著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
40
被引用文献数
19 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, “もちもち” “ぷりぷり” など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
神山 かおる 西成 勝好
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.715-721, 1992-08-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
17
被引用文献数
9 11

豆腐の力学的性質に影響する諸条件を検討した.プランジャーの形状,試料の形状,測定温度により,応力-歪曲線は変化した.貫入試験における見かけの破断応力はプランジャーの大きさに依存して変わったが,圧縮試験での破断応力は試料の形状に依存しなかった.豆腐が一定の剛性率を示すまでには長時間かかることが示された.以上のことから,豆腐の破壊試験を行う際の注意点は次のようである.1) 評価値は破断力ではなく,破断応力で示すべきである.また同時に破断歪も示すことが望ましい.2) プランジャーの形状,試料の形状,圧縮速度,測定温度は条件として必ず記載されなければならない.3) 凝固してから十分な時間が経過したものを実験に供する必要がある.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005-08-15
被引用文献数
9 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.<br>1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, "もちもち" "ぷりぷり" など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.<br>テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
早川 文代 長縄 省吾 干野 隆芳 風見 由香利 神山 かおる
出版者
農林省食品総合研究所
雑誌
食品総合研究所研究報告 (ISSN:03019780)
巻号頁・発行日
no.75, pp.45-54, 2011-03
被引用文献数
1

ジャムのテクスチャー用語リストを作成することを目的として,エキスパートパネル,プロフェッショナルパネル,一般分析型パネルの3パネル,合計34人に対して,質問紙調査を行った. コレスポンデンス分析の結果から妥当度を算出し,日本語テクスチャー用語445語から,124語をジャムのテクスチャー用語として選定することができた. また,ジャムのテクスチャー用語としての判定には,パネリストの専門性の高さが影響することが示された.
著者
神山 かおる 畠山 英子 小林 知子 八城 正典 東 輝明 境 知子 鈴木 建夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.822-827, 2000-11-15
被引用文献数
5 6

おやつ昆布の咀嚼機能食品としての特性を明らかにするために,引っ張り試験機による破断測定,官能評価,咀嚼筋筋電位ならびに咀嚼圧計測を行った.今回用いた4種の昆布では,破断応力は変化しないが,厚みが異なるため,破断荷重は異なった.官能評価では,破断に大きな力を要したものが噛みにくいと判断された.筋電位計測では,噛みにくいと判断された試料では,咀嚼時間や咀嚼回数,全咀嚼筋活動量が大きくなった.昆布のように咀嚼圧よりも高い破断応力をもつ試料の力学特性は,ヒトの嚥下までの咀嚼挙動に影響し,破断荷重の高い試料を,ヒトは咀嚼回数を多くし,長時間をかけて咀嚼し,噛みにくいと感じることが示唆された.一方,一回目の咀嚼に要する咀嚼圧や感圧面積等には,試料の力学特性の影響は観られなかった.
著者
小泉 敦 西村 豊 神山 かおる
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.60-68, 2008

本研究は, 広い物性範囲から選んだおやつやおつまみとして食べられる食品の咀嚼特性を, 筋電図を用いて比較することを目的として行った.食品として, 皮付さきいか, ビーフジャーキー, チーズ鱈 (R), チーズかまぼこ, ピーナッツ, せんべい, ビスケット, グミ, えびせん, ポテトスナック (じゃがりこ (R)) を用いた.9名の成人被験者にランダムに提示したこれらの試料1.5gを自由に咀嚼させ, 左右の咬筋および側頭筋の筋電位を測定した.嚥下までの筋電図記録から, 咀嚼回数, 咀嚼時間, 総筋活動時間, 総筋活動量すなわち積分筋電位を得た.また各咀嚼動作ごとに, 筋電位振幅, 筋活動時間, 咀嚼周期, 筋活動量を得た.各食品の咀嚼中に起こるテクスチャーの変化を時系列で抽出するため, 一噛みあたりの筋活動は, 咀嚼全体の平均とともに, 咀嚼初期, 中期, 後期における値も計算した.<BR>咀嚼特性は咀嚼時間と一噛みあたりの筋活動量によってよく特徴づけられた.さきいかとビーフジャーキーは, 他の食品よりも一噛みあたりの筋活動量が大きく, 咀嚼時間もきわめて長かった.この2食品は, 総筋活動量が他の2倍並かそれ以上であった.チーズかまぼこは, 咀嚼進行に伴う一噛みあたりの筋活動量の低下が小さかったものの, いずれの咀嚼段階でも最小の筋活動量を示した.皮付さきいかは, 咀嚼中の一噛みあたりの筋活動量変化が10食品中で最も大きかった.皮付さきいかとビーフジャーキーは, 単位重量あたりばかりではなく, エネルギー量あたりの総咀嚼筋活動量も際だって高かった.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 米田 千恵 風見 由香利 西成 勝好 馬場 康維 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.327-336, 2006-06-15 (Released:2007-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
9 12

