著者
福永 博文 林 邦雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.1-15, 1976-12-15 (Released:2017-07-28)

本研究は、精神遅滞を伴う多動児に対してオペラント条件づけ法を適用し多動行動の減少と多動行動に伴う行動特徴の変容過程の分析を目的として試みられた。行動分析は、PEDO METERによる運動量の測定と観察される行動特徴の2つの側面からなされ、それはベースライン期間、条件づけ期間、フォローアップ期間を通して行なわれた。行動特徴は、4カテゴリー、20サブカテゴリー、77項目が観察された。治療は、第1ベースライン期、第1条件づけ期、第2ベースライン期、第2条件づけ期、フォーローアップ期からなっている。条件づけは、多動行動減少のために椅子に着席し4つの課題が与えられ、その課題への集中による静止時間の増大をはかる、という方法がとられた。着席による静止時間は、10秒から18分まで段階的目標をおき、その目標とする静止時間が2回連続して成功した時次の目標とする静止時間に移行された。強化因子は、目標とする静止時間が1回成功するごとに与えられ18分静止まで続けられた。第1ベースライン期間も含め第1条件づけ期間で18分の着席行動がとれるまでに54セッション、試行回数309回を要し、第2ベースライン期間を含め第2条件づけ期間では36セッション、試行回数85回を要した。そしてフォローアップ期間30セッション(約6週間)を含め120セッション、約7ヵ月を要した。条件づけの経過、PEDO METER測定、行動観察の結果から、およそ次のことが明らかとなった。1.本事例の場合には、多動行動に対しては遊戯療法よりオペラント条件づけ法が有効であった。2.対象児の示す多動行動は、多動という運動の量的側面のみならず行動異常の質的側面も含んでいる。しかし、質的側面は多動行動に関連したものが多く、多動行動の減少とともに大部分減少した。3.多動行動へのオペラント条件づけ法の適用は、運動量と行動異常の減少という症状の改善のみならず、治療者との関係、言語、コミュニケーション、遊具への関心、描画、環境認知、記憶の再生など全人格にかかわる好転的な変容の糸口をもたらした。4.本事例の場合、課題遂行を媒介として着席行動を段階的に条件づけていくことが有効であった、と考えられる。5.多動行動の治療は、対象児の行動変容の観察、測定と同時に、同一条件下での対象群児童との比較において進めることも、その治療をより厳密にするために必要ことと考えられる。
著者
小林 邦雄
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.47-61, 2008-03

大学生の基本的学習観について,アイデンティティ,孤独感,及び映画鑑賞のあり方との関係において,検討することが,本研究の主要な目的である.1年生,上級学年の学生の2群からなる162名の大学生に,思春期・青年期をテーマとした映画を鑑賞させた.映画は2種類あり,各群は1種のみ鑑賞した.直後に映画鑑賞のあり方を評定する課題,基本的学習観,アイデンティティ,及び孤独感を査定する質問紙を実施した.回答に対する因子分析,及び項目分析の結果に基づき尺度構成を行い,尺度間の関係の分析には主として相関分析を用いた.基本的学習観の測定尺度は「失敗に対する柔軟性」,「過程重視志向」,「方略志向」,及び「意味理解志向」の4尺度で構成した.「アイデンティティの確立」の進んだ被検者において,「失敗に対する柔軟性」が高く,「意味理解志向」も強い傾向が見出されたが,「アイデンティティの基礎」は学習観に関わりがないことが示された.3尺度からなる「孤独感」尺度の中で人間どうしの「理解・共感の可能性」への期待・信頼を査定する尺度の得点が高い被検者において,「失敗に対する柔軟性」が高く,「方略志向」と「意味理解志向」も強いことが示されたが,「孤立感」については,1年生では「孤立感」の強い者が「方略志向」も強いが,上級学年では,「孤立感」の強い者は「方略志向」が弱いという学年によって全く反対の結果が示された.また,「自己の個別性の自覚」が強い被検者は「失敗に対する柔軟性」,「過程重視志向」が強く,「意味理解志向」も弱くはない傾向が見出された.1年生では「自己の個別性の自覚」が強い者は「方略志向」も強かった.上級学年群では,映画の「卓越性」に高い評定を与えた被検者ほど「方略志向」,「失敗に対する柔軟性」が強く,「過程重視志向」も弱くないこと,また「強靭」に高い評価を与えた被検者ほど「方略志向」が弱くはない可能性が示唆されたが,1年生では基本的学習観と映画鑑賞のあり方との間に有意な相関は見出されなかった.以上の結果は,アイデンティティ,孤独感において発達の進んだ被検者は,基本的学習観もポジティヴであり,映画鑑賞力も高いであろうという仮説を概ね支持するものであった.
著者
木山 竜一 林 邦雄 原 真里子 藤本 正文 川畑 友二 川上 勝 中島 成元 藤下 利夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.960-965, 1995-06-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
3 8

