著者
高原 幹 板東 伸幸 今田 正信 林 達哉 野中 聡 原渕 保明
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.1065-1070, 2001-11-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
12
被引用文献数
9 7

尋常性乾癬7例に対する扁摘の効果とその病理学的特徴について検討した. 7例の内訳は男性3例, 女性4例であり, 年齢は9歳から46歳であった. 扁摘による効果は3例が消失, 2例が著効であり, 治療効果は約70%に認められた. 病理学的な検討として, CD20抗体と抗ssDNA抗体による扁桃組織の免疫染色を行い, B細胞, T細胞, BT混合領域の面積とB細胞領域のアポトーシス細胞数を測定した. その測定値を習慣性扁桃炎, IgA腎症, 掌蹠膿疱症と比較した. 結果は, 乾癬と掌蹠膿疱症において有意なT領域の拡大, Bリンパ濾胞の縮小, リンパ濾胞内でのアポトーシス細胞の増加が認められた. このような結果から, 乾癬の中には, 臨床的のみならず組織学的にも掌蹠膿疱症と同様に扁桃病巣感染症の特徴を持つ症例が存在することが示唆された. また, 掌蹠膿疱症, IgA腎症, 乾癬症例における消失群と著効・改善群を比較すると, 消失群では有意にT領域の拡大を認めた. このような結果から, T領域の測定は術後の扁摘効果を反映する組織学的検査に成り得る可能性が期待された. 今後症例数を増やし更なる検討を加える予定である.