日本語テクスチャー用語445語について,消費者を対象とした質問紙による調査を行い,以下の知見を得た.1)認知度が0.75以上の用語を消費者の語彙とし,135語を得た.そのうち,認知度0.90以上のテクスチャー語彙の中核となる用語は66語あった.2)“crisp”,“crunchy”,“juicy”,“soft”,“creamy”に相当する用語は,異種の言語間で共通して消費者パネルによく使用されるテクスチャー表現であることが推察された.
著者
神山 かおる 中山 裕子 佐々木 朋子 福島 富士子 畠山 英子
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.75-81, 2003

この研究は, 食事一食分の咀嚼量を筋電図により定量化する試みである. 和・洋の4種類の食事メニュー摂取挙動を, 咀嚼筋筋電位とビデオ観察を用いて解析した. 一食分量の咀嚼量を, 特に主食 (米飯類またはパン) について比較した.<BR>軟らかいパンであっても白飯より咀嚼量は高値であった. 和食では各料理がバランスよく咀嚼されるのに対し, 洋食では主食であるパンに咀嚼量割合が偏る傾向にあった.<BR>厚生労働省基準による「かたさ」で咀嚼困難者に適するとされても, フランスパンなどの咀嚼量が多く噛みにくい食品が存在した.<BR>近年の食事における咀嚼不足の傾向は, 食の洋風化の影響ともいわれているが, 洋食化が咀嚼量を減らすとは限らないことが示唆された.<BR>軟らかく調理された全粥を白飯と比較すると, 同一エネルギーを摂取するために, 粥では容積が増すため, より多数回・長時間の咀嚼を必要とした. この事実は, 軟らかい食品が必ずしも食べやすいとは限らないことを示している.

1 0 0 0 OA 筋電位

著者
神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.273, 2010-06-15 (Released:2010-08-07)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

