著者
倉島 一喜 鍵山 奈保 石黒 卓 春日 啓介 森本 康弘 小澤 亮太 高野 賢治 磯野 泰輔 西田 隆 河手 絵理子 細田 千晶 小林 洋一 高久 洋太郎 高柳 昇 柳沢 勉
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.483-489, 2020-07-20 (Released:2021-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
4

現在新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では50 歳以上で低酸素血症を認めた段階で他疾患に適応のある抗ウイルス薬の投与が推奨されている.しかし治療が必要となる重症化因子についての検討は少ない.今回COVID-19 により入院した患者で抗ウイルス薬による治療を必要とした群と経過観察のみで改善した群を後方視的に検討し,抗ウイルス薬が必要となる臨床所見について検討した.まず当院に入院した49 例のCOVID-19 感染患者について,A 群:無症候性病原体保有者,B 群:症状あり,ウイルス肺炎像なし,C 群:ウイルス肺炎像あり,呼吸不全なし,D 群:ウイルス肺炎像あり,呼吸不全あり,に分類した.C 群は無治療で軽快し,D 群では抗ウイルス薬治療が行われた.重症度と相関した背景因子と症状は年齢,合併症の有無,喫煙歴,発熱,下痢であったが,治療を必要としたD 群に特徴的な所見は喫煙歴のみであった.次に重症度と相関した臨床検査値はPaO2,リンパ球数,D-dimer,AST,CK,LDH,CRP,PCT,ferritin であったが,多変量解析で治療必要群と有意に相関した検査値はリンパ球数,CRP,ferritin となった.両群を区別するカットオフ値をROC 曲線より求めると,リンパ球数1,200/μL 以下,CRP 2.38mg/dL 以上,ferritin 394ng/mL 以上となった.画像所見では,抗ウイルス薬治療を要しなかったC 群と要したD 群とを最もよく区別する所見は浸潤影の有無だった.以上よりこれらの重症化因子は呼吸不全への進展を考慮すべき臨床指標になると思われた.また喫煙歴,リンパ球数1,200/μL 以下,CRP 2.5mg/dL 以上,ferritin 400ng/mL 以上,CT 上の浸潤影の5 つをリスク因子として選ぶと発症からPCR 陰性化までの日数と強い相関を示した(p<0.0001).