著者
野村 研一郎 片山 昭公 高原 幹 長門 利純 岸部 幹 片田 彰博 林 達哉 原渕 保明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.58-63, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
6

Video-Assisted Neck Surgery(以下 VANS 法)は,前胸部外側に作成した皮膚切開部から皮弁を吊り上げることでワーキングスペースを作成し,内視鏡補助下で甲状腺切除を行う術式である。創部が衣服で隠れるため,若年女性にとって有益な術式であるが,特殊な手術器具を要するため,小児での報告は少ない。当科で2009年から VANS 法で手術を行った210例のうち15歳以下の小児 3 例を認めた。よって,これらの症例の治療経過と小児甲状腺結節に対する手術適応についての検討を行った。全例甲状腺に約 3 cm 大の充実性の結節性病変を認めており,全例合併症なく成人と同様に手術を行うことが可能であった。3 例とも摘出病理は良性の結果であったが,濾胞腺腫と思われた一例で,実際は濾胞癌であり,術後半年後にリンパ節転移を認めたため,手術を含めた追加治療が行われた。成人同様,3 cm を超えるような甲状腺結節の際には手術治療を念頭におく必要があると考えられ,VANS 法は小児にも適応可能であった。
著者
高原 幹
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.111-114, 2016

SAPHO 症候群51症例に対し扁桃摘出術を施行し, 35例 (68%) の患者で疼痛が消失, 47例 (92%) の患者で有効以上の効果が得られた. また, 術後3ヵ月までに91%の患者で関節痛の改善がみられた. また, SAPHO 症候群の病態の一つに掌蹠膿疱症と同様に扁桃リンパ球の病巣へのホーミングが関与している可能性が示唆された. SAPHO 症候群の関節痛に対する扁摘の効果は非常に高く, 扁桃病巣疾患のひとつと考えられた.
著者
小林 祐希 野澤 はやぶさ 後藤 孝 吉崎 智貴 高原 幹 原渕 保明
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.289-296, 2005-06-01
被引用文献数
8 5

ベーチェット病は, 口腔咽頭などの消化管粘膜潰瘍, ぶどう膜炎などの眼病変, 結節紅斑などの皮膚症状, 外陰部潰瘍など多彩な症状を呈する原因不明の炎症性全身疾患でりしばしば治療に難渋する.<BR>ベーチェット病の中には上気道炎や扁桃炎によって発症または症状の悪化がみられる症があるとの報告があり, 扁桃病巣感染症の一つと考えられている.今回我々は, 扁桃病感染症が疑われたベーチェット病4症例に対し両側口蓋扁桃摘出術 (扁摘) を施行したで報告する.<BR>扁桃炎の既往, および扁桃炎時にベーチェット病の症状が増悪したエピソードのある症例では, 扁摘によって術後に明らかな症状の改善が認められた.他の2症例においてプレドニゾロン等の併用にて症状の改善が認められた.<BR>自覚的なスケールを用いた扁摘後のベーチェット病の改善度を判定した結果は, 今回示した4症例全てにおいてスコアの改善が認められ, 扁摘への満足度は高いものと思わた.
著者
関根 一郎 岸部 幹 高原 幹 片田 彰博 林 達哉 原渕 保明
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.169-174, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
21

神経内分泌細胞癌(neuroendocrine carcinoma; NEC)は頭頸部では比較的稀である。また,遠隔転移しやすい腫瘍としても知られている。2003年から2020年までに当科で経験した鼻・副鼻腔に発生した神経内分泌細胞癌について検討した。症例は7例で,男性4例,女性3例であり,年齢中央値は60歳(45歳~79歳)であった。原発部位は上顎洞3例,篩骨洞2例,蝶形骨洞1例,鼻腔1例であった。治療は化学放射線療法が中心で,手術治療が行われたのは2例のみであった。7例中1例は1次治療が奏功せず原病死となった。他の6例は全例で1次治療が奏功した。1次治療が奏功した6例のうち,2例が5年無病生存となったが,3例が遠隔転移をきたし原病死し,1例は他病死となった。鼻・副鼻腔原発のNECは手術や化学放射線療法による局所制御は比較的良好であるが,遠隔転移をきたす症例が多く,遠隔転移の制御が予後に関与すると考えられた。
著者
高原 幹
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 (ISSN:24357952)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.129-133, 2021 (Released:2021-12-28)
参考文献数
22

扁桃病巣疾患に関する本教室の基礎的,臨床的検討の結果を概説する。本疾患群の病因として,常在細菌や内在するDNAに対して扁桃が過剰免疫応答を起こし,ホーミング受容体を介した扁桃T細胞の病巣への遊走,IgAを含めた免疫グロブリンの量的,質的産生異常が背景にあり,扁桃を原因とした自己免疫・炎症疾患症候群(tonsil induced autoimmune/inflammatory syndrome:TIAS)であると考えられる。TIASを構成する疾患において扁桃摘出術の効果は高く,耳鼻咽喉科を紹介された症例において,積極的に手術を勧めることが望まれる。
著者
高原 幹 板東 伸幸 今田 正信 林 達哉 野中 聡 原渕 保明
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.1065-1070, 2001-11-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
12
被引用文献数
9 7

