著者
岩崎 由希子 藤尾 圭志 岡村 僚久 柳井 敦 山本 一彦
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.40-46, 2013 (Released:2013-02-28)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

IL-10は炎症・自己免疫応答を抑制するサイトカインとして知られており,近年報告が相次いでいる誘導性制御性T細胞(Treg)の抑制能の一端を担うサイトカインとしても重要である.Type1 regulatory T (Tr1)細胞は,IL-10産生を特徴とするIL-10産生制御性T細胞の中でも代表的なものである.Tr1を特徴づける細胞表面マーカーや分化誘導機構については未解明の部分も多いが,近年IL-27がT細胞にIL-10産生を誘導し,Tr1を誘導し得るサイトカインとして注目されてきている.また,既に我々が報告しているCD4+CD25−lymphocyte activation gene (LAG-3)+ Treg(以下LAG3+ Treg)は末梢で誘導されるTregであり,やはりIL-10がその制御活性に重要である.LAG3+ Tregにおいて,T細胞にanergyを誘導する働きをもつ転写因子Egr-2の発現亢進が確認され,Egr-2のCD4+ T細胞への強制発現によりLAG-3発現およびIL-10産生が付与されることを我々は見出しており.Egr-2がLAG3+ Tregの抑制能付与において重要な働きをする可能性が示唆されている.本稿では,Tr1およびIL-27誘導性IL-10産生に関する知見について概説し,LAG3+ Tregについて紹介すると共に,自己免疫疾患の新規治療応用への可能性について考察する.