著者
神山 進
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.35-41, 1983-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

本研究は, 2つの目的を持っている.1つは, 被服関心の基本的次元を検証することによって, 被服関心として言及される被服行動の領域を明確化すること (ギュレルの研究に関する追試) であり, もう1つは, 我が国において使用可能な, 簡略版「被服関心度質問表」を試作することである.得られた結果は, 次のとおりである.(1) 被服関心に関して, I個性を高める, II心理的安定感を高める, III似合いの良さを探究する, IV同調を計る, V快適さを求める, VI理論づけを計る, W慎みを求める, VIII対人的外観を整える, の8つの被服関心次元を検証することができた.(2) 48個の質問項目から, 上記8次元別に被服関心度を測定しうる, 簡略版「被服関心度質問表」を試作することができた.
著者
神山 進 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.104-113, 1992

容姿メッセージ評定尺度を用いて, 基本的な服装色が伝える情報内容を測定することが本研究の目的であった.得られた結果は, 次のようなものであった.すなわち, (1) 赤, 榿, 黄, 黄緑, 緑, 青緑, 青, 紫青, 紫, 赤紫, 黒, 白の12の服装色別に, 異なったメッセージが伝達される事態を確認でき, またそれらを測定することができた. (2) 赤, 榿, 黄, 紫青, 黒, 白の各色彩メッセージは, その他の色彩メッセージよりもいっそう明瞭であった.また暖色は寒色よりも, メッセージが一層明瞭であった. (3) 因子分析法により, 各色彩別に4つないしは5つの色彩メッセージ因子が抽出された.例えば赤色の場合には, 「性的魅力」, 「気品」, 「派手さ」, 「世間ずれ」, 「活発さ」と命名された5因子が, 黒色の場合には, 「性的魅力」, 「格式性」, 「気分」, 「反社会性」, 「仕事」と命名された5因子が抽出された. (4) 具体的な衣服のかたちで色彩が提示された本研究の場合を, それが単なる方形や円形で提示された従来の研究と比較した場合, 両色彩メッセージの間には一定の相違が認められた. (5) 服装色メッセージには, 多くの色に共通して, 「性的魅力」, 「気品」, 「お酒落」に関した情報が顕著であった.特に赤色, 黒色, 紫色の服装のいずれもが, 「性的魅力」を伝達すると考えられていた. (6) 服装色の白と黒は, 「女らしさ・顔立ちのよさ・知的さ」を伝達すると考えられていた. (7) 服装色の黄と紫は, 「派手さ・目立ちたがり屋・刺激の追求・挑発」といった意味を伝達した. (8) 服装色の青は, 「堅い仕事への従事・礼儀の尊重」を伝達した. (9) 服装色の緑, 紫, 黒は, 「反社会性」, すなわち社会的に不適応な人柄を伝達した.
著者
神山 進 高木 修
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.488-496, 1990-10-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
7

人々の主観に基づく危険性の評価のことをリスク知覚と呼び, また主観に基づく利益・恩恵の評価のことをベネフィット知覚と呼ぶ.本研究では, 特に流行に敏感な商品の購入時に知覚されるベネフィットやリスク (すなわち‘知覚されたファッション・ベネフィット’や‘知覚されたファッション・リスク’) について, それらの内容や両者の関連性などが, 衣服の購入事態を通して検討された.得られた結果は, 次のごとくであった.1) 購入衣服に対して消費者が期待する利益・恩恵の中で, 特に顕著なものは, 値段が手頃・似合っている・他の服と組合せやすい・着こなしやすい, などであった.2) ‘知覚されたファッション・ベネフィット’は, 「品質・性能期待」, 「流行性・他者承認期待」, 「似合い・着こなし期待」, 「自己の顕示・解放期待」から構成された.3) ‘知覚されたファッション・リスク’は, 「品質・性能懸念」, 「服装規範からの逸脱懸念」, 「流行性懸念」, 「自己顕示懸念」, 「似合い・着こなし懸念」から構成された.4) ‘知覚されたファッション・ベネフィット’と‘知覚されたファッション・リスク’との間には, 正の関連性が認められた.しかしベネフィットとリスクのそれぞれの成分の間には, 相互に効果を打ち消し合うように作用するものもあった.特に, 「服装規範からの逸脱懸念」と「自己の顕示・解放期待」との間の負の関係は顕著であった.5) ‘知覚されたファッション・ベネフィット’と‘知覚されたファッション・リスク’との間の心理的取引の様式に基づいて, 被調査者が4群に分割された.すなわち「自己顕示型」, 「精力消費型」, 「機能尊重型」, 「規範固執型」, である.6) 以上4つの被調査者群のそれぞれを, 性別と社会心理学的特性によって特徴づけることが出来た.
著者
神山 進 牛田 聡子 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.378-389, 1987-09-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
13

本研究は, 服装に関する暗黙裡のパーソナリティ理論を究明するために, どの服装特徴とどのパーソナリティ特性の間に一般に関連性が仮定されているかを, 評定という方法を用いて, 間接的に明らかにすることを目的にした.得られた結果は, 次のごとくであった.1.服装とパーソナリティの間には, かなり明白な関連性が仮定されていた.2.パーソナリティ特性から想起された服装特徴の構造は, 前報と同様, 次の4つの因子から構成された.すなわち, 「奇抜さ」, 「流行感覚」, 「色のこのみ」, 「性イメージ」の各因子である.3.服装特徴から想起されたパーソナリティ特性の構造は, 次の3つの因子から構成された.すなわち, 「思慮性」, 「積極性」, 「親和性」の各因子である.4.これらの因子には, 特に次の間に, 顕著な関連性が推察された.すなわち, 奇抜さ一積極性, 奇抜さ一思慮のなさ, 奇抜さ一とりつきにくさ, 流行感覚一積極性, 色のこのみ一積極性, である.5.数量化の方法第皿類を適用することによって, 服装特徴とパーソナリティ特性の間に仮定された, 全体的な関連性の内容を知ることができた.
著者
神山 進 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.539-548, 1990

