著者
神山 進 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.104-113, 1992

容姿メッセージ評定尺度を用いて, 基本的な服装色が伝える情報内容を測定することが本研究の目的であった.得られた結果は, 次のようなものであった.すなわち, (1) 赤, 榿, 黄, 黄緑, 緑, 青緑, 青, 紫青, 紫, 赤紫, 黒, 白の12の服装色別に, 異なったメッセージが伝達される事態を確認でき, またそれらを測定することができた. (2) 赤, 榿, 黄, 紫青, 黒, 白の各色彩メッセージは, その他の色彩メッセージよりもいっそう明瞭であった.また暖色は寒色よりも, メッセージが一層明瞭であった. (3) 因子分析法により, 各色彩別に4つないしは5つの色彩メッセージ因子が抽出された.例えば赤色の場合には, 「性的魅力」, 「気品」, 「派手さ」, 「世間ずれ」, 「活発さ」と命名された5因子が, 黒色の場合には, 「性的魅力」, 「格式性」, 「気分」, 「反社会性」, 「仕事」と命名された5因子が抽出された. (4) 具体的な衣服のかたちで色彩が提示された本研究の場合を, それが単なる方形や円形で提示された従来の研究と比較した場合, 両色彩メッセージの間には一定の相違が認められた. (5) 服装色メッセージには, 多くの色に共通して, 「性的魅力」, 「気品」, 「お酒落」に関した情報が顕著であった.特に赤色, 黒色, 紫色の服装のいずれもが, 「性的魅力」を伝達すると考えられていた. (6) 服装色の白と黒は, 「女らしさ・顔立ちのよさ・知的さ」を伝達すると考えられていた. (7) 服装色の黄と紫は, 「派手さ・目立ちたがり屋・刺激の追求・挑発」といった意味を伝達した. (8) 服装色の青は, 「堅い仕事への従事・礼儀の尊重」を伝達した. (9) 服装色の緑, 紫, 黒は, 「反社会性」, すなわち社会的に不適応な人柄を伝達した.
著者
神山 進 牛田 聡子 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.378-389, 1987-09-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
13

本研究は, 服装に関する暗黙裡のパーソナリティ理論を究明するために, どの服装特徴とどのパーソナリティ特性の間に一般に関連性が仮定されているかを, 評定という方法を用いて, 間接的に明らかにすることを目的にした.得られた結果は, 次のごとくであった.1.服装とパーソナリティの間には, かなり明白な関連性が仮定されていた.2.パーソナリティ特性から想起された服装特徴の構造は, 前報と同様, 次の4つの因子から構成された.すなわち, 「奇抜さ」, 「流行感覚」, 「色のこのみ」, 「性イメージ」の各因子である.3.服装特徴から想起されたパーソナリティ特性の構造は, 次の3つの因子から構成された.すなわち, 「思慮性」, 「積極性」, 「親和性」の各因子である.4.これらの因子には, 特に次の間に, 顕著な関連性が推察された.すなわち, 奇抜さ一積極性, 奇抜さ一思慮のなさ, 奇抜さ一とりつきにくさ, 流行感覚一積極性, 色のこのみ一積極性, である.5.数量化の方法第皿類を適用することによって, 服装特徴とパーソナリティ特性の間に仮定された, 全体的な関連性の内容を知ることができた.
著者
神山 進 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.539-548, 1990

本研究では, 容姿をメディアにした情報伝達内容の測定が問題にされた.特に, (1) 服装メッセージ評定尺度を開発すること, (2) それを使って, 服装に関する「肌の露出度」のメッセージを測定すること, (3) そのような「肌の露出度」の解釈に対する社会的態度の影響を検討すること, が本研究の目的であった.<BR>得られた結果は, 次のように要約できる.<BR>1) 75項目より構成される, 服装メッセージ評定尺度を開発することができた.<BR>2) 袖の有無・ドレス丈の長短などから表示される「肌の露出度」が, それの大小に関して異なった情報を伝える事実が確認され, またそれらを測定することができた.<BR>3) 肌の露出度が顕著に伝える情報内容は, 「新しいものが好きである」, 「流行に敏感である」, 「冒険心がある」, 「刺激を求あている」, 「ロック音楽を好む」, 「遊びにいくところである」, 「目立ちたがり屋である」, 「派手な人である」, 「挑発的である」, などであった.<BR>4) 肌の露出度が伝える情報に関して, 4つの成分が明らかになった.すなわち, 「お酒落/流行感覚」, 「品位/社会良識」, 「仕事への従事/地位の高さ」, 「活発さ/元気さ」, である.<BR>5) 保守主義的態度の持主は, 服装上の肌の露出度に基づいて, 着装者の「仕事への従事/地位の高さ」を解釈する度合が一層顕著であった.<BR>6) 「品位/社会良識」と「活発さ/元気さ」には, 刺激図版による解釈のされ方の相違が顕著に表わされた.すなわち, 特にミニ・スカート・スタイルのSPは, 一層お酒落で流行感覚に富み, また活発で元気だと解釈されたのに対して, 前V開き大の服装スタイルのSPは, 一層品位がなく, 社会良識に乏しいと解釈された.<BR>7) 「仕事への従事/地位の高さ」についても, 図版によって解釈のされ方に相違が認められ, 特にパンツ・スタイルのSPは, 一層仕事に従事していて, 地位も高いと解釈された.<BR>8) 刺激図版におけるSPのポーズの違いによって, 異なった情報が伝達される事態を確認することが出来た.
著者
神山 進 牛田 聡子 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-35, 1987-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

この研究の目的は, 身体像ならびに自己像と被服の間の関連性を検討することにあった.その方法として, 306名の女子大学生を対象に, 身体の価値感情, 自己の価値感情, 被服の満足感, 被服の近接感などを内容とする調査を行った.因子分析法等を用いることで, 身体/自己の価値感情の内容, 身体像/自己像の不安定性の内容, またそれらの間の関連性を知ることができた.また, 身体ならびに自己の価値感情と被服に対する満足度の間に, それぞれ正の関係が読みとれた.さらに, 被服に対する自我関与の高いグループと低いグループとでは, 自己像の不安定度に相違があり, 被服には, 自己像の不安定性を何がしかの割合で補填する働きがあることが示された.