著者
伊関 憲 朝長 鮎美 林田 昌子 清野 慶子 篠崎 克洋 羽田 俊裕 山崎 健太郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.775-780, 2012-11-15 (Released:2013-01-17)
参考文献数
13

症例は45歳の男性。頭にごみ袋を被りヘアゴムで頸部を留めて,浴室の洗い場で全裸の状態で座っているところを発見された。意識はなく心肺停止状態であり,心肺蘇生を行うも死亡確認となった。蘇生中,気管チューブよりピンクから赤色の泡沫痰が多量に吸引された。死後の胸部CTでは,両側肺野に著明な肺水腫,肺胞出血の所見があり,気管から両側主気管支内に液体貯留を認めた。現場検証で浴室内からエアダスターが発見された。司法解剖では,左右の肺に高度肺水腫と肺胞出血が認められた。左右ともに濃紫赤色,血液量が多く,水腫高度であった。両側眼瞼結膜に溢血点あり,口唇結膜,上下肢にチアノーゼを認めた。さらに心臓血より1.1-ジフルオロエタン(HFC-152a,以下DFE)が検出された。DFEはフロンガスの一種であり,冷媒や噴射剤などに用いられる。吸入により多幸感や気分の高揚感が得られるため乱用される場合がある。しかし,高濃度のDFEを吸入すると中枢神経系の抑制や催不整脈作用がある。死亡例も散見され,剖検例では両肺で著明な肺水腫と肺胞出血がみられた。今回の症例では,頭からビニール袋を被りDFEの吸引をしていたところ意識を消失し,低酸素,窒息状態となり死亡したものと思われる。本症例のような吸入法での死亡例が国内で散見され,インターネットでのフロンガス吸入に関する情報の規制などが必要である。
著者
猪狩 龍佑 伊関 憲 阿部 さち 東海林 正邦 佐藤 恵 下村 慶子 林田 昌子 杉浦 明日美 岩下 義明 緑川 新一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.273-277, 2010-03-01

はじめに マムシ咬傷では,重症化した場合に眼瞼下垂や眼球運動障害などの眼症状をきたす1,2)。今回われわれは,受傷後早期から眼瞼下垂および眼球運動障害を合併したマムシ咬傷の1例を経験したので報告する。
著者
林田 昌子 清野 慶子 伊関 憲
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-62, 2011-08-15

キノコ中毒の多くは秋におこり、また集団発生することが特徴である。今回我々は山 で誤って採取したツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)により、家族4人が中毒に 陥った症例を経験したので報告する。【症例】(1)79才、男性 (2)76才、女性 (3)48才、女性 (4)15才、男性【現病歴】2009年9月某日、20時頃、母親が山で採ってきたキノコを味噌汁にして家族で 食べた。1時間30分後より嘔気、嘔吐が出現した。A病院受診し、4時間後に当院救急 部に紹介となった。持参したキノコの柄の根元に黒いシミがあることからツキヨタケと 判明した。【来院後経過】4名とも来院時バイタルサインは安定しており、検査上異常所見は認めら れなかった。嘔気・嘔吐が強かったためメトクロプラミド10mg静注、脱水に対して輸液 を施行した。その後経過観察のため入院となった。翌日には嘔気、嘔吐の症状が消失し、経 口摂取可能となった。その後、全身状態安定しており、退院となった。【考察】ツキヨタケの主毒成分はイルジンSである。これまでの報告では、ツキヨタケの 個体によって、イルジンSの重量当たり含有量は異なるとされている。このため、ツキ ヨタケ摂取量と症状は必ずしも相関しないこととなる。 ツキヨタケ中毒の症状としては摂取後30分~1時間より激しい嘔吐、下痢、腹痛がおこ る。重症例では著明な腸管の浮腫や肝機能障害がおこる。 中毒治療としては、毒物を除去するために、催吐、胃洗浄が行われることがある。また、 対症療法として、初期に十分な補液を行う必要がある。4症例とも来院時より細胞外液 の投与を行った。摂取量は異なっているが、発症時期や収束した時期はほぼ同じであっ た。ツキヨタケ中毒の治療は輸液管理が中心となるが、今回の症例も輸液を中心とした 対症療法で治療することができた。
著者
林田 昌子 清野 慶子 伊関 憲
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-62, 2011-08-15

キノコ中毒の多くは秋におこり、また集団発生することが特徴である。今回我々は山 で誤って採取したツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)により、家族4人が中毒に 陥った症例を経験したので報告する。【症例】(1)79才、男性 (2)76才、女性 (3)48才、女性 (4)15才、男性【現病歴】2009年9月某日、20時頃、母親が山で採ってきたキノコを味噌汁にして家族で 食べた。1時間30分後より嘔気、嘔吐が出現した。A病院受診し、4時間後に当院救急 部に紹介となった。持参したキノコの柄の根元に黒いシミがあることからツキヨタケと 判明した。【来院後経過】4名とも来院時バイタルサインは安定しており、検査上異常所見は認めら れなかった。嘔気・嘔吐が強かったためメトクロプラミド10mg静注、脱水に対して輸液 を施行した。その後経過観察のため入院となった。翌日には嘔気、嘔吐の症状が消失し、経 口摂取可能となった。その後、全身状態安定しており、退院となった。【考察】ツキヨタケの主毒成分はイルジンSである。これまでの報告では、ツキヨタケの 個体によって、イルジンSの重量当たり含有量は異なるとされている。このため、ツキ ヨタケ摂取量と症状は必ずしも相関しないこととなる。 ツキヨタケ中毒の症状としては摂取後30分〜1時間より激しい嘔吐、下痢、腹痛がおこ る。重症例では著明な腸管の浮腫や肝機能障害がおこる。 中毒治療としては、毒物を除去するために、催吐、胃洗浄が行われることがある。また、 対症療法として、初期に十分な補液を行う必要がある。4症例とも来院時より細胞外液 の投与を行った。摂取量は異なっているが、発症時期や収束した時期はほぼ同じであっ た。ツキヨタケ中毒の治療は輸液管理が中心となるが、今回の症例も輸液を中心とした 対症療法で治療することができた。