筋細胞(あるいは筋線維とも呼ぶ)が収縮活動するときに出される活動電位を筋電位と呼び,これを記録したものを筋電図という.古くから動物やヒトの生理学研究で用いられてきたが,近年,食品物性の研究にも応用され,食品を食べている時の咀嚼筋の筋活動が筋電位計測により解析されるようになった.筋電位には,針や細いワイヤー状の電極を筋細胞に直接刺して記録する方法と,目的とする筋肉上の皮膚に表面電極を貼り付けて導出する方法があるが,食品研究には,非侵襲的な後者が用いられることが多い.倫理的な問題が解決できても,痛みを伴う針電極では,普通の咀嚼運動が行いにくくなるためである.測定対象となる筋肉は,咀嚼筋の中でも,咬筋,側頭筋等の,顎を閉じたり,噛みしめたりするときに使われる閉口筋が一般的である.例は少ないが,開口筋や舌や頬の筋肉の筋電位を用いた研究もある.表面電極により得られた閉口筋の筋電位は,下顎を閉じる,すなわち噛みしめる動作毎に,筋活動が現れ,安静時や顎を開く時には,ほとんど電位が現れない.そこで,一回噛む毎の,筋電位振幅,筋活動時間を解析したり,食品咀嚼過程全体の咀嚼回数や咀嚼時間を計算したりできる.かたい食品を噛むときには,筋電位の振幅は大きくなるので,より強い咀嚼力を必要とする食品,噛みにくい食品が数値で表現される.また筋電位の時間積分値は,筋肉が行う仕事に相当するものと考えられており,咀嚼始めから嚥下までの筋電位を時間積分した値は,咀嚼仕事の感覚量とよく一致することが知られている.ヒトは咀嚼力が無理なく出せる,おおむね最大咬合力の20%くらいまでの範囲では,かたい食品ほど咀嚼力を上げるため,筋電位振幅が大きくなる傾向にある.それを越えると,一噛みの力を変えずに,咀嚼回数を増やしたり,咀嚼リズムを遅くしたりといった,時間で制御する咀嚼を行うようになるので,筋電位から食べにくい食品を検出することができる.食品の研究開発で用いられている機器による力学測定は,食べる前の食品の物理的状態を調べている.咀嚼中に,食品は小さく砕かれ,また唾液と混ぜられて,水分や温度も変わる.したがって咀嚼中に大きく変化する食品の力学特性により,時々刻々と変化していくヒトのテクスチャー感覚を表すためには,筋電位測定等のヒトの咀嚼計測は大変有効な手段である.食品による差は,咀嚼初期に大きく,咀嚼中に徐々に減少していくが,それでも異なる種類の食品では,嚥下できる状態になった食塊の物性も大きく違っている.また,テクスチャー感覚には,食品の硬さや粘性等の物性と,大きさや量の両要因が関係している.機器では後者の分析が難しいのに対し,筋電位データからは,一口に入れた食品量,切り方の影響等も解析できる.官能評価では他人の感覚は調べられないので,食べている人の個人差の解析をするには,筋電位等の咀嚼計測の方が向いている.咀嚼能力は,小児期に訓練によって発達し,高齢期になると加齢に伴う筋力低下,または歯の欠損や持病によって衰える.個人の咀嚼の特性を解析するために,咀嚼筋の筋電位は,歯科医学領域で長く活用されてきた.筋電位法の欠点としては,一般に食品間の差よりも個人間の差の方が大きいために,食品テクスチャーの分析を行いたい時には,解析に工夫が必要なことであろう.また,小児や高齢者等,テクスチャーを食べやすく制御した食品を要するような対象者では,若年成人に比べ咀嚼運動が不規則になりがちなため,より解析が困難である.筋電位測定値に大きな個人差があっても,同時に測定した一被験者による食品間の相対値は,年齢や性別,歯の状態が変わっても,比較的一致することが報告されている.当誌でも,食品テクスチャーや噛みにくさの解析に関して,最近論文が増えているが,筋電位は,装置も比較的安価で測定も難しくない,新しいテクスチャー解析のツールである.
著者
吉田 順子 添田 博 菊池 英夫 神山 かおる 早川 文代
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.85-94, 2009-02-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

シュウマイの中でも最も生産量の多い肉シュウマイに焦点を当て,8種類の肉シュウマイの評価用語および評価方法を設定し,各試料の官能特性を明らかにした.その結果,以下の結果を得た.<BR>(1) 分析型パネルによる評価用語収集により135語が得られた.専門家パネル4人によって用語を整理し,第一次用語リスト61語を作成した.<BR>(2) 第一次用語リストについて,パネリスト全員に5段階のカテゴリー尺度を用いて試料を評価させた.クラスター分析の結果,61語は20のクラスターに分類された.クラスター分析結果について専門家パネルによる討議を行い,最終的にシュウマイの評価用語を選定し,19語を決定した.<BR>(3) 分散分析の結果,19用語中18語に試料間の有意差が見られた.ジューシー感が強いと,油っぽさが強い傾向がみられたが,一部例外もみられた.有意差のある評価項目間の相関係数の数は,肉の味が最も多かった.肉の味は,肉のくさみ,肉粒の大きさ,弾力感と正の相関があった.従って,肉の味の強さは,様々な評価項目と相関性が高く,肉シュウマイの評価では中核的な項目であることが推察された.<BR>(4) データを一元的に把握するために主成分分析を行った.その結果,第5軸までが意味のある主成分として抽出された.第1軸は「肉の存在感」,第2軸は「味付けの濃さ」,第3軸は「肉汁の量」と解釈した.試料の主成分得点と評価項目の因子負荷量を用いて散布図を作成したところ,それぞれの試料の特徴を読み取ることのできる肉シュウマイの官能特性マッピングを得た.<BR>(5) 8試料以外の肉シュウマイでも,得られた評価方法が適用できるのか否かを検討するために,新たに7種類の肉シュウマイの評価を行なったところ,同様の傾向がみられ,広範囲の肉シュウマイの品質特性を客観的に把握できることがわかった.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 米田 千恵 風見 由香利 西成 勝好 中村 好宏 馬場 康維 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.488-502, 2007-11-15 (Released:2007-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