A novel series of 6-alkyl-7-oxo-4, 7-dihydropyrazolo[1, 5-a]pyrimidine-3-carboxylic acid derivatives was prepared as angiotensin II (AII) receptor antagonists. When evaluated in an in vitro binding assay using COS cells transfected with a cDNA encoding a human AT1 angiotensin II receptor, the compounds in this series showed Ki values in the range of 0.4-4.0 nM. In anesthetized spontaneously hypertensive rats (SHRs), administration of the 6-propyl derivative 4d (1 mg/kg, i.v.) reduced the mean blood pressure (MBP) by a maximum of more than 30 mmHg from the normal value.
著者
石原 義恕 藤田 朝雄 小林 邦雄 大土井 淑郎 斎藤 幾久次郎
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3-4, pp.119-130, 1983 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10

In order to compare the result of local cryo-therapy on rheumatoid arthritis against the conventional local heat application a comparative clinical study was performed.Twenty rheumatoid patients with bilateral knee joint involvement were selected cryo-therapy was given for five minutes with cryogenic air generator (Nihonsanso-L-10) at-100°C on below in eleven patients, whereas local heat was applied with hot packs for 15 minutes at 70-80°C in nine patients.All the patient underwent a daily active exercise schedule after the local treatment, these treatment were given for three months continuously and the result were evaluated. For the evaluation, twelve items were selected including, range of motion, muscle strength, walking capacity, roentgengram and etc.The patients were evaluated before the treatment, 1.5 months after the treatment and at the end of the treatment.The result: both groups showed some improvement in general, but there was no significant difference between them, muscle stiffness and joint pain seemed to be slightly between after the cryo-therapy compared to the local heat application, however post-treatment x-ray showed some progression of joint destruction in the former. The result suggest that local cryo-therapy has a certain place in rheumatoid treatment although not significantly better than the conventional local heat application, if it is applied under due care.
著者
小林 邦雄
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-78, 2006-03-31

79名の大学1年生に,「同一性混乱尺度」と「孤独感類型判別尺度」の2種類の質問紙を施行した。孤独感類型判別尺度により全被検者は4つのタイプに類型化された。孤独感類型判別尺度は「自己の個別性の自覚」と「理解・共感の可能性」への信頼・期待を測定する2つの下位尺度で構成される。最も「自己の個別性の自覚」の低いA型と最も「自己の個別性の自覚」の高いD型において,被検者の度数が統計的に等しかった。この結果は,大学生においては殆んど例外なくD型がA型の度数を上回るという先行研究と合致しなかった。一方,「自己の個別性の自覚」尺度全7項目のうち6項目でD型がA型より有意に得点平均が高かった。「理解・共感の可能性」尺度全9項目のうち6項目で,A型はD型より得点平均が高く,前者の依存性の強さを示唆するとも考えられた。またD型はA型より同一性混乱(悩み)の程度が高く,前者では自己に関わる多様な「悩み」がA型より強く意識されていることが示唆された。以上の結果は,中学生を対象とした先行研究において示された,発達的に最も進んでいると考えられ争D型が最も未熟と考えられるA型よりストレス(悩み)が多いという結果と符節を合わせ,発達と悩みの不可分の関係を示唆するものと考えられた。