著者
枚田 邦宏
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.129, pp.159-164, 1996
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,森林所有者にかわって森林を管理する地域組織として森林組合を想定し,現状の取り組み状況,問題点を明らかにすることを目的とする。森林管理に関する森林組合の事業には,森林経営信託事業と森林経営受託事業がある。全国で森林経営信託事業に取り組んでいるのは2組合,森林経営受託事業に取り組んでいるのは19組合のみで一般化していない。森林経営信託事業の対象となっている所は,不在村森林所有地であり,森林組合が不在村森林所有者を把握することができていること,契約を締結し公社造林を導入することによって森林組合が森林造成事業を拡大できることが,森林経営信託事業を進める要因となっている。また,森林経営受託事業は,当初,農林金融公庫からの憤り入れのために導入されたものであり,現在継続しているものは,森林経営受託事業だけでなく,施業受託を同時に契約しているものである。今後,森林経営信託事業を進めるためには,事業実行面の公的資金の援助が欠かせない。森林経営受託事業の場合には,土地境界の管理レベルの受託は森林組合の経営面からも困難なのが現状であり,低価格で管理できるしくみを作るか,地域単位に育林,間伐事業などを結びつけ事業化していくことが必要である。
著者
枚田 邦宏
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.27-35, 2013 (Released:2017-08-28)
参考文献数
11

本論文では,第1に,林業の担い手の変化と現在,林業生産におけるフォレスター等の人材育成の必要性とその意味について,第2に,森林・林業再生プランにおける林業の現状認識と人材育成の議論の内容の検討を行い具体化の問題点について,第三に,日本型フォレスター育成の内容と具体化への問題点について検討した。その結果,明らかになったのは以下の問題点である。森林経営の担い手が決められなく,また,担い手と考えられていた森林組合には問題がある。森林・林業再生プランにおいて分散的な森林所有の問題に応えることなく,技術者の育成を解決策としている。地域の全体像を描けるフォレスターを育成する准フォレスター研修がはじまったが,研修には多くの問題点があることが明らかになった。
著者
中西 良孝 原口 裕幸 岩崎 絵理佳 萬田 正治 枚田 邦宏 飛岡 久弥 杉本 安寛 若本 裕貴 堀 博
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
西日本畜産学会報 (ISSN:09143459)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.43-49, 2001

宮崎県諸塚村のクヌギ (<I>Quercus acutissima Carruth</I>) 林内放牧地 (標高約1, 000m) において, 1997年と1998年の放牧期間中 (5~11月) のマダニ類あるいは外部から飛来する昆虫を採集し, それらの種類構成と季節的消長を調べるとともに, 黒毛和種繁殖牛の血液所見から牛の健康状態との関連を明らかにした.1997年に草地 (フランネル法) で得られたダニはすべてフタトゲチマダニ (<I>Haemaphysalis longicornis</I>) 幼虫であり, 10月に放牧地外で多かった.牛体においてはフタトゲチマダニとヤマトマダニ (<I>lxodes ovatus</I>) の成虫がわずかに見られた.1998年の林床植生内ダニはフタトゲチマダニ幼虫がほとんどであり, 7~10月にクヌギ林地で多く見られた.牛体には主としてヤマトマダニ成虫が寄生しており, 5月で有意に多かった (P<0.05) .また, マダニ類は1997年よりも1998年で多くなる傾向を示した.ハエ類はノサシバエ (<I>Haematobia irritans</I>) とサシバエ (<I>Stomaoxys calcitrans</I>) が得られ, 前者が優占種であり, 8月に発生のピークを示した.アブ類はアカウシアブ (<I>Tabanus chrysurus</I>) とアオコアブ (<I>T. humilis</I>) が優占種であり, 放牧期間を通して比較的少なかったものの, 7月にピークを示し, 気温 (20℃以上) との関連が示唆された.ブユ類はすべてウマブユ (<I>Simulium takahasii</I>) であり, 5月で有意に多かった (P<0.05) .ハエ・アブ・ブユ類はいずれも刺咬性であり, ハエ・ブユ類の発生はアブ類と比べて長期にわたっていた.林内放牧牛の血中総蛋白質濃度, 白血球数, 赤血球数およびヘマトクリット値はいずれもほぼ正常範囲内であり, 小型ピロプラズマ原虫の寄生も認められなかった.<BR>以上から, 放牧年数の経過に伴ってマダニ類は増加し, 外部から飛来する刺咬性昆虫も認められたものの, 血液所見および外見上は異常が見られず, 本研究の林内放牧地は家畜生産環境として問題のないことが示された.
著者
馬場 裕典 吉良 今朝芳 枚田 邦宏
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.57-66, 1996-03-31
被引用文献数
3

1994年の屋久島の登山届(2,391部)を用いて, 登山者の構成, 登山の目的, 登山道入口の利用状況および登山の安全性について集計した.その結果, 以下のことが明らかになった.1.延べ登山者数は7,263人であった.登山者の構成は, 性別では男性が全体の70.2%, 年齢別では20歳代が全体の43.5%と大きなかたよりがある.2.登山の目的は縄文杉(64.3%), 宮之浦岳の(62.8%)の2カ所が主な目的地である.また登山道入口に関しては淀川登山口が39.4%, 白谷登山口が30.0%, 荒川登山口が24.8%であり, この3登山口で全体の94.2%であった.特に荒川登山口を利用した登山者のうち縄文杉のみを目的地とした登山者は80.7%であり, 同登山口は縄文杉のみの登山者が利用する傾向がある.3.登山の安全性についてみてみると, 装備品においてはシュラフ(寝袋)を装備していない登山パーティーが宿泊登山パーティー全体の10.3%であった.またテントを装備していない登山パーティーは39.6%であった.全登山パーティーのうち30.1%が下山連絡を行っているにすぎなかった.