本研究では, 容姿をメディアにした情報伝達内容の測定が問題にされた.特に, (1) 服装メッセージ評定尺度を開発すること, (2) それを使って, 服装に関する「肌の露出度」のメッセージを測定すること, (3) そのような「肌の露出度」の解釈に対する社会的態度の影響を検討すること, が本研究の目的であった.<BR>得られた結果は, 次のように要約できる.<BR>1) 75項目より構成される, 服装メッセージ評定尺度を開発することができた.<BR>2) 袖の有無・ドレス丈の長短などから表示される「肌の露出度」が, それの大小に関して異なった情報を伝える事実が確認され, またそれらを測定することができた.<BR>3) 肌の露出度が顕著に伝える情報内容は, 「新しいものが好きである」, 「流行に敏感である」, 「冒険心がある」, 「刺激を求あている」, 「ロック音楽を好む」, 「遊びにいくところである」, 「目立ちたがり屋である」, 「派手な人である」, 「挑発的である」, などであった.<BR>4) 肌の露出度が伝える情報に関して, 4つの成分が明らかになった.すなわち, 「お酒落/流行感覚」, 「品位/社会良識」, 「仕事への従事/地位の高さ」, 「活発さ/元気さ」, である.<BR>5) 保守主義的態度の持主は, 服装上の肌の露出度に基づいて, 着装者の「仕事への従事/地位の高さ」を解釈する度合が一層顕著であった.<BR>6) 「品位/社会良識」と「活発さ/元気さ」には, 刺激図版による解釈のされ方の相違が顕著に表わされた.すなわち, 特にミニ・スカート・スタイルのSPは, 一層お酒落で流行感覚に富み, また活発で元気だと解釈されたのに対して, 前V開き大の服装スタイルのSPは, 一層品位がなく, 社会良識に乏しいと解釈された.<BR>7) 「仕事への従事/地位の高さ」についても, 図版によって解釈のされ方に相違が認められ, 特にパンツ・スタイルのSPは, 一層仕事に従事していて, 地位も高いと解釈された.<BR>8) 刺激図版におけるSPのポーズの違いによって, 異なった情報が伝達される事態を確認することが出来た.
著者
神山 進 牛田 聡子 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-35, 1987-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

この研究の目的は, 身体像ならびに自己像と被服の間の関連性を検討することにあった.その方法として, 306名の女子大学生を対象に, 身体の価値感情, 自己の価値感情, 被服の満足感, 被服の近接感などを内容とする調査を行った.因子分析法等を用いることで, 身体/自己の価値感情の内容, 身体像/自己像の不安定性の内容, またそれらの間の関連性を知ることができた.また, 身体ならびに自己の価値感情と被服に対する満足度の間に, それぞれ正の関係が読みとれた.さらに, 被服に対する自我関与の高いグループと低いグループとでは, 自己像の不安定度に相違があり, 被服には, 自己像の不安定性を何がしかの割合で補填する働きがあることが示された.
著者
神山 進
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.777-792, 2008-11-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
8

人は絶えず自分に足りない部分を補おうとして, あるいは自分をいっそうランクアップさせようとして, つまり自分をさまざまに変身させるために, 多様な「物」や「こと」にお金を使って生活をしている.このような「変身行動と消費」の実態を, 自己受容の観点から大学生のような若者に関して明らかにすることが, 本調査の問題であった.主要な調査仮説は, 次の3つであった. (1) 自己受容と消費行動には一定の関係が存在するであろう. (2) 自己受容度が高いことによって促される消費行動の側面があるであろう. (3) 逆に, 自己受容度が低いことによって促される消費行動の側面もあるであろう.これらの仮説を検証するために, 質問紙調査を実施した.本調査を通して, 大学生のような若者に関して, 自己のさまざまな受容の水準や程度が日常の消費行動に影響している実態が明らかになった.また調査データの解析より, 3つの調査仮説のいずれもがおおむね支持された.さらに, 変身消費行動と現実自己, 理想自己の間にも明確な関連性が見出され, 特にさまざまな消費財が現実自己を理想自己に近づけるために用いられている実態が明示された.
著者
鈴木 理紗 神山 進
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.652-665, 2003-11-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
18

本研究の目的は, 「被服によって呈示したい自己」および「自己呈示に係わる被服行動」の内容を大学生のような若者に関して明らかにすること, そして, 性別や心理的変数が「被服によって呈示したい自己」の内容, 「自己呈示に係わる被服行動」の内容に及ぼす影響を探索することであった.得られた結果は, 以下のようであった.1) 15項目の「被服によって呈示したい自己」の内容, および56項目の「自己呈示に係わる被服行動」の内容が明らかになった.2) 因子分析の結果, 「被服によって呈示したい自己」に3つの成分, 「自己呈示に係わる被服行動」には6つの成分が明らかになった.3) 性別, セルフ・モニタリング高低別, 他者意識高低別によって, これらの呈示したい自己や被服行動に相違のあることが確認できた.