前報2)の調査データを用いて,性別,年齢層別,調査地点別に消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を求めた.また,ロジスティック回帰分析によって用語の認知度に及ぼす人の属性の影響を調べた.その結果,以下の結果を得た.(1)各属性の各区分における消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を得た.(2)日本語テクスチャー用語445語について,用語の認知度に及ぼす人の属性の影響が明らかになった.(3)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,男性よりも女性の方が多かった.女性の方がテクスチャーを表現する語彙が豊富であることが示唆された.女性の方が認知度の高い用語には“もそもそ”,“もったり”等がみられた.(4)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,高い年齢層の方が低い年齢層に比べて多かった.時代による影響と世代による影響が考えられた.年齢層の高い方が認知度の高い用語には“かゆ状の”,“ぶりんぶりん”等,一方,年齢層の低い方が認知度の高い用語には“ぷにぷに”,“シュワシュワ”等がみられた.(5)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,首都圏の方が多かった.首都圏の方が認知度の高い用語には,“ぼそぼそ”,“ぽくぽく”等,一方,京阪神地区の方が認知度の高い用語には“にちゃにちゃ”,“もろもろ”等がみられた.これらには方言の影響が推察された.以上の結果は,消費者を対象とした官能評価,質問紙調査および面接調査の設計の際に,また,消費者への情報発信を計画する際に重要な情報を提供する.さらに,食嗜好調査や食文化研究の考察の際にも有用な知見であると考えられる.
著者
大山 高裕 阿久津 智美 伊藤 和子 渡邊 恒夫 神山 かおる
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-19, 2009-01-15
参考文献数
31
被引用文献数
3 4

若年者と高齢者の漬物咀嚼の違いについて,咀嚼筋筋電位計測により検討を行った.その結果,若年者と高齢者では咀嚼回数,咀嚼時間,咀嚼周期,筋電位振幅,筋活動量,咀嚼音で違いが認められ,両者の咀嚼に違いがみられることが示唆された.また,各漬物試料の咀嚼特性値を比較し,漬物の咀嚼特性の違いを確認した.中でもたくあんは特に咀嚼負担のかかる漬物であることがわかった.筋活動量の経時的な変化に関する検討結果からは,若年者では初期から後期にかけて咀嚼の変化が起きていたが,高齢者では若年者ほどの筋活動量の急激な変化はみられず,若年者と高齢者で咀嚼過程に違いがあることが示唆された.また,咀嚼音の経時変化は筋活動量の変化と近い変化を示し,若年者と高齢者の咀嚼活動の違いを表していると考えられた.
著者
塩澤 光一 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.117-121, 2002-03-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3

咀嚼時の唾液分泌量の増加が嚥下誘発にどのような影響を与えるかを調べるために, 嚥下までの咀嚼回数と唾液分泌量について11名の成人被験者で調べた. 0.2M酒石酸 (酸刺激) およびコントロールとして蒸留水 (DW刺激) に浸けた濾紙片をそれぞれ被験者の舌背に1分間載せた後, グミ及びモチをそれぞれ嚥下まで咀嚼させた. 嚥下までの咀嚼回数はグミ咀嚼, モチ咀嚼どちらの場合でも, 酸刺激後の咀嚼の方がコントロール (DW刺激後) に比べて有意 (P<0.001) に減少したが, 嚥下までに分泌された唾液分泌量は, グミ咀嚼, モチ咀嚼どちらの場合でも有意な差は認められなかった. また, 嚥下直前の顎舌骨筋活動量は, 酸刺激後とコントロールとで有意な差は認められなかった. これらの結果から, 同じ食品を同一量咀嚼する場合には嚥下までに分泌される唾液分泌量は常に一定であることが示唆された.
著者
塩澤 光一 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-42, 2005-05-31 (Released:2010-07-21)
参考文献数
17
被引用文献数
4

