著者
塩澤 光一 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.117-121, 2002-03-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3

咀嚼時の唾液分泌量の増加が嚥下誘発にどのような影響を与えるかを調べるために, 嚥下までの咀嚼回数と唾液分泌量について11名の成人被験者で調べた. 0.2M酒石酸 (酸刺激) およびコントロールとして蒸留水 (DW刺激) に浸けた濾紙片をそれぞれ被験者の舌背に1分間載せた後, グミ及びモチをそれぞれ嚥下まで咀嚼させた. 嚥下までの咀嚼回数はグミ咀嚼, モチ咀嚼どちらの場合でも, 酸刺激後の咀嚼の方がコントロール (DW刺激後) に比べて有意 (P<0.001) に減少したが, 嚥下までに分泌された唾液分泌量は, グミ咀嚼, モチ咀嚼どちらの場合でも有意な差は認められなかった. また, 嚥下直前の顎舌骨筋活動量は, 酸刺激後とコントロールとで有意な差は認められなかった. これらの結果から, 同じ食品を同一量咀嚼する場合には嚥下までに分泌される唾液分泌量は常に一定であることが示唆された.
著者
塩澤 光一 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-42, 2005-05-31 (Released:2010-07-21)
参考文献数
17
被引用文献数
4

米飯咀嚼時の食塊物性変化を調べるために, 咀嚼の中間期 (M), 第1嚥下誘発時点 (L), および第1嚥下までに要した咀嚼回数の20%余計に咀嚼した時点 (+20%) の米飯食塊をそれぞれ口腔内から回収してその物性を解析した.8名の成人被験者に6gの米飯試料を咀嚼させた.米飯食塊物性の測定はtexture profile analysisに従って行った.食塊の硬さは, 咀嚼の中間期 (M) から嚥下直前 (L) になると有意 (p<0.05) な減少を示したことから, 食塊の硬さの減少は嚥下誘発にとっての必要条件であることが考えられる.食塊の付着性は咀嚼の進行に従い有意 (p<0.01) な減少を示した.これに対し, 凝集性は有意な変化を示さなかった.これらの結果から, 米飯食塊の付着性が嚥下閾値まで減少することで嚥下が誘発される可能性が示唆された.
著者
塩澤 光一 城所 寛子 佐藤 洋子 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.58-66, 2003-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
5

米飯咀嚼時の嚥下誘発にかかわる食塊物性を調べるために, 嚥下直前の口腔内から回収した食塊の物性をtexture profile analysisに従って計測した. 濃度の異なる米デンプン糊を混ぜた3種の米飯試料 (R+10%RP, R+20%RP, R+30%RP) を10名の成人被験者に咀嚼させた. 最も付着性の高いR+30%RP咀嚼時の嚥下までの咀嚼回数は, R+10%RPおよびR+20%RP咀嚼時の嚥下回数に比べて有意に大きな値を示した. 嚥下直前の食塊の硬さは, R+30%RP食塊がR+10%RP食塊やR+20%RP食塊に比べて有意に大きな値を示したが, 食塊の付着性と凝集性には有意な差は認められなかった. 付着性を低下させた米飯咀嚼時の嚥下直前の食塊中に存在する飯粒の大きさの平均値は, 通常の場合の嚥下直前の米飯食塊中の飯粒の大きさに比べて有意に大きな値を示した.本研究で得られたこれらの結果から, 米飯食塊の付着性の程度が米飯咀嚼時の嚥下閾値にかかわっている可能性が示されるとともに, 食塊中の飯粒の大きさは米飯咀嚼時の嚥下誘発には直接的にはかかわっていない可能性が示された.