨神経痛の発生機序を理解する上で重要な、髄核の影響、ならびに物理的圧迫と化学的刺激の相互関係、を明らかとしたと考えられた。