米飯咀嚼時の食塊物性変化を調べるために, 咀嚼の中間期 (M), 第1嚥下誘発時点 (L), および第1嚥下までに要した咀嚼回数の20%余計に咀嚼した時点 (+20%) の米飯食塊をそれぞれ口腔内から回収してその物性を解析した.8名の成人被験者に6gの米飯試料を咀嚼させた.米飯食塊物性の測定はtexture profile analysisに従って行った.食塊の硬さは, 咀嚼の中間期 (M) から嚥下直前 (L) になると有意 (p<0.05) な減少を示したことから, 食塊の硬さの減少は嚥下誘発にとっての必要条件であることが考えられる.食塊の付着性は咀嚼の進行に従い有意 (p<0.01) な減少を示した.これに対し, 凝集性は有意な変化を示さなかった.これらの結果から, 米飯食塊の付着性が嚥下閾値まで減少することで嚥下が誘発される可能性が示唆された.
著者
塩澤 光一 城所 寛子 佐藤 洋子 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.58-66, 2003-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
5

米飯咀嚼時の嚥下誘発にかかわる食塊物性を調べるために, 嚥下直前の口腔内から回収した食塊の物性をtexture profile analysisに従って計測した. 濃度の異なる米デンプン糊を混ぜた3種の米飯試料 (R+10%RP, R+20%RP, R+30%RP) を10名の成人被験者に咀嚼させた. 最も付着性の高いR+30%RP咀嚼時の嚥下までの咀嚼回数は, R+10%RPおよびR+20%RP咀嚼時の嚥下回数に比べて有意に大きな値を示した. 嚥下直前の食塊の硬さは, R+30%RP食塊がR+10%RP食塊やR+20%RP食塊に比べて有意に大きな値を示したが, 食塊の付着性と凝集性には有意な差は認められなかった. 付着性を低下させた米飯咀嚼時の嚥下直前の食塊中に存在する飯粒の大きさの平均値は, 通常の場合の嚥下直前の米飯食塊中の飯粒の大きさに比べて有意に大きな値を示した.本研究で得られたこれらの結果から, 米飯食塊の付着性の程度が米飯咀嚼時の嚥下閾値にかかわっている可能性が示されるとともに, 食塊中の飯粒の大きさは米飯咀嚼時の嚥下誘発には直接的にはかかわっていない可能性が示された.
著者
神山 かおる
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.49-57, 2003-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
31
被引用文献数
4

This paper reviews mastication studies from the viewpoint of food and nutrition scientists. Food texture is an important factor for food quality and primarily determines whether the food is easy or difficult to eat. Texture studies have been conducted by sensory evaluation (subjective methods) or mechanical measurements using instruments (objective methods). Recently, safe and easily edible foods have been increasingly required for elderly people as the elderly population has hugely increased in Japan. Many such foods lack palatability because they all havea similar texture, even though they are highly nutritious and contain various raw food materials. Classical methods for evaluating food texture may not be suitable for clarifying the textural properties of food for the elderly. The sensibility of textural properties for the elderly people differs from that for young subjects, who most often participate in subjective sensory evaluation. Furthermore, instruments for mechanical tests cannot completely mimic complex human mastication in objective methods. Therefore, direct measurement of human mastication is introduced as a third method for food texture studies. Electromyography of jaw-closing muscles is the most popular of mastication recording techniques used by food scientists. The elderly have fewer teeth and greater muscle fatigue, which cause low masticatory efficiency. Therefore, food for the elderly must be objectively evaluated with evidence based on masticatory science. Collaboration between food and dental sciences is needed to optimize the textural and nutritional properties of foods.
著者
早川 文代 神山 かおる 佐々木 朋子
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

テクスチャーの官能評価において、「かたさ」「サクサク感」など評価項目に用いる用語は重要な役割を担う。しかし、用語選定は労力と時間のかかる過程である。そこで、本課題では、官能評価に有効なデータベースを作成し、官能評価の迅速化に資することを目的とした。テクスチャー用語はすでに収集した445語を用いた。文献調査、質問紙調査および官能評価によって、935品目の食物名を選定し、コレスポンデンス分析によって、用語間の関係、用語と食物名との関係、食物名間の関係の数値化を行い、食物からも用語からも検索できるデータベースを作成した。
著者
神山 かおる 早川 文代 安岡 利一
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

高齢社会においてニーズが高まっている物性を調整した食品の開発に資するため、食品を実際に咀嚼する条件で、口腔内にかかる圧力を直接計測することにより、口腔感覚を簡便かつ正確に評価する手法開発を目標とした。口腔感覚粘度を測定する簡易なデバイスを設計し、口腔内で検出された力学的性質の食品による差異や健常者と摂食機能障害者との差異を解析することができた。