尋常性乾癬7例に対する扁摘の効果とその病理学的特徴について検討した. 7例の内訳は男性3例, 女性4例であり, 年齢は9歳から46歳であった. 扁摘による効果は3例が消失, 2例が著効であり, 治療効果は約70%に認められた. 病理学的な検討として, CD20抗体と抗ssDNA抗体による扁桃組織の免疫染色を行い, B細胞, T細胞, BT混合領域の面積とB細胞領域のアポトーシス細胞数を測定した. その測定値を習慣性扁桃炎, IgA腎症, 掌蹠膿疱症と比較した. 結果は, 乾癬と掌蹠膿疱症において有意なT領域の拡大, Bリンパ濾胞の縮小, リンパ濾胞内でのアポトーシス細胞の増加が認められた. このような結果から, 乾癬の中には, 臨床的のみならず組織学的にも掌蹠膿疱症と同様に扁桃病巣感染症の特徴を持つ症例が存在することが示唆された. また, 掌蹠膿疱症, IgA腎症, 乾癬症例における消失群と著効・改善群を比較すると, 消失群では有意にT領域の拡大を認めた. このような結果から, T領域の測定は術後の扁摘効果を反映する組織学的検査に成り得る可能性が期待された. 今後症例数を増やし更なる検討を加える予定である.
著者
高原 幹 野沢 はやぶさ 岸部 幹 原渕 保明
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.277-283, 2003-06-01

掌蹠膿疱症は扁桃病巣感染症の中でも代表的疾患であり, 扁桃摘出術が非常に高い治療効果をもたらす疾患である.当科における45例の検討でも, 有効以上の効果は38例 (85%) に認められ, 高い改善率を示した.術後改善度と年齢, 性別, 胸肋鎖骨過形成症合併の有無, 病悩期間などの患者背景や, 血清ASO, ASK, IgA, IgM, IgG値, 扁桃病理組織におけるT細胞領域, B細胞領域の面積比の相関を検討した所, T細胞領域において術後改善度と正の相関が認められ, 術後改善度を予測する因子となり得る可能性が示唆された.<BR>以前より, 掌蹠膿疱症扁桃の病理組織において, T細胞領域の拡大が認められる事が報告されている.このT細胞領域では, CD25陽性活性化T細胞の増加が認められ, T細胞制御因子 (CTLA-4, Smad7) のmRNA発現低下が認められたことから, その拡大はT細胞の制御機構の障害による活性化, 増殖によるものと推測された.T細胞制御の障害は無秩序な免疫反応を助長し, 自己抗体産生に繋がることが予想され, この事が掌蹠膿疱症の病因に関与している可能性が示唆された.このことから, T細胞の活性化を表す指標が術後の改善度を予測する因子になる事が予想される.その一つとして, T細胞領域の計測が考えられるが, それ以外にもT細胞の活性化を反映するより簡便な指標が存在する可能性もある.より高い改善率を目指すために, それらの指標に関してさらに検討を進める必要があると考える.
著者
片山 昭公 荻野 武 高原 幹 岸部 幹 野沢 はやぶさ 石田 芳也 野中 聡 原渕 保明
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.38-39, 2003-06-30

雑誌掲載版著作権は学会所属頭頸部扁平上皮癌における各種ケモカインレセプターCXCR4の発現とその走化性,浸潤能における役割について検討した.RT-PCR法,フローサイトメトリーによるCXCR4発現解析では,舌癌細胞株には発現を認めなかったが,口腔癌細胞株HSQ-89と上顎癌細胞株IMC-3においてCXCR4の発現が認められた.Invasion Assayにおいて,CXCR4を発現している口腔癌細胞株HSQ-89と上顎癌細胞株IMC-3においてSDF-1が有意に走化・浸潤性を促進した
著者
高原 幹 野澤 はやぶさ 岸部 幹 柳井 充 片山 昭公 今田 正信 林 達哉 野中 聡 原渕 保明
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.84-85, 2003-06-30

著作権は学会に属す出版社版旭川医科大学医学部付属病院耳鼻咽喉科にて掌蹠膿疱症群の扁桃摘出術で得られた口蓋扁桃を用いて,RT-PCRでSmad 7 mRNA過剰発現を蛋白レベルで検討した.Smad 7のウエスタンブロットにより,掌蹠膿疱症群にてバンド濃度の上昇が認められた.CD3,α-Tublinのバンド濃度は比較的均一であった.Smad 3のウエスタンブロットでは,疾患群間に明らかな差は認められなかった.α-Tublinで補正後したバンド濃度の解析で,掌蹠膿疱症扁桃Tリンパ球においてSmad 7蛋白が有意に過剰発現していた
著者
原渕 保明 坂東 伸幸 高原 幹 岸部 幹 後藤 孝 野澤 はやぶさ 吉崎 智貴
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.805-812, 2006-10-01
被引用文献数
2 1

Pustulosis palmaris et plantaris (PPP), Sterno-costo-claviclar hyperostosis (SCCH), IgA nephropathy, and some other autoimmune diseases have been regarded as tonsillar focal infections since tonsillectomy is quite effective in the treatment of these diseases. In this paper, we reviewed recent clinicopathological evidence on tonsillar focal infections obtained through our experience as well as in the literature. In addition, we summarized experimental results regarding mechanisms of the development and progression of tonsillar focal infections. It has been speculated that abnormal immune responses in the tonsils may cause or worsen the disease. Therefore, tonsillectomy should be recommended for the treatment of tonsillar focal infections.
著者
石田 芳也 安部 裕介 柳内 充 野澤 はやぶさ 岸部 幹 高原 幹 原渕 保明
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.82-83, 2002-06-30

著作権は学会に属す出版社版健常成人3名についてP6蛋白及びオーバーラッピングペプチドに対するリンパ球増殖反応を行った.増殖反応の評価は,stimulation indexを用いて,2以上の場合を反応陽性とした.3例ともP6とPHAについては明らかな強い反応を認め,ネガティブコントロールのyellow feverのペプチドでは認めなかった.オーバーラッピングペプチドに対しては1〜4番,9〜11番,13番のペプチドに対して反応を認めた.ヒトP6蛋白のエピトープ部位は,少なくともN末端側に2ヶ所,中間に1ヶ所,C末端側に1ヶ所存